4月3日「浦和桜花賞」。戦いすんだ夕刻5時、JR南浦和駅へ向かう途中、「葉根木公園」「御嶽公園」を通ってくる。どの町にもある子供向けの小公園だが、この時季は枝ぶりのいい桜が見事だ。煙草など一本ふかし、たった今終わった桜花賞を反芻する。これは記者の年中行事。といっても、勝利の余韻とか、満足感に浸る…などというケースはほとんどなく、だいたいが後悔と反省、そしてため息。
とりわけ今年はショックの大きい結果だった。20数年見てきて、絶対と確信してきたセオリーが打ち破られる。「非力なスピード馬は苦戦」というやつ。煙草が一本灰になったところで、背中に強い北風が吹いてきた。後で天気情報を見ると浦和はそのとき9度C。ひとまずコートの襟を立て、さっさと駅へ歩くのが賢明だろう。結果論ながら、今日は「セオリーと先入観を混同した」ことが失敗だった。
桜花賞(サラ3歳牝馬、定量、南関東G1、1600m梢重)
(1)メモリヒメ (54・堀) 1分42秒1
○(2)モエギノマズル (54・酒井) 1.1/2
△(3)ビューティープリマ (54・石崎隆) 1/2
◎(4)マルダイメグ (54・一ノ瀬) 4
▲(5)フジノタカネ (54・的場文) 2.1/2
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△(6)マイキャンデー (54山田信)
単1500円 馬複4160円
馬単11590円 3連単77840円
メモリヒメの逃げ切り。全体のレベルはどうあれ、終始人気馬にマークされる展開で少なくともゴマカシの勝ちではない。確かに1000m通過63秒1はスローだが、そのぶん上がり39秒0。直線並んできたマルダイメグ、ビューティープリマを二の脚で突き放した。昨秋道営から転入、ここが南関7戦目。サクラバクシンオー産駒、いわゆる逃げ気性だが、ガッとカカるタイプではなく、雰囲気はアインアインあたりに似ている。
「前走(ローレル賞)は3着だったけど、自分なりに手応えがあった。今日は折り合いがつきすぎるほどついて、最後もう一度伸びてくれた」と堀千亜樹騎手。トライアル「ユングフラウ賞」創設以来、その勝ち馬が桜花賞を制したのはなんと初めて。結果論ながら、このあたりは皮肉というより盲点だったか。
データの丸かじりではなく、馬それぞれのレースぶり、能力把握がより大事だということ。記者も含め大半の予想者がメモリヒメの潜在能力を見抜けず、それが波乱の歴史にもひと役買った。
マルダイメグは負傷癒えた一ノ瀬騎手で道中すんなり3番手。レース運びはほぼ満点にみえた。しかし4コーナー、メモリヒメに並んでからさっぱり伸びない。敗因を探せば少しずつ減り続ける馬体だろうか。「初輸送か初コースか、とにかく終始反応が鈍かった」と鞍上。牝馬はやはり微妙としかいいようがない。ひとまず出直しだが、出張戦に不安を残したのは今後も含め大きな誤算か。
対照的にモエギノマズルは逞しい競馬をした。スタートひと息で道中中団キープがやっとだったが、直線インに進路を取り、最後は上がり38秒2(推定)で伸びている。馬の地力、精神力もさることながら、昨年新潟から移籍した酒井忍騎手。すっかり南関のスタージョッキーとして定着し、先行してよし追わせてよし、はつらつとしたプレーが素晴らしい。
フジノタカネは、ダッシュつかず後方から。手応えそのものはそう悪くもみえなかったが、GOサインが出た3~4コーナーでも行き脚がついてこない。9キロ増でも仕上がりはまず完璧。直線だけで5着を能力の片鱗とみるかどうか。「腰が甘いので本質的にダートはどうかな」と的場文騎手。右回り、直線の長い大井を一度走らせたいが、地方在籍=JRA芝挑戦、ネイティヴハートのような選択肢ももちろんある。
救世主とされるパレガルニエはすでに川崎・池田厩舎へ帰厩。プリンセス賞、関東オークス、さらに羽田盃を両睨みで鋭意調整中と聞いた。いずれにせよ、昨年の2歳戦線をみる限りこの馬が一枚ズバ抜けた能力を持っている。天気予報ではないが、これがどう動くかが「台風の目」。当然ながら長期予報となると自信が持てない。
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船橋記念(4月9日、サラ3歳以上、ハンデ、南関東G3、1800m)
◎エスプリシーズ (56.5・森下)
○ナイキダンサー (54.5・石崎隆)
▲スプリングシオン (56・内田博)
△フジノテンビー (56・佐藤隆)
△クールアイバー (54・御神本)
前走金盃でよもやの敗戦を喫したエスプリシーズ。力走続きの疲労が出たこと、右回りが本質的に得手でないこと。武井調教師は「ゲート入りが最近になく悪かった。昨シーズンの嫌なイメージ(クラシック凡退)を馬が引きずっていたのかもしれない」と振り返る。いずれにせよ昨暮れ東京湾C、明けて報知グランプリCは、次代のエースを約束させる内容だった。一過性のポカなら問題なし。ここをいい形で巻き返せば再び統一Gもみえてくる。好敵手・ヒミツヘイキが回避。正攻法の圧勝を期待したい。
ナイキダンサーは前走長休明けのグランプリC3着。スタート不利を直線勝負に割り切り、上がり37秒0、メンバー中最も速い脚を使った。ひとこと天才肌、未完の大器。ベルモントアクターと酷似したムードがあり、叩き2戦目の良化しだいで逆転まで描けるだろう。こちらも統一Gに向かってほしい馬。
スプリングシオンは距離オールマイティーの実力派だが、前走金盃が久々にしてもふがいなかった。ひと叩きで本来の気合、闘争心が戻ってくるか。当日の気配をじっくりみたい。フジノテンビーは昨秋トレード初戦を1700m1分44秒台で圧勝の記録があり、イメージより距離は保つ。逃げて完全燃焼。クールアイバーは初の左回りをどうこなすか。瞬発力勝負で食い込み。