長距離の、それもあまりごまかしの利かない底力を問われるレースは少ない。そのため、この東京2500mで台頭した若い馬(とくに4歳馬)は、昨11年のトレイルブレイザーを筆頭に、10年のトーセンジョーダン、09年2着のアーネストリー、08年のスクリーンヒーロー、ジャガーメイル、07年のアドマイヤジュピタ…など、4歳馬として勝ち負けした馬のほとんどが、やがてGI級に育っている。
いま、この重賞は大変な出世レースになりつつある。東京のハンデ戦であること、ちょうど世代交替のシーズンでもあるからだろう。
また、ごく順当という結果が少ないのも、もうこれはずっと以前からの「東京の長距離戦」の特徴で、普段の2000m級のレースから予測される「長距離馬としての資質」の見きわめが非常に難しいことも示している。
たとえは古すぎるが、ずっと昔、東京で3200mの秋の天皇賞が行われていたころ、58キロで古馬の頂点を争うレースなのに、みんなの支持した1番人気馬が、10数連敗もした記録がある。東京の長距離戦で、本当に苦しいレースになると、いわゆるスタミナ能力や、底力は、みんなの予測と異なったのである。
今年、若いグループの4歳の成長株に相当するのは、マイネルマーク、ルルーシュ、ムスカテール、オーシャンブルー」あたりか。ギュスターヴクライはすでにトップグループの仲間入りしているから新勢力ではなく、ハンデも58キロを課せられている。
逆に、ベテランやGIホースに該当する馬は、最近に限ると、ほとんど連対できなくなっている。昨年、6歳のオウケンブルースリが58.5キロのトップハンデで2着したのが光るくらいである。
マイネルキッツ、トウカイトリックの超ベテランはもちろん、59キロが気になるビートブラック、7歳オウケンブルースリあたりもあまり肩入れしない方がいいタイプか。
ただ、近年の傾向に逆らうようだが、新勢力に相当する4歳馬を評価しつつも、7歳オウケンブルースリの評価を下げないでおきたい。この馬、もう丸3年も前になる10年の京都大賞典のあと勝っていないが、腰や脚部を痛め、好状態で出走したことが非常に少ない。
4歳秋(09年)、ジャパンCを2分22秒4(ウオッカと小差。かわす勢いだった)で激走しすぎたのが、そのあと約1年の休養にもつながり、大スランプの始まりだった。だが、あまり体調の良くなかったシーズンを含めても、ジャパンCに4年連続して出走。もっとも成績が悪かった昨年も0秒8差だけ。
このシーズン、東京の2400~2500mでは凡走はない。だから、昨秋のこのレースもトレイルブレイザーと0秒2差の接戦だった。
今年も前走あたりから明らかに体調は上がっている。状態の良くないときは格下馬にも大きく見劣る坂路の追い切りで、前回もそこそこに頑張ったが、今回は53秒1で先着してみせた。珍しいことである。明らかに調子を上げている。90%ぐらいに戻ってくれたら、この馬の58キロは有利だろう。菊花賞を制したのはともかく、ジャパンCを2分22秒4で快走した馬である。
トニービン、ジャングルポケットと続く父系の最大長所を受け継ぎ、東京の2400~2500mなら凡走しないパターンを信じたい。前走の内容も悪くない。差し返していた。牝系ファミリーもタフな一族。マイネルキッツの父として知られるチーフベアハート(先日死亡)が近親馬にいる。
ギュスターヴクライ、ルルーシュ(前回の敗因が不明)、ムスカテールが相手本線。オーシャンブルー、フォゲッタブル、渋いトウカイパラダイスを相手に加えたい。