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栄冠賞展望&東京盃、レディスプレリュード回顧

  • 2012年10月09日(火) 18時00分
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◆栄冠賞展望
(10月10日 浦和 サラ3歳以上 別定 南関東SIII 1900m)

 埼玉新聞栄冠賞は、今年第22回目。平成18年、埼玉新聞杯→埼玉栄冠賞とレース名が変更され、そしてまた今年から“埼玉新聞”のタイトルが復活した。もっとも、距離、斤量、施行時季などは創設時から一貫変わっておらず、過去21年間のデータがそのまま使える。

 大きな傾向、特徴といえば、浦和SIIIのイメージ以上に“強い馬”が勝っていること。古くはマキバサイレント(重賞8勝)、マキバスナイパー(帝王賞馬)らGI級が制し、平成16年モエレトレジャー、17年ケイアイミリオン、21年ブルーラッドも、続くGII・浦和記念をJRA強豪相手に優勝した。

 さらに昨年ボランタス。このレース快勝で勢いを取り戻し、1か月後大目標・浦和記念もシビルウォー相手にしぶとい末脚で競り勝った。言い換えれば、埼玉栄冠賞自体、紛れの生じにくい力の競馬…と位置付けられる。メンバーの大半が中~長距離に適性が高く、しかもA1=58キロ、A2=56キロ…(牝馬2キロ減)のシンプルな別定戦だけに当然かもしれない。ひとまず本番(11月21日)へつながる競馬が今年もテーマ。なお登録のあったマグニフィカ、トーセンルーチェなどは今回回避。11月5日川崎JBCクラシックへ直行の予定と聞いた。

(1)…人気サイド。1人気[4-4-1-1]と断然強く、20年デスモゾーム(休み明け)以外すべて馬券に絡んでいる。ただ2人気[2-0-2-8]、3番人気[1-1-0-8]は頼りなく、結果、馬連平均配当も3770円と案外高い。

(2)…船橋VS川崎。船橋=5勝、2着5回、3着4回、川崎=4勝、2着5回、3着2回と、ほぼ活躍馬を独占する。ただ地元浦和も20年クレイアートビュン優勝、3着3回と合格点の健闘をみせている。大井は3着1頭だけでふるわない。

(3)…年齢広範。6歳=3勝、2着2回と一歩リードだが、5歳=2勝、2着2回、7歳=2勝、2着1回とほとんど差がない。今年は不出走ながら3歳馬も2勝しており、その傾向からは、実績ひと息の新鋭も軽視できない。

(4)…先行型。逃げ=2、先行=10、差し=7、追込=1。昨年ボランタスを“追込”(向正面10番手)と分類したが、実際にはそこから一気に捲り、直線入口では2番手に迫っていた。4角を先頭で回った馬=2、2、1、1、1、1、2、1、6、3着。

※データ推奨馬
 ◎ケイアイライジン…数字上、最も分がいい船橋所属の6歳馬。昨年3着(0.2秒差)は逃げたものだが、本来好位から差しもきく。典型的な中~長距離型。川島正行厩舎は、このレース通算3勝をあげている。

 ☆       ☆

◎トーセンアレス 58張田
○カキツバタロイヤル 58高橋利
▲ケイアイライジン 58川島
△ドリームストライド 54今野
△ドラゴンキラリ 54真島
△ドラゴンウィスカー 56水野
△ベルモントガリバー 56石崎隆
 トーセンゴライアス 58 森
 ナムラブレット 58和田
 
 トーセンアレスに期待する。転入初戦の前走、いきなりGIIIオーバルスプリントにぶつけ、アースサウンドの鼻差2着。デビュー20戦目、初体験の距離千四で4コーナー8番手と戸惑ったが、そこから大外を伸びた脚は、まさしく別次元の凄みがあった。JRA5勝、すべて中~長距離(千八~二千百)。今春「ブリリアントC=東京二千百」、ソリタリーキングの3着も、上がり37秒6、ソリタリーに次ぐメンバー中第2位だから価値が高い。今回左回り千九、絶好のお膳立て。適条件をうまく勝ち抜いていければ、東京大賞典、帝王賞など、GIチャンピオンロードまで夢が浮かぶ。父アドマイヤドンはJBCクラシック3勝の偉業。いよいよイメージ通りの本格派ステイヤーを生み出した。

 カキツバタロイヤルは昨年2着。ボランタスと首差の力勝負を演じてみせた。以後1年、小さな波はあったものの、今春川崎マイラーズを制し、前走東京記念3着。自在性と機動力、さらに勝負強さなど、オープンの安定株として十分な存在感を保っている。重賞経験の浅い鞍上・高橋利騎手(大井金盃・1戦8着)との折り合いが再びテーマ。ただ馬自身は円熟のレース巧者で、同Jにとっても、おそらく浦和コース(船橋と同じ左回り)の方が乗りやすい。アピールのチャンスではもちろんある。

 ケイアイライジンは前述通り昨年3着。こちらもJRA時から中~長距離志向(千八~二千4勝)で、転入後「報知グランプリC=船橋千八」をルクレルク、スターシップ相手に勝っている。同じ先行型ドリームストライド(浦和千九4勝)との兼ね合いが鍵だが、実績、能力から3番手は譲れない。以下、捲る脚に威力があるドラゴンキラリ、ドラゴンウィスカー、JRA4勝、ベテラン石崎隆之Jに手綱を預けたベルモントガリバーまでマークした。トーセンゴライアス、ナムラブレットも中距離型で不気味だが、主力と同斤58キロは少し厳しい。

◆東京盃回顧
(10月3日 大井 サラ3歳以上 別定 jpnII 1200m良)

△(1)ラブミーチャン 1分11秒2
▲(2)タイセイレジェンド 1.1/2
○(3)セイクリムズン クビ
△(4)ジーエスライカー 1.1/2
△(5)セレスハント クビ
 ………………
 (6)オオエライジン
△(7)テイクアベット
◎(8)ヤサカファイン

 単18405円  馬複3120円  馬単10430円  3連複1640円  3連単29250円

 ラブミーチャンが素晴らしい強さをみせた。外枠ながら文字通りロケットスタート。しかし、内ジーエスライカー、ギオンゴールドが行くと見るや、かかることなくスッと引き3番手で折り合った。道中終始先行2頭を2~3馬身ほどの射程圏に入れ絶好の手応え。直線GOサインと同時に馬場の真ん中を、それこそ放たれた矢のように伸び切った。

「去年(2着)より数段行きっぷりがよかったし、4コーナーを回ったときに勝てるかも…と。嬉しいです。牝馬なのに1年1年成長していくところが凄い」(濱口楠彦騎手)

 千二=1分11秒2は数字上水準程度だが、今開催大井は昨年(スーニ=10秒9)より1秒近く時計がかかる。何より後続に1.1/2馬身差をつけて余裕のフィニッシュ。ラブミーチャン自身、生涯最高のパフォーマンスといっていい。

 ラブミーチャンは牝5歳。父サウスヴィグラス、母ダッシングハニー(アサティス)。通算26戦13勝、交流重賞は兵庫ジュニアGP=GII、全日本2歳優駿=GI以来、3度目の勝利となった。体調と精神面、微妙な波があったのは牝馬ゆえだが、一貫ハイレベルの交流戦で濃密なキャリアを積み、今季いよいよ円熟期を迎えている。

「馬が進化しています。前半我慢して、最後もうひと伸びする競馬を覚えてくれた。育てがいがあるし、今日勝てたことは心底嬉しい」(柳江仁調教師)

 父サウスヴィグラスは、平成15年・JBCスプリント(大井千二)優勝。すでに地方競馬界、トップサイヤーの地位を築き、その産駒は非凡なスピードに加え、逞しい成長力を備えている。ラブミーチャンの次走は、言わずもがなそのJBCスプリント。11月5日、今年は川崎千四百mで行われるが、前述GI・2歳優駿を川崎で勝っている以上、不安も減点もいっさいない。まさしく“進化する怪物牝馬”だ。

 ?2着タイセイレジェンド。こちらも道中外めで折り合い直線しっかり伸びてきた。父キングカメハメハ、500キロを超す巨漢ながらフットワークなど実にのびやか。こと短距離なら自在の脚がありそうで、さらに成長、飛躍が期待できる。

 セイクリムズンは道中タイセイレジェンドの直後を進み、しかしクビ差届かなかった。

「今日は連勝中の馬体と少し違った。次に期待してください」(岩田騎手)

 前走さきたま杯と較べ数字上はマイナス1キロ。鞍上の感じる“中身”が違ったということか。いずれにせよ同馬は川崎JBCスプリントが大目標。ここで0.3秒差3着なら視界良好、ある意味青写真通りといえるだろう。

 ジーエスライカー4着は健闘。千通過58.6秒、ラスト1Fこそ粘りを欠いたが、自らのフォーム(徹底先行)を崩さず接戦に持ち込むあたり、一段グレードアップがうかがえる。セレスハントは本質的にピュッと切れる脚がなく、今回3コーナー9番手は厳しかった。

 逃げ宣言テイクアベットは痛恨の出遅れ。持ち味が発揮できず、それでも上がり37.0秒(メンバー中第4位)なら、能力と好調さ、さらに地方適性はアピールできた。◎ヤサカファインは中団からやや後ろ、反応がひと息鈍く、直線バテた馬を交して終わった。結果的に体調100%まで戻らないということか。末脚勝負、個性派のスプリンター。記者好きな馬だが、ベスト大井千二と限られるだけに、今後の進路(選択)は難しくなった。

◆レディスプレリュード回顧
(10月4日 大井 サラ3歳以上牝馬 別定 1800m不良)

○(1)ミラクルレジェンド 1分54秒0
 (2)プリンセスペスカ 1.1/2
 (3)ダートムーア 4
△(4)エーシンクールディ 1
△(5)プレシャスジェムズ 1.1/2
 …………………
◎(6)クラーベセクレタ
△(7)サクラサクラサクラ
△(8)ショウリダバンザイ
▲(9)ロッソトウショウ

 単140円  馬複1120円  馬単1490円  3連複5820円  3連単15090円

 予想外の結果になった。いやもちろん、単勝1.4倍ミラクルレジェンドの勝利は納得だが、好敵手であり、一騎打ちして当然のクラーベセクレタが動かなすぎた。当日15キロ増であったこと、スタート一完歩目でつまずいたこと。しかしいずれも致命的な敗因とまでは思えず、それでいてあろうことか掲示板まで外したのだから、記者個人的には驚きと同時にショックが大きい。転入後15戦目、初めての負けらしい負け。彼女に限って…そんな思いで、レース後しばらく呆然としてしまった。

 全体にバラついたスタート。各馬互いに出方をうかがう形となり、結局最内枠プレシャスジェムズの逃げ、2番手エーシンクールディで落ち着いた。千通過63.7秒、超スロー。それでもミラクルレジェンドはソツなく4~5番手を確保し、その直後をロッソトウショウ、サクラサクラサクラ、ハートゴールドら一団で進んでいく。クラーベセクレタは1コーナー、後方4頭目。向正面外から徐々にポジションを上げようとするが、どこか突っ張ったようなフォームでスピードが乗ってこない。

「戸崎くんの馬(クラーベ)を見ながらと考えていたから、その意味では想定外。ただ自分の位置取りはイメージ通りで、最後もきっちり伸びてくれた」(岩田騎手)

 千八1分54秒0、昨年レコード=1分49秒6を思うと言葉に迷うが、ミラクル自身に限っていえば次走JBCレディスクラシックへ向け、いいトライアルになったのだろう。5キロ増。実際パドックの印象も春当時より活気を感じた。

 道中3番手からインを突いたプリンセスペスカ2着、中団から外を伸びたダートムーア3着。ともに数字(上がり時計など)上、牝馬G通用ぎりぎり合格点の内容だが、前者は競馬センス、後者はパワーが特徴で、それぞれ個性は十分示している。エーシンクールディは昨年ハイレベル3着から一歩後退。結果的に同馬は徹底先行、ハナを取り切ってベストだろう。プレシャスジェムズはいかにもジリ脚。この展開で
1.7秒差5着となると次走へ展望が厳しくなった。

 さてクラーベセクレタ。今回をごく自然に“一過性のポカ”と割り切れば、もちろん評価は落とせない。実際15キロ増は、もとより神経質(線が細い)とされていた馬だけに、ある意味大きな前進ともとれる。あとは本番へ向け、心身両面をどう研ぎ澄ましていくか。今回試練。クラーベはまだまだ“夢の途中”で格闘中と思い直した。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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