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新潟2歳S…競馬の醍醐味は若駒から

  • 2012年08月30日(木) 12時00分
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 競馬とは自らの選択と決断による娯楽、と作家の佐藤愛子さんが以前なにかに記しておられた。その難しさは、特にキャリアの浅い若駒のレースに多くみられる。

 そのひとつ、新潟2歳ステークスは、出走馬の大半が新馬戦を勝ったばかりの2戦目、その勝ちっぷりに目を奪われていた。2戦以上走った馬たちより、その変り身が大きいだろうと、初戦の勝ち方からさらなる可能性をと、思いはそっちの方に向ってしまった。

 結果は、小回り福島の千八百米で追い込んで3着、2戦目、コースが広く直線の長いマイルの新潟でスローペースを差し切ったザラストロが、3戦目でさらにパワーアップしてレコードタイムの差し切り勝ち。口向きの悪さを一戦、二戦と馬具で矯正、制御力の強いハミから三戦目は普通のハミに戻していた。

 世の中の人の面の如くにて、似て似ぬものは馬の口向き、この口伝のとおり、ザラストロはここまで試行錯誤があって、それがいい方向に向いてくれたのだった。

 この口向きの悪さは、直線差してくる瞬間伺えたが、これは松岡騎手も承知していたようだ。若駒の場合、最初から完成された走りにはならず、一歩一歩、修正されてステップアップしていくので、どこでどう選択するかは難しい。その矯正、修正の過程を承知していないことには、適確な決断は下せない。

 口伝には、こういうのもある。鞍、鐙(アブミ)、手綱の三つが一致して、取り合いよきを上手とぞ言う、と。この域に到達するよう人馬の呼吸に変化は見え、それをしっかり見届けられるよう、余程、目を凝らさねば、選択の快挙はない。しかし、その過程を見つける楽しさは大きい。競馬の醍醐味を味わうには、若駒から。子供の成長を慈しむ心境に似ている。

 佐藤愛子さんの言葉にこんなのもある。馬はハンサム、馬券は単勝、と。愛情溢れる心情がにじみ出て、とてもいいではないか。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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