◆平和賞展望(10月31日 サラ2歳 定量 地方競馬交流 南関東SIII 1600m)
平和賞は今年第57回目、南関東では「全日本2歳優駿=川崎・今年第62回目」に次ぐ歴史を持つ伝統の2歳重賞。それにしては明春クラシックに案外結びつかない傾向が続いたが、近年その優勝馬、好走馬からシーチャリオット、フリオーソなど大物出現。加えて平成18年から全国地方交流と出走条件が変更され、レースの格がワンランク上がっている。
鎌倉記念(川崎)→平和賞(船橋)→ハイセイコー記念(大井)、レース施行順が各年まちまちなだけに微妙だが、同じ“左回り千六”、その観点からは今回平和賞が、GI2歳優駿へ向け最も有力なトライアルといえるだろう。
ただ今年は、近年主力となる北海道勢に傑出馬が見当たらない。鎌倉記念2~3着、クラグオー、ミータローが回避。大物感があるストーミングスター(イノセントC勝ち)も登録だけで出走を見送った。現時点レベル上位(南関東比較で)とみられる船橋勢、そこで何が抜け出すか。いずれにせよ“本気度”が高い一戦とはイメージできる。
(1)…波乱含み。1人気[4-1-3-2]は水準だが、2人気[0-3-1-6]と冴えず、代わりに3人気が[2-2-1-5]と補完する。ここ2年は、4→7人気、3→2人気の決着。やはり波乱が前提か。
(2)…船橋VS北海道。船橋=6勝、2着3回、道営=4勝、2着4回。この2場以外からは優勝馬がなく、川崎=2着2回、大井=2着1回。3着まで広げても、道営5、船橋4、川崎1。明確な差がある。
(3)…素質馬。優勝馬の平均キャリア=3.6戦、同2着馬=4.9戦。経験より素質という傾向で、16年シーチャリオット、22年ヴァインバッハはデビュー2戦目重賞制覇。牝馬も[2-2-2-14]で、十分脈あり。
(4)…先行有利。逃げ=6、先行=3、差し=8、追込=3。能力(素質)上位の馬が逃げ、それを上昇馬が差す形がひとつのパターン。鎌倉記念出走馬から連対4頭、北海道優駿組から同2頭。さして確率は高くない。
※データ推奨馬
◎ヒデサンスピリット…船橋デビュー。新馬戦を勝っただけのキャリアだが、そのレースぶりはとにかくインパクトが強かった。持ったまま8馬身差。プリサイスエンド×フジキセキの背景なら本来マイル向きと判断でき、今回の顔ぶれ、枠順(3番)からは単騎逃げの可能性もある。JRA岩田騎手起用。このパターン(地方馬にJRAジョッキー)は、09年ナンテカ=武豊騎手の成功例がある。
☆ ☆
◎インサイドザパーク 55左海
○ヒデサンスピリット 55岩田
▲アメイジア 55御神本
△エスケイロード 55張田
△ドリームゴーゴー 55戸崎
△キャプテンガール 54川島
△オグリタイム 55本橋
グレイスウォード 55坂井
ハードデイズナイト 54山崎誠
インサイドザパークの前進に期待した。船橋生え抜き、前走・鎌倉記念を制し[3-2-2-0]としたタイムパラドックス産駒。特長は2歳馬らしからぬ強烈な末脚で、一連時計、着差など平凡(鎌倉記念=千五1分35秒4、2着に首差)でも、いったんエンジンかかっての爆発力は、数字に表われない凄みがある。その鎌倉記念から中2週、確かに当時10キロ減は気になるが、今回輸送のない地元競馬で、実際追い切りも手控えることなくきっちりこなした。いい勝利を収め、次走12月19日川崎・全日本2歳優駿=GIへ向かえれば理想的。鎌倉記念2~3着、クラグオー、ミータロー(ともに道営)が回避し、見方によってはかなり楽な組み合わせともいえる。
ただし前述通りヒデサンスピリットは、相当の大物感を漂わせた新馬勝ち。馬格(485キロ)などインサイドよりはるかに恵まれ、フットワークもパワフルで力強い。一気の距離延長(千→千五)をどう折り合うかが今回テーマ。岩田騎手の手綱捌きにも興味が大きい。
▲アメイジアは前走・シーサイドアイドル特別で現実にインサイドを退けた。父イーグルカフェ、520キロ台の大型馬ながらレースぶりはなかなか機敏で、常に流れなり、相手なりの競馬ができる。現時点の完成度、安定性をとるなら、メンバー中?1の評価も可能だ。
今回道営組にはあまり食指が動かない。実績上位はすでに4勝しているオグリタイムだが、時計に目立ったものがなく、前走・サンライズカップ=千七、6着も勝ち馬に大きく離され平凡だった。グレイスウォード(2勝)、ハードデイズナイト(1勝)は千~千二だけの経験で、時計、レースぶりからも昨年エンジェルツイート(同パターンで優勝)ほどの速さ、強さがイメージできない。
それなら南関東勢。デビューから一貫強敵相手にいい経験を積んでいるエスケイロード、キャプテンガール、2戦目千五の勝ちっぷりが出色だったドリームゴーゴーをマークする。
◆マイルグランプリ回顧(10月24日 大井 サラ3歳以上 別定 南関東SII 1600m梢
重)
▲(1)ピエールタイガー 1分40秒5
△(2)ラインジュエル 2.1/2
◎(3)フジノウェーブ 3/4
△(4)マニエリスム アタマ
(5)ボンネビルレコード クビ
……………
(6)ケイアイゲンブ
○(7)スマートインパルス
△(11)ナムラブレット
△(12)トーセンルーチェ
(14)ブリーズフレイバー
単340円 馬複9770円 馬単12870円 3連複16120円 3連単116090円
ピエールタイガーが2番手から3~4コーナー先頭。そのまま力強く押し切った。
ダッシュ自体はやや鈍く、内からブリーズフレイバーに突っ張られ、けっして楽な展開にもみえなかったが、結果的にそれでむしろスムーズに折り合えた。直線もうひと脚使って最後2.1/2馬身差。千六1分40秒5は平凡(昨年ボク=38秒9)ながら、開催前砂が入り重苦しい馬場だけに、1.0~1.5秒程度差し引きできる。勝ちっぷりのインパクトは十分合格点といっていい。
ピエールタイガーはこれで転入9勝目、内7勝がマイル戦。南関東重賞こそ初制覇だが(道営時、北海優駿勝ち)、実績、地力は堂々たるオープン馬で、そう考えると今回は“順当勝ち”の言葉が当たる。
「道中2番手は先生(荒山徳一調教師)と話し合ったイメージ通り。うれしい。もともと重賞を獲れる力は感じていたし、自分自身、やっと乗りこなせたという思いです」(真島大輔騎手)。逃げて目標にされた「サンタアニタT」2着、馬混みにもまれ不完全燃焼に終わった「スパーキングサマーC」5着。モヤモヤが一気に晴れた笑顔とみえた。
もう一つ、同馬に関して思うのは、心身両面、きわめてタフで逞しいこと。今年すでに10戦目。とりわけ逃げて潰れた前々走「オーバルSP」7着など、かなりのショック、ダメージがあって不思議ないが、どうして押せ押せで使われ、見事に立ち直って結果を出した。父カコイーシーズ。打たれ強い…という意味で、同産駒コンサートボーイあたりとどこか似ている。次走未定(放牧リフレッシュ)とされたが、記者個人的には、大目標・来季「かしわ記念」と期待をかけたい。
2着ラインジュエル。中団を終始スムーズに進み抜群の手応え。直線入口では突き抜けるかの勢いだった。これがハンデ戦(52~53キロ)なら十分勝機があっただろう。いずれにせよ昨年5着から一歩前進。8歳牝馬ながら健在という以上に充実している。
フジノウェーブは本来内枠がほしいタイプで(ラチを頼って走る傾向)、今回10番枠が辛かった。直線外を伸びて3着確保は、ひとまず健闘であり貫禄か。今後同馬にチャンスが巡れば、大井千四、そして内枠が条件になる。
同じく10歳ボンネビルレコード5着もある意味感動的だが、同馬の場合、距離万能の反面、切れ味が減殺した今、どの状況(展開)でも入着以上が遠くなった。以下、マニエリスム4着はほぼ現状の力通り。トーセンルーチェ(12着)、ブリーズフレイバー(14着)大敗も、それぞれ距離適性を含めれば仕方ない結果と言えるなかで、1番人気・スマートインパルス7着は期待外れだが、御神本騎手「内枠で他馬とぶつかり、そこでスイッチが切れてしまった…」。もとより気性に難しさを抱えた同馬だけに、次走一変の期待はもちろん浮かぶ。
他ではケイアイゲンブが復調気配。上がり39秒3はメンバー中第3位で、ようやくレース勘、闘志が戻ってきた。適条件(千六)を使えれば絶好の穴馬になる。