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新種牡馬戦線に異変あり!?(村本浩平)

  • 2012年10月19日(金) 18時00分
 今年のファーストシーズンサイアーに異変が起きている。

 ここ数年、産駒数に後押しされる形でファーストシーズンサイアーを独占してきた、社台スタリオンステーション繋養種牡馬(チチカステナンゴ、メイショウサムソン)の産駒が勝ちあぐむ一方で、ブリーダーズスタリオンステーションで繋養されているブラックタイド産駒が大活躍。先日のGIIデイリー杯2歳Sもテイエムイナズマ(牡2、栗東・福島信晴)が優勝し、新種牡馬第1号の重賞タイトルを父に授ける形となった。

 ちなみにテイエムイナズマは、この春の取材メモには入っていない馬。もし、POGなどで指名されていた方がいらっしゃるのなら、来年はその情報網を駆使してもらって、赤本での執筆をお願いしたい(笑)。

 ところでテイエムイナズマ以外のブラックタイド産駒に関しては、何頭かメモを取っており、産駒共通の特徴として「完成度が高い」「弟(ディープインパクト)の産駒と比べると、充実ぶりが目立つ」と書いてある。

 確かにブラックタイド自身のデビュー前も知っているが、ノーザンファーム早来牧場の坂路を駆け上がってくる姿は、パワフルかつスピード感満点だったし、03年の赤本を開いたところ、なんと全体の一位指名をしていた。

 後の名種牡馬を当てるだなんて我ながら凄い相馬眼(笑)だなあと思うが、当時はディープインパクトがブラックタイドの弟、という評価であり、ブラックタイドを知っている人間にとっては、ディープインパクトの頼りなさげにも思える馬体が不安に感じたのは事実。しかし、その頼りなさげな馬体を軽さと速さに変えて、ディープインパクトは無敗で三冠制覇を遂げた一方で、ブラックタイドは怪我などもあって、ポテンシャルの高さをすべて発揮できたとは言えないような現役生活を送った。

 しかし、そもそもディープインパクトの全兄弟であり、皐月賞でも2番人気の評価を集めていたほど、能力を認められていたサンデーサイレンス産駒となれば、少なくとも生産界が放っておくわけがない。競争生活の晩年は脚元の戦いに終始した感があったブラックタイドではあるが、種牡馬入り初年度に150頭の繁殖牝馬を集めたことからも、生産界からの期待度がうかがえる。

 重賞馬となったテイエムイナズマは、この後、出走が予定されているGI・朝日杯FSでも好走を見せてくれそうであり、次期に勝ち上がってきそうな産駒たちも多く見られる。ますます今年のフレッシュサイアーチャンピオンに近づいた印象があるが、実は来年デビューの現1歳馬は、今年(79頭)を遙かに上回る94頭の産駒がデビューを控えている。

 来年は今年よりも2歳戦での産駒成績が上がってくることは約束されたようなもの。今年の反省を生かして、来年の2歳馬取材においては、ブラックタイド産駒探しも怠らないようにしたい。

 一方、今年のファーストシーズンサイアーの大本命とされながら、今一歩突き抜けられない印象を受けるのがチチカステナンゴ産駒。しかし、2歳戦のレースに中距離のレースが増えてくるに従って、勝ち鞍を上げる産駒も現れてきた。

 そもそも今年のGI仏ダービー馬で、GIIニエル賞も勝利して、GI凱旋門賞にも出走したサオノア(牡3)の父でもあるように、種牡馬実績は超一流。2歳戦の忙しい競馬には向いていないというだけで、初年度産駒が3歳を迎え、クラシックのトライアルレースが行われる頃には、重賞級の大物が現れてもなんら不思議ではないはず。

 一方、メイショウサムソンだが、父オペラハウスの産駒実績からしても、数は少なくともスーパーホースを送り出す種牡馬、という見方をしたほうがいいのかもしれない。メイショウサムソン、そしてテイエムオペラオーの血統もそうだが、決して繁殖牝馬を選んでいないところからしても、一般的な良血馬との配合以外でも目を光らせておいた方がいいだろう。

 個人的にはメイショウサムソンのような種牡馬から、父を彷彿とさせるような活躍をする産駒が現れてこそ競馬は盛り上がると思うので、現2歳、そして来年の1歳世代に、父のようなスーパーホースがいることを祈念したい。

▼筆者:村本浩平
 1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。

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