前回に続き、返し馬について解説してまいります。
スクーリング(馴致)を見逃すな
返し馬の時に、多くの騎手は馬に馴致を施しています。返し馬時の馴致を理解できるようになると、その馬の特徴をある程度理解するのに役立ちます。
馴致行為~凱旋門賞のオルフェーヴルの返し馬、お尻を見させる~
有名で分かりやすい例から行きましょう。凱旋門賞でオルフェの返し馬を見て、印象に残った方も多いハズ。本馬場入場からアヴェンティーノが付きっきりで、アヴェンティーノを後ろを間近で追走する形でのキャンター。これが馴致行為だという事は感覚的にご理解頂けるかと思います。
この、馬のお尻を追走するという行為は、馬群に入った時に馬がナーバスにならない様にする、或いは、単騎でどんどん前に行くことを防ぐと言った意図で行われます。オルフェのような露骨なケースは無いにせよ、「誘導馬の後ろを間近で歩かせる」馴致行為は競馬場に行けばザラに見られる光景で、返し馬では必ず何頭かはこのような馴致行為は行っています。非常にポピュラーなものですね。
こういった馴致行為を行っている馬は、意図的に前に行ったりはしない事が多い(当然、押し出されて結果として逃げになったり、元々逃げるつもりだが逃げられなかった時の対策として実施している事はある)ので、馬柱を見ながら、「コイツは行かないかな~」等とレース展開を考える上で参考になったりします。
観客やスタンド等を注視させる
以前のコラム「相馬眼・2」でも記述しましたが、馬が恐れている・恐れそうなものを予め注視させておくと馬が対象を恐れにくくなります。頻繁に行う馴致行為なので、馬も「アレを見て安全だと判断しろという事なんだな」と騎手の意図を理解している場合が多いです。競馬で多いのはスタンドの建物やゴール板、観客等を注視させる事ですね。例でいくと2008年の天皇賞(秋)ではウオッカ(実際に、武騎手が「観客席前をスクーリングさせた」とコメントしている)、2010年皐月賞のアリゼオ(恐らく、最外枠であった上に中山2000mは序盤でスタンド前を通過するため)等。
まぁ、1度や2度見せただけで対象に対する恐怖を克服するのは難しいのですが、一時的な効果は殆どの馬で得られますね。(程度は馬によってかなり差がある)
次々回に続く
次回は番外編「ラクダの遊具」についてお送りします。
元馬術の選手です。ネットケイバでは主に競走馬掲示板にて活動しています。2016.11.11記諸般の事情により、当面はブログで活動いたします。追い切り所見・レース回顧を中心に、内容そ...
あなたも、投稿してみませんか?
コラムを投稿する