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フォワ賞、オルフェーヴルのライバルは!?

  • 2012年09月12日(水) 12時00分
 今週土曜日には、キャメロットが42年振りの三冠に挑むG1セントレジャー(14F132y)がドンカスターで。そして日曜日には、凱旋門賞と同コース・同距離を舞台とした3つのプレップレースがロンシャンで行われる。

 いずれも見逃せないレースだが、日本のファンが最も注目しているのは、オルフェーヴル(牡4、父ステイゴールド)が出走を予定している、ロンシャンのG2フォワ賞(芝2400m)であろう。

 イギリスやアイルランドの重賞競走の場合、Five Days Declarationと呼ばれるエントリーステージが、レース5日前に設けられている。土曜日に組まれたレースなら、月曜日の正午が締め切りで、直前で追加登録をする馬もこの段階でエントリーをしないといけないから、この時点で出走メンバーのほぼ全容を知ることが出来る。すなわち、毎週水曜日に掲載していただいているこのコラムで週末のレースの展望を行う場合、イギリスやアイルランドのレースでは出走馬をほぼ100%に近い確度で把握した上で執筆している。

 一方、フランスにおける登録スケジュールはイギリスやアイルランドと異なり、フォワ賞を例にとれば、1回目の登録ステージは8月22日に設定されており、今年の場合この段階で23頭が登録を済ませている。そして、2回目の登録ステージが設定されているのは、レース3日前の9月13日、午前10時30分なのだ。すなわち、このコラムで週末にフランスで行われるレースの展望記事を書く場合、Declaration Stage の前に草稿せねばならず、さまざまなルートを使って現地情報の入手に努めても、メンバーの絞り込みに窮する事態にしばしば直面する。

 と、延々と言い訳めいた文言を並べて、誠に申し訳ありません。これから記すフォワ賞の展望記事に、実際には出走しない馬が登場していたり、有力馬として出走する馬について触れていなかったりしても、平にご容赦いただきたく、伏してのお願いを申し上げます。

 現地から届いているオルフェーヴルの近況に関する情報は、池江調教師による「馬がフランスでの日常を楽しんでいる」というコメントを筆頭にポジティヴなものばかりで、まずは気掛かりな材料を抱えることなく前哨戦を迎えられそうなことは、嬉しい限りである。

 この馬の場合、気持ちに余裕があり過ぎると、生来の悪戯癖が顔を出す懸念があるが、さすがに初めての競馬場に出向く今週末は、適度な緊張感を持ってレースに臨むはずで、この馬の本来の力を発揮してくれることと思う。

 展開は、十中八九スローペースで、直線ヨーイドンの競馬になるはずで、オルフェーヴルの持つ瞬発力に、誰もが驚くことになると思う。

 相手関係だが、実績的に最上位はメアンドル(牡4、父スリックリー)になろう。

 初勝利を挙げるのに7戦を要した馬で、3歳春のクラシックには乗れなかったが、7月にロンシャンで行われたG1パリ大賞(芝2400m)で、重賞初挑戦初制覇を達成。一気に戦線のトップに踊り出た馬である。秋は、G2ニエユ賞(芝2400m)で2着となった後、凱旋門賞は6着と、今一つ殻を破り切れない感じで3歳シーズンを終えた。

 4歳を迎えた今季も春先はエンジンの掛かりが悪く、初戦のG2ジョッキークラブS(芝12F)が4着、続くG3ラクープ賞(2000m)が3着と、格下と思われた相手に不覚をとった。ようやく戦闘モードに入ったのが3戦目となったG1サンクルー大賞(芝2400m)で、昨年の凱旋門賞1・2着馬デインドリーム、シャレータ、昨年のG1ヴェルメイユ賞勝ち馬ガリコーヴァらを破って2度目のG1制覇。さらに次走はドイツに遠征し、G1ベルリン大賞(芝2400m)も制覇と、順調に実績を積み重ねている。

 当初は、再びドイツに遠征して9月2日のGバーデン大賞(芝2400m)を使うプランが有力と言われていたが、結局は地元のこのレースに矛先を向けてきた。

 メアンドルを管理するのは、過去7勝という凱旋門賞最多勝調教師A・ファーブルである。凱旋門賞の勝ち方を知り尽くしている男が、本番を見据えた上でここを使ってきたわけで、凱旋門賞におけるメアンドルはオルフェーヴルにとって、侮りがたい敵となる可能性がある。だが逆に言えば、ここはあくまでも「ひと叩き」になるはずで、勝ち負けには拘泥しない競馬をすると見る。

 3歳時の実績では、メアンドルに引けを取らなかったのがリライアブルマン(牡4、父ダラカニ)だ。

 デビューは3歳の4月12日で、サンクルーのメイドン(2000m)を3馬身差で快勝。続くシャンティーの条件戦(2000m)も連勝すると、陣営は次走にG1仏ダービー(芝2100m)を選択。3番人気に支持したファンの期待に応え、後方から鮮やかな末脚を繰り出して優勝を飾った。デビューから3戦目、日数にして2か月に満たない段階でのクラシック制覇となったわけで、関係者もファンも、この馬が持つ天賦の才に目を見張ることになった。

 続くG1パリ大賞でメアンドルの3着となり初めての敗戦を味わったが、秋初戦となったG2ニエル賞(2400m)では逆にメアンドルに2馬身差を付ける完勝。勇躍凱旋門賞に向かったのだが、その凱旋門賞で15着とよもやの大敗を喫して、3歳シーズンを終えている。

 4歳となった今年の春は10F路線を歩み、初戦となったG1ガネイ賞(芝2100m)が3着、続くG1イスパーン賞(芝1850m)が7着、G1プリンスオヴウェールズS(芝10F)が4着。前走は12F路線に戻ってG1キングジョージ(芝12F)が4着と、今季はここまで4戦して勝ち星に恵まれていない。昨年の凱旋門賞から数えると、5連敗中なわけで、実績という点ではメアンドルにかなりの差をつけられてしまった。

 ただしここ2戦の内容は、G1プリンスオヴウェールズSが勝ち馬ソーユーシンクから3馬身差、G1キングジョージは勝ち馬デインドリームから1.3/4馬身差と、アウェイでそれぞれの路線の最強クラスを相手にしたことを考慮すれば、さほど悲観するものではなかった。

 管理しているのが、03年のダラカニ、08年のザルカヴァに次ぐ3度目の凱旋門賞制覇を目指すA・ロワイヤルデュプレであることも加味すれば、ここも本番もノーマークには出来ない馬であろう。

 メアンドルやリライアルブルマンといった既成勢力に対し、新興勢力と称すべき上がり馬が、障害界の名調教師として知られるJ・P・ガロリニ師が手掛けるノーリスクアットオール(牡5、父マイリスク)だ。

 3歳春にG3ギシェ賞(芝1800m)で2着となってG1仏ダービーに駒を進めている(結果は16着)から、早くから頭角を現していた馬ではあったが、故障で4歳シーズンのほとんどを棒に振ったこともあり、本格化は5歳となった今季まで待たなくてはならなかった。今季4戦目となったG1イスパーン賞(芝1850m)で、これが3度目のG1制覇となったゴールデンライラック(牝4、父ガリレオ)から1.3/4馬身差の4着に健闘。続くG3ラクープ賞(芝2000m)で2着メアンドル以下に3馬身半差を付けて重賞初制覇を果すと、次走のG3ヴィシー大賞(芝2000m)も連勝と、急上昇モードに突入している。

 実績的にはまだ下だが、大手ブックメーカーのウィリアムヒルが、凱旋門賞に向けた前売りでこの馬を、メアンドルやシャレータらと同等の評価(オッズ17倍)をし、本番でも争覇圏にいる1頭との認識を示している。まずは、フォワ賞でどんな競馬をするか、お手並み拝見といったところだ。

 グリーンチャンネルで生中継をされる予定のフォワ賞に、皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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