◆鎌倉記念展望
(10月17日 川崎 サラ2歳 定量 地方競馬交流 南関東SIII 1500m)
鎌倉記念は平成13年新設、南関東2歳馬が初めて挑むSIII重賞。第5回・17年から“地方競馬交流”に条件変更、一転出走メンバーがにぎやかになり、レース自体も白熱度を増してきた。ただ現実に地方競馬の2歳馬(とりわけ南関東)は、例年この時季(10月)勢力図が固まっていないことが大半で、過去10年、鎌倉記念優勝馬→南関東クラシック制覇は、15年トキノコジロー(羽田盃)1頭しか例がない。
さて今年はどうなるか。道営からクラグオー(4勝)ミータロー(2勝)が登場。対して南関東は現時点の?1オベロンホワイト(大井準重賞・ゴールドJ)が回避し、出走11頭どれも実績面では胸が張れない。昨年もニシノファイター(9人気)→ルイクリスタルラブ(6人気)の決着で、馬単37210円。ひとまず大局観は“波乱が前提”になってくる。なお後述データは、13~23年(18年休止)、計10年間の結果でまとめた。
(1)…近年波乱。1番人気[5-0-1-4]、勝つか大敗かのパターンで、昨年、一昨年は13、9着と大きく崩れた。これは南関東限定→地方競馬交流がおそらく大きい。遠征馬の評価が例年微妙。
(2)…川崎優勢。ホーム川崎=6勝、2着5回。正直交流開始後ふるわないが、少し癖のあるコース(急カーブ)だけにメリットはやはり大きい。以下、道営=2勝、2着1回、船橋=1勝、2着4回、浦和=1勝。
(3)…若武者賞。TR「若武者賞」好走馬(3着以内)からパレガルニエ、ヴァイタルシーズなど優勝4頭。その時点のスピード能力、完成度がモノをいうケースも多い。牝馬[1-1-2-32]。アベレージこそ低いが可能性はある。
(4)…差し注目。逃げ=5、先行=4、差し=7、追込=4。2歳戦ながら“行った行った”の決着は案外少ない。15年トキノコジロー→ジョウテンデヒアなど豪快な逆転劇。騎手では、今野、左海Jがともに2勝、2着1。
※データ推奨馬
◎ミータロー…道営2勝、短距離経験しかないものの、千~千二を好時計勝ち、自在脚質という点が21年優勝ナンテカとよく似ている。このレース出走の道営馬は、人気薄の好走(昨年ニシノファイターなど)が一つセオリー。鞍上・服部茂史騎手は全国レベルの腕達者で、昨暮れ12~今春2月、南関東限定騎乗時には、重賞・ゴールドC、報知オールスターカップ、人気薄イブロン(9番人気)、ロードキャニオン(11番人気)をそれぞれ2着に導いた。記者自身は“追い込み得意”のイメージを持っている。
☆ ☆
◎インサイドザパーク 55左海
○クラグオー 55今野
▲ナスノキセキ 54山崎誠
△ミータロー 55服部茂
△アイディンゴッテス 54石崎駿
△スガキュール 55町田
△ドリームキングダム 55真島
ウィンゲイル 55戸崎
ヒカリワールド 54杉村
ルード 54大原
船橋・インサイドザパークに期待した。デビューから[2-2-0-0]。一貫末脚勝負という点が大きな魅力で、結果不器用さが災いした前2走(22着)も、直線大外から豪快に伸び、何ともインパクトの強い競馬をみせた。父タイムパラドックス。430~440キロ台と小柄だが、血統通りの瞬発力とガッツがあり、なにより加速がついて重心がグッと沈む走法が素晴らしい。現時点で時計の裏付こそないものの、流れなり、相手なりに動くイメージ。川崎初コース、初ナイターにもおそらく動じないタイプだろう。ここで全国区(対道営勢)通用なら、来春へ向けて夢が広がる。前述通り、鞍上・左海騎手はこのレースと相性がいい。
その道営勢は、ダート通算[4-1-0-2]のクラグオーがやはり筆頭。父クラキングオー(道営記念勝ち、名古屋グランプリ4着など)、母クラシャトル、姉クラキンコ(道営3冠馬)と異色だが、逆にいえばいかにも地方馬然とした血を受け継ぎ、そのレースぶりもパワー優先で逞しい。
データ欄推奨ミータローは、初コース千五をどうこなすか。もっとも、プリサイスエンド×リンドシェーバーの背景からは、本来マイル(前後)向きとの見方も十分成り立つ。
TR・若武者賞は、レース自体が前崩れ、追込み決着。それでも四角7番手から大外を突き抜けたナスノキセキの切れ味は評価でき、同馬の場合、九百=54秒4の新馬勝ちもあるだけに、まだまだ上積み、新境地を期待していい。2着スガキュール、3着ウィンゲイルは、当時ナスノキセキに2.1/2馬身差をつけられた。今回時計短縮がテーマになる。2頭の比較は血統面の奥行きで前者をとった。他では浦和2連勝、時計レベルはさておき勢いを感じるアイディンゴッテス、血統、馬格に魅力があるドリームキングダム。
◆埼玉新聞栄冠賞回顧
(10月10日 浦和 サラ3歳以上 別定 南関東SIII 1900m良)
◎(1)トーセンアレス 2分01秒6
○(2)カキツバタロイヤル クビ
△(3)ドラゴンウィスカー 5
(4)ナムラブレット 3/4
△(5)ドリームストライド 1.1/2
………………
(6)トーセンゴライアス
△(7)ドラゴンキラリ
△(8)ベルモントガリバー
▲(9)ケイアイライジン
単130円 馬複330円 馬単420円 3連複1280円 3連単2830円
トーセンアレスが力通りの競馬をみせた。逃げ候補ケイアイライジン、ドリームストライドにハナを切る意思がなく、最内1番枠カキツバタロイヤルが自らペースを作る、やや予想外の展開。しかしトーセンアレスは、道中4番手をソツなく進み、3~4コーナー、勝負どころの反応も文句なかった。直線入口、カキツバタの外に馬体を併せ、そこから息の長い末脚で勝負を決めた。
「前走(千四オーバルSP・鼻差2着)手応えをつかんでいたし、今日は負けられないと思っていた。道中行きっぷりがよすぎるくらいで、イメージ以上にレースも巧い」(張田騎手)
最後“首差”は案外手こずった感じもあるが、千九良=2分01秒6(昨年ボランタス=02秒3)を考え合わせると内容十分。結果接戦になったのは相手も走ったためだろう。
トーセンアレスは、JRA4勝(千八~二千百)のアドマイヤドン産駒。本格派の中~長距離型と断言でき、今回転入2戦目で舞台も整い、きわめて順当な勝利を収めた。改めてパドック、返し馬などじっくり見たが、手脚がすらりと伸びた典型的なステイヤー体型。加速がついて馬体が沈む脚さばきも、長距離を走らせて理想的なフォームといえる。南関東転入、水が合ったとなれば、この路線で夢が広がる。
「まだぎりぎりの仕上げではないし(この日2キロ増)、自分で勝ちに行ったレースだから収穫があった。楽しみですね。大きなところが狙える馬」(小久保智調教師)
次走は川崎11月5日GI・JBCクラシックと明言された。強気でなる同調教師らしい決断。もっともその左回り二千百はJRA時最も得意とした条件で、馬自身さらに上積みを想定すれば十分チャンスが浮かんでくる。
カキツバタロイヤルは立派な2着。昨年02秒3を大きく詰め、最後差し返したレースぶりにも、完成と円熟を感じさせた。東海5勝で転入、どこか地味なイメージながら現実に重賞2勝。昨春GII・ダイオライト記念、スマートファルコンの2着もある。距離万能、展開に左右されない芯の強さ。今回は高橋利幸騎手も思い切りのよい騎乗で結果が出た。大きな自信になるだろう。
ドラゴンウィスカー3着。中団のインをロスなく回り、鞍上・水野騎手、ほぼ100%のレースをした。浦和適性(3歳時ニューイヤーC勝ち)は確かだが、今回の場合、先着2頭のレベルが高い。逆にドリームストライド、ケイアイライジンは、不完全燃焼の競馬とみえる。前者は格上挑戦を意識したか、道中いかにも消極的、後者は状態ひと息か、勝負どころを待たず失速した。
次走要注意といえばベルモントガリバーだろう。転入初戦、8か月ぶり、4キロ増。それでも上がり3Fはメンバー中3番目で、地力とパワーは示している。JRA4勝は千七~千八。ティンパーカントリー×アジュディケーティングの血統背景も南関東向きだ。