季節も深まり、大竹厩舎が実りの秋を迎えた。10月以降にデビューしたタイダルベイスン、ジェベルムーサ、ダブルゴールド、ピクシーホロウがいずれも新馬勝ちを収めた(11月11日現在)。これで今年の2歳世代の新馬成績は6戦5勝。新馬勝利数は西園厩舎(17戦5勝)と並び、勝率83.3%(6戦以上)は角居、池江厩舎の勝率50%(8戦4勝)を大きく上回っている。
入厩から2か月近くかけてデビューさせることもあり、乗り込み量は豊富。調教内容は坂路で基礎体力を作ってから、ウッドコースに切り換えて長めの距離をジックリ走らせている。芝を使う馬は実戦を意識してポリトラックコースでスピード調教も行っている。
特徴的なのは新馬5勝の内、3勝を芝1800〜2000mで挙げていることだ。その点について大竹調教師は「芝の中距離戦は出走頭数が落ち着く傾向にあるので、初めての実戦で過度なプレッシャーを与えなくていい面があります。馬群に入れて折り合いを覚えさせることができますし、競馬を教えるのに最適だと考えています」と話す。
兄に芝1400m3勝のラトルスネークを兄に持つタイダルベイスン(東京芝2000m1着)、近親にスプリンターのビウイッチアス、クイーンズバーンがいるピクシーホロウ(福島芝1800m)は短距離因りの血統背景だが、コース調教で我慢して走らせることを意識させていた。若い時期に適距離を決めつけずに、今後の選択肢を広げる意図もあるのだろう。
5回中山デビュー組も芝、ダートの中距離路線を睨んで使い分けすることになりそうだ。ヤマトダイアンサス(牝、父ゼンノロブロイ、母ノエラロワイヤル)、ポッドフェローズ(牡、父ジャングルポケット、母ラヴァーズレーン)、ウイントレジャー(牝、父アドマイヤマックス、母マイネルキナ)は7日の坂路で3頭併せを行った。
北村宏騎手を背にしたヤマトダイアンサスが3頭併せの真ん中からグイッとひと伸び。手綱を抑えたまま、1F12秒3と鋭い伸びを披露した。「兄(プレゼピオ)はダートで3勝していますが、フットワークが大きく、芝向きの軽い走りをしますね。気性も素直ですし、長めの距離がいいと思います」。このまま調整が進めば、11月25日メイクデビュー東京(芝2000m)でのデビューも視野に入れている。
ポッドフェローズは現オープンのトキノフウジンの半弟。
「トキノフウジンというよりはウチの厩舎にいるローレルキングダム(半兄、ダート長距離戦で2勝)にタイプは似ていますね。今週の追い切りでも一杯に追いましたが、過去の経験からジャングルポケット産駒はビシッと追った方が良さそうので強めに負荷をかけていきたいと考えています」
札幌競馬場でゲート試験に合格したウイントレジャー(牝、父アドマイヤマックス、母マイネルキナ)はいったん放牧に出た後、10月26日に美浦トレセンに再入厩。初追い切りの形になった7日の坂路では先行するヤマトダイアンサスに追い付き、併入に持ち込んだ。
「北海道で調整していたときよりも体力がついていきたのでケイコでも動けるようになってきました。元々、いいモノを持っている馬ですし、ひと息入れたことで成長が追い付いてきた感じですね。これからジックリ乗り込んで、中身を作っていきたいと思います」
イヤーオブドラゴン(牡、母Spun Gold)は初年度産駒にあたる現3歳世代のエアハリファ(現1600万)、キズマ(昇竜S2着)、サトノインスパイア(全2勝)の3頭がすべて勝ち上がったDiscreet Cat産駒。新馬駆けする血統(新馬成績:1-1-0-1)だけに初戦から期待がかかる。初めて本格的に追い切った7日の坂路では古馬1000万のユースフルと互角の動きを見せた。
「フットワークにクセがないですし、軸がブレずに走れるので、バランスもいいですね。調教の動きからも能力の高さを感じます」
Discreet Cat産駒はJRA7勝中6勝をダートで挙げているが、距離も含めて今後の調教で適性を見極めていく。
▼筆者:辻三蔵
レーシングライター。元ホースニュース馬」美浦所属トラックマン。