スマートフォン版へ

史上3頭目の三冠牝馬、ゴッドねぇちゃんアパパネ

  • 2012年10月09日(火) 18時00分
2010年に牝馬三冠を達成

2010年に牝馬三冠を達成

 ジェンティルドンナの牝馬三冠達成が期待される今週は、史上3頭目の三冠牝馬に輝いたアパパネに注目! 長年アパパネを担当して来た福田好訓持ち乗り調教助手に、たっぷりと語っていただきました。

赤見 :今週はいよいよ秋華賞ですけど、2年前の今頃はかなり緊張してたんじゃないですか?

福田 :「今思えば緊張してたのかもしれないけど、当時はそんなに感じてなかったんですよ。とにかく具合が最高に良かったから。

 実を言うと…桜花賞が一番緊張しましたね。当時はお母さんの血統を考えて、距離的にマイルくらいまでかな、と思ってたから、牝馬クラシックを狙えるとしたら桜花賞だなって。だからここは絶対落とせないぞっていうプレッシャーがあったんです」

赤見 :なるほど。そこから、三冠狙えるかも?! と思ったのはいつ頃ですか?

福田 :「桜花賞を勝ったから、次はオークスってなったわけですよ。まさか同着になるとは思わなかったけど、距離が長いところをよく頑張ってくれました。

 秋初戦は負けたけど、秋華賞はなんとかなるんじゃないかなと思ってました。さっきも言ったけど、とにかく状態が良かったので。ローズステークスを勝ったアニメイトバイオは栗東で同じ厩舎に入っていたし、いい意味でライバルというか、負けたくないって気持ちはありましたね」

厩舎でリラックスしているアパパネ

厩舎でリラックスしているアパパネ

赤見 :アパパネは栗東も含めて、かなり長い間放牧に出ずに厩舎にいましたよね?

福田 :「2歳の10月1日、未勝利の時に厩舎に戻って来て、2年後の12月、香港遠征の後に放牧に出てますから、約2年2か月ですね。その間、一日も休みなく毎日一緒にいました」

赤見 :その間に変化はありました?

福田 :「性格的には大人っぽくなりました。ジュベナイルが終わった後、チューリップ賞までずっと軽めに乗ってたんですけど、元気が有り余ってハネてばっかりいたんです。あの時は1回落とされましたからね(苦笑)。その後だんだんそういうところ見せなくなってきて、大人になってくれました。お母さんもそうでしたけど、精神的にすごく強いんですよ。オンオフがものすごくハッキリしてるから、ずっと厩舎にいても切り替えが出来たんだと思います。

 体型も全然変わりました。最初は細めだったけど、だんだんお母さんに似て来ましたね。最後の方はなかなか体重が落ちなくて大変だったけど(笑)。でも、女の子で太るほどご飯が食べられるってすごいですよね。だから調教量が多いですもん。追い切り見てもらったら、すごい本数やってますから。それでも全然ヘコタレなかったですね」

赤見 :国枝先生は「ゴッドねぇちゃんだ」って言ってましたね。

福田 :「デカくなりましたからねぇ(笑)。でも僕にとっては、本当に可愛い存在ですよ。顔も可愛いし、全体的に本当に可愛い!!」 

赤見 :アパパネと福田さんて、すごくラブラブに見えたんですけど。

福田 :「2歳の時はかなり人懐っこかったですね。特に栗東に行った時には知ってる顔が僕しかいないから余計甘えて来ました。誰にでも懐っこいですけどね」

赤見 :でもたまに女の人が来るとキー! って怒る時あったじゃないですか。嫉妬ですかね?

福田 :「ありましたねぇ(笑)。注意してないと噛まれる人もいましたよ。獣医さんと鉄屋さんは大嫌いだったんで…特に獣医さんは注射するからとにかく嫌いで、みんな噛まれてました」

赤見 :福田さんにとってどんな存在ですか?

福田 :「とんでもない仔に当たっちゃったなって感じです。毎日乗せてもらって、いい財産になりました。この馬に乗るとね、乗ってる人が上手くなった感覚になるんですよ。コントロールも利くし、乗り味も素晴らしいし。具合いい時なんか、ため息出るくらい乗り味いいんですよ」

赤見 :残念ながら引退となりましたが、その経緯を教えていただけますか?

福田 :「9月2日に美浦に戻って来て、9日の一本目の追い切りは特に問題なかったんですけど、12日の追い切りの後に右前に腫れがあって。次の日エコー検査したら屈腱炎という診断でした。ほんのちょっとなんですけど、無理は絶対したくないですから、すぐに引退が決まったんです」

香港でのアパパネと福田助手

香港でのアパパネと福田助手

福田さんの胸に顔を埋めるアパパネ

福田さんの胸に顔を埋めるアパパネ

赤見 :その時はどんなお気持ちでした?

福田 :「う〜ん…複雑というか…正直、もう一回走らせたかったんで、ショックはショックでしたね。まぁ無事にお母さんになれるということでホッとした部分もありますけど。

 美浦から旅立ったのは15日で、馬運車に乗せる時には泣きそうになりました。アパパネの方はのんびりしてましたよ。お別れの日も厩舎の外にある放牧場に出してたんですけど、リラックスしてず〜っと寝てました(笑)。いなくなってからしばらく、胸にポッカリ穴が開いた気分でしたね…」

赤見 :福田さん自身もプレッシャーから解放されたんじゃないですか?

福田 :「それもあるけど…でもやっぱりアパパネやってる方がいいですね。毎日が本当に楽しかったから。今も次から次にいい馬入って来てるんで、立ち止ってられないですね。

 初年度のお相手はディープインパクトでしょ? 12冠ですよ?! マジで担当する人大変でしょうね(苦笑)。どんな仔が生まれるかすごく楽しみです。顔と性格はアパパネに似て欲しいですね!」

 数々の感動をくれたアパパネが、今度はどんなお母さんになるのか、そしてどんな子供が生まれるのか…今から本当に楽しみです。さぁ今週は秋華賞。アパパネに続く三冠達成なるでしょうか!![取材:赤見千尋/美浦]

◆次回予告
次週の「競馬の職人」は、今週の記事にも登場したアパパネ以来の牝馬三冠がかかるジェンティルドンナ主戦・岩田康誠騎手を直撃します。秋競馬最初のGI・スプリンターズSをロードカナロアで制した今期絶好調男の素顔に、常石勝義さんが迫ります。公開は10/16(火)18時、お楽しみに。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング