◆スパーキングサマーカップ展望
(8月22日 川崎 サラ3歳以上 地方競馬交流 別定 南関東SIII)
「スパーキングサマーカップ」は平成16年新設。いかにもありふれた距離千六、正直またか…というSIIIだが、今年の場合、期せずして(記者感覚では)、みどころ、焦点がぎっしり詰め込まれた顔ぶれになった。円熟期に入ったクラーベセクレタ出走がまず大きな目玉で、これに同世代の好調馬ピエールタイガー、ナターレが挑戦する。格と実績ではディアーウィッシュも見劣らず、ファイナルスコアー、ルクレルクあたりも、もうひと花が十分描けるマイラーだ。予備登録があったエーシンクールディ回避(先週地元くろゆり賞出走・10馬身差圧勝)。“地方交流”の意味合いこそ薄れたが、同レース史上、最高といえる好カードは間違いない。ちなみに今回フルゲート14頭、何とも残念な除外馬(抽選)が3頭出た。シーズザゴールド、マグニフィカ、ケイアイライジン。現南関東在籍馬も、この部門はそれなりに層が厚い。
(1)…波乱含み。1番人気[2-1-2-3]、2番人気[4-0-0-4]、3番人気[0-4-0-4]。上位拮抗の形だが、馬券的にはなかなか平穏に収まらない。昨年は9→7→12番人気の決着。3連単86万円余の大波乱となった。
(2)…船橋優勢。船橋=6勝、2着3。続く川崎=1勝、2着4を圧倒的にリードする。他地区遠征馬も、19年キングスゾーン2着、21年マルヨフェニックス優勝と悪くないが、今年は好走実績がある東海勢が出走しない。
(3)…性齢広範。6歳=3勝、2着3と優勢だが、5歳=2勝、2着3と差がなく続き、7~8歳馬も2勝、2着2と遜色ない。4歳馬は17年マクロプロトン優勝。牝馬はトータル[0-2-0-5]で、一応の合格ラインか。
(4)…自在型。逃げ=2、先行=4、差し=6、追込=3。おおむねハイペース、自在性と瞬発力が要求される。ジョッキーでは石崎駿騎手。過去5度の騎乗で2勝(ベルモントサンダー・ベルモントルパン)、2着1は特筆できる。
※データ推奨馬
◎ディアーウィッシュ…ぴたりとくる存在が見当たらないが、船橋上位、高齢馬健闘、リピーター活躍(ルースリンドなど)の傾向から同馬をとった。マイル重賞3勝、一昨年このレースを3馬身差で制している。前走不得手の大井で「サンタアニタトロフィー」4着なら衰えはない。
☆ ☆
◎クラーベセクレタ 56戸崎
○ピエールタイガー 56真島
▲ファイナルスコアー 58御神本
△ナターレ 54的場文
△ディアーウィッシュ 57今野
△ルクレルク 56張田
△トーセンアーチャー 57町田
スターシップ 57石崎駿
エプソムアーロン 57坂井
チュニジアンブルー 56倉兼
リワードレブロン 56繁田
クラーベセクレタが確勝で臨む一戦だろう。昨年3冠=1、1、3着の絶対能力。以後も順調に進化をとげ、昨暮れ「クイーン賞」で統一G初制覇、今季「マリーンカップ」「スパーキングLC」も敗れて強しの2着だった。とりわけ前走スパーキングは惜しい競馬。直後ミラクルレジェンドの動きに合わせて仕掛けを待ち、結果伏兵(スティールパス)の切れ味にしてやられた。いずれにせよ今回南関東同士のSIIIは軽いハードル、それも恵量56kgで出走できる。中1か月半、きっちり使えるあたりも円熟の証拠とみていい。同舞台の川崎千六、11月5日「JBCレディス」を描きながらどう勝つかだ。
対してピエールタイガーも同じく4歳。今の勢い、牡馬の成長力からは好勝負が期待できる。川崎千六5戦5勝。それも前々走1分38秒9は、同開催クラーベ(スパーキングLC)=39秒4を現実に大きく凌ぐ。この血統(カコイーシーズ×ダイタクヘリオス)らしい力の先行。ゴーディーに競り負けた前走は道中ややカカリ気味。本質的に左回りがベターだろう。▲としたファイナルスコアーはJRA5勝、転入後ハイレベルの大井「武蔵野オープン」を勝っている。前走サンタアニタ大敗(10着)は意外だが、折り合いしだいで巻き返し。今回御神本Jで新しい面が出る可能性もある。以下、主導権さえ握れば二の脚を使うナターレ、実績とキャリアでディアーウィッシュ。ルクレルク、トーセンアーチャーは決め手が甘く、恵まれた際の3着候補。石崎駿=スターシップには千六が忙しい。
◆黒潮盃回顧
(8月15日 大井 サラ3歳 別定 地方競馬交流 南関東GIII 1800m良)
◎(1)アスカリーブル 1分54秒8
(2)ディーオ 1.1/4
△(3)エスワンプリンス 首
▲(4)ダイヤモンドダンス 1
△(5)シラヤマヒメ 1.1/2
……………
(6)ドゥフトライネン
△(8)グラッツェーラ
△(10)ジャルディーノ
○(16)ロンドンアイ
単220円 馬複4820円 馬単6410円 3連複19500円 3連単82810円
牝馬アスカリーブルが堂々と1番人気に応えてみせた。3~4コーナー、中団外々から捲りあげ、直線ラスト1Fでねじ伏せる必勝パターン。プリンセス賞→関東オークス、そのVTRを思わすレースぶりで、最後1.1/2馬身差。2冠時ほど弾ける印象がなかったのは、斤量57kgが微妙に響いたものだろう。それでも牡馬相手にこの結果なら文句なし。スタートからゴール、終始イメージ通りの走りっぷりで危なげなかった。「(57kgだから)ワンテンポ待って仕掛けなさいという先生(川島正行調教師)の指示。うまく乗れてよかった。レース間隔は開いたけど、能力があって精神的にも芯が強い。まだ伸びしろを感じます」(今野騎手)。馬の強さはもちろん、このコンビは実に呼吸が合っている。
ロンドンアイがゲートでモタつき、ディーオの逃げ。千通過63秒0のスローとなり、そのぶん先行型の大半が折り合いに苦しんだ。2番手アイキャンデイ、直後にエスワンプリンス、イブニングラッシュ、オゼキングら5~6頭が2馬身ほどでひしめく展開。終わってみれば佐賀エスワンプリンスは、風評以上、予測以上の力がある。4コーナー手前、押さえきれない手応えでいったん抜け出し、最後失速したものの、初コースをものともせず、いかにも“自分が主役”という競馬をみせた。このあたりが“地方交流”の効果、みどころであるとはやはり思う。話は少し前後するが、勝者アスカリーブル。今後は同厩舎クラーベセクレタと使い分けで、しかし能力自体がその域に迫ってきた。「近い将来、(対決も)あるんじゃないかな…」(川島正行調教師)。夢と興味が同時にふくらむ。
ディーオは、前述エスワンを差し返す形で立派な2着。道中終始首を上げ何とも苦しい折り合いだったが、その状況で結果が出せたあたり潜在能力はさすがに高い。船橋4勝、東京湾C2着。大井克服で可能性が広がった。ダイヤモンドダンスは道中スムーズさを欠き、直線インを伸びたものの時遅しというレースぶり。依然未勝利の不器用さ、運のなさを引きずっている。どこかで一つ突破口がほしい。シラヤマヒメ、ドゥフトライネンも中~長距離向きのしぶとさ、パワーは示したが、鋭さ不足で結果的にふっ切れない。ロンドンアイはゲート膠着。何ともぎこちないレースになり、すでに向正面で脚がなかった。今後どう巻き返すか。素質はさておき気性面に大きな課題。グラッツェーラ、ジャルディーノも、現時点で“当たり外れ”が大きい馬だ。