4月16日川崎、羽田盃優先出走権(1、2着馬)を賭けた「クラウンC」は、ウィンブローの完勝だった。紅一点ディーエスメイドンの引っ張る平均ペースを、少々首の高いフォームながら2番手で折り合い、直線中ほど、GOサインが出ると、待ってましたとばかり脚を伸ばした。一気に突き抜けて2馬身差。「今日は道中ずっと手応えがよかった。返し馬でイレ込みが気になったけど、実戦では大丈夫。どんなレースでもできる馬だね」と、重賞ハンター・石崎隆Jも合格点をつけた。
前走しらさぎ賞を1番人気で4着。どうにも折り合いがぎこちなく、2000mは微妙と思えたが、競走馬は経験を積み一戦ごとに変わっていく、終わってみればそういうことか。ただ、今日は数字(-5キロ)を別にして、パドックなど悠々とした落ち着きがあり、馬体にも以前にない幅と厚みを感じた。
山崎尋美調教師は開業4年9か月で重賞初勝利。自身川崎のスタージョッキー、厩舎は多くの素質馬、良血馬を擁し、すでに川崎リーディングも獲得している。意外といえばいえば意外だが、およそ巡り合わせとはそんなもの。おそらくこれでふっ切れる。
クラウンC(サラ3歳、別定、南関東G3、2000m梢重)
▲(1)ウィンブロー (55・石崎隆) 2分10秒9
○(2)ウツミジョーダン (56・佐藤隆) 2
◎(3)ティーケートロット (55・酒井) 鼻
△(4)ディーエスメイドン (54・一ノ瀬) 首
(5)エンジェルボーイ (55・森下) 1.1/2
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△(8)アタゴトルネイド (54・左海)
単260円 馬複390円 馬単850円
3連複500円 3連単1990円
羽田盃優先出走権。むろん山崎師は前向きで、「最後の脚いろがまだ不満だがとりあえずメドが立った。精いっぱい頑張らせたい」と挑戦の抱負を語った。クラシックに置けるTRの役割りは当然重く、しかし実際は過去南関東で、川崎→大井など、他場レース好走馬について自場優先出走を認めたのは、有史以来初めてだった。遅きに失したにせよやはり画期的だろう。
2000m2分10秒9の勝ちタイム。昨年キングセイバー10秒6と較べると馬場差を含めやや落ちるが、さりとて決定的なビハインドでもない。あとはウィンブロー自身、当日までの成長力。本番で好走できれば、同時に「クラウンC」の位置付けももう一段上がってくる。
ウツミジョーダン、ティーケートロットは、最後厳しい2着争いだった。同じトロットサンダー産駒。しかしこの日もまったく違う持ち味を見せている。瞬発力と競馬センスの前者、馬力とスタミナの後者。記者◎トロットは、イメージ通りの競馬で、インを突いた酒井騎手も好プレーだったが、結局わずか届かなかった。それでも3着賞金200万円を上積みして累計1200万円に届いたから、ひとまず羽田盃当確だろう。混戦で力の競馬になれば出番がある。
ディーエスメイドンは意外な逃げ。「行きたくなかったが押し出されてしまった」と一ノ瀬騎手。この展開で牡馬と互角に叩き合えればプリンセス賞、関東オークスに夢がつながる。エンジェルボーイは長距離型ながら決め手不足。アタゴトルネイドは行き脚がつかず馬群に沈んだ。
さて回避したパレガルニエ、ブラックミラージュ。当初から羽田盃ぶっつけも匂わせていたブラックミラージュは予定通りに近いが、パレガルニエの方はひとまず追い切りを消化したものの直前回避。3月初旬放牧から帰厩後、減っていた馬体が戻らず、やむなく自重となったようだ。脚部不安うんぬんでないことは救いだが、とにかくクラシックは生涯1度。彼女によほど強い運がないと、今春の道のりは正直険しい。
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マイルグランプリ出走予定馬(大井4月24日、サラ4歳以上、別定、南関東G1、1590m)
◎コアレスハンター (57・内田博)
○フジノテンビー (57・佐藤隆)
▲バンケーティング (57・的場文)
△ハタノアドニス (57)
△ベルモントアクター (57・石崎隆)
△クールアイバー (57・森下)
このレース、1~3着馬に、6月4日船橋1600m「かしわ記念=統一G2」の優先出走権が与えられる。クラウンC=羽田盃同様、JRAも含めダート戦を真のチャンピオンシップに盛り上げていこうという番組改定。急きょの事情もあるらしく、どのレースがどのレースにリンクするか今後まだ不透明(未発表)だが、いったん始まってしまえば、むろんこの流れは止められまい。個々の重賞にかつてと違った重みが出ること。重賞体系が“点”でなく“線”としてつながること。コンサートボーイ、アブクマポーロ、インテリパワー、いわく名馬が勝ってきた「マイルGP」も、さらに大きな転機を迎える。
コアレスハンターは前走金盃で素晴らしく強いレースをした。2着オンユアマークを6馬身ちぎり最後まだ余裕残し。2000m2分5秒5、多少馬場差があるにせよ、東京大賞典ゴールドアリュールを現実にコンマ1秒凌いでいる。その大賞典7着は、今思えば任された御神本騎手が少し大事に乗りすぎたうらみもある。差す競馬に回って頼りない(裏付けがない)のは確かだが、それは他の人気馬も同じ状況。ここでサバイバルを抜け出せれば、それこそ「かしわ記念」のメドも立つ。ムダがなくピンと張り詰めた馬体。今が旬と判断した。
フジノテンビーは前走船橋記念2着。エスプリシーズには勢いの差を見せつけられたが、自身ケレン味ない逃げでいいリズムが戻っている。元より2歳時芝G2デイリー杯を制し、明けてユニコーンS2着。常に完全燃焼というタイプだけに、休み明け2~3戦目がおそらくピークだ。軽い馬場なら逆転も十分浮かぶ。
昨秋岩手南部杯2着バンケーティングが大賞典→金盃と叩いて南関東3戦目。アジュディケーティング×ミルジョージ、距離適性も含めまだ全貌がみえてこないが、逆に4歳の若さと可能性を買う手がある。
ハタノアドニスは典型的なスプリンターで、距離延びて乗り方が難しい。ベルモントアクターは金盃、ダイオライト記念、結果そのものより、寂しく写る馬体が不満。むしろ上昇度でクールアイバーだが、同斤57キロは実績、総合力の比較で厳しいか。