マイルチャンピオンシップはタスキリレーだ。と去年のここで書いた。
よく使われる表現に「このレースはリピーターが多い」というのがある。
同じ馬が何度か同じレースで来るときに使われる表現だけど、マイルチャンピオンの場合はリピートだけでは言い足りない側面がある。
リピート&スイッチ。リピート&チェンジ。
リレー。
駅伝。
前年3着以内に走った馬が前年渡されたバトンを他の馬に渡すために翌年も走る。
そして3着以内に入って、新しく3着以内に入った馬にバトンを渡す。
基本的にはこの繰り返し。
たとえば、
03年に1着したデュランダルはバトンを渡すために04年にも走り1着し、2着のダンスインザムードにバトンを渡した。
バトンを受け取ったダンスインザムードはそのバトンを渡すために05年も走り4着し(4着に取りこぼすことあり。けれど基本は馬券圏内)、2着のダイワメジャーにバトンを渡した。
バトンを受け取ったダイワメジャーはバトンを渡すために06年も走り1着し、9着の3歳スーパーホーネットにバトンを渡した(バトン渡し相手は5着以内の馬が基本だけど、3歳は5着以下でもかまわない)。
スーパーホーネットは07年に2着し、4着のカンパニーにバトンを渡し、カンパニーは08年に1着し、3着のサプレザにバトンを渡し……。
(詳しくは去年の当コラムで書いたので、今年は割愛。ちなみに去年はバトンホースとして、サプレザとフィフスペトルを指名し、3着、2着した。3歳のリアルインパクトとグランプリボスをもしかしたら…と記したがこちらはダメだった。)
つまり馬券的には去年のマイルチャンピオンに出走し、今年バトンを渡すために出走する馬を狙えばいいわけだ。
では、去年バトンを受け取って、もしくは隠し持って、今年バトンを渡しにくる馬はなにか?
去年出走し、今年も出走する馬
1着 4歳エイシンアポロン 5人気
2着 5歳フィフスペトル 11人気
4着 5歳ダノンヨーヨー 12人気
5着 3歳リアルインパクト 1人気
6着 3歳マルセリーナ 9人気
8着 6歳シルポート 7人気
13着 3歳グランプリボス 6人気
けっこういっぱいいる。今年はけっこう難解だ。理由は去年1着のエイシンアポロンの直近の走りに覇気が感じられないからだ。去年1着2着した馬が今年も人気だと3着以内で鉄板指名できる。しかし今年は人気も上がってきそうにない。
となると、面白みはその下の列の馬となる。
4着 5歳ダノンヨーヨー 12人気
5着 3歳リアルインパクト 1人気
6着 3歳マルセリーナ 9人気
13着 3歳グランプリボス 6人気
4歳時2着→5歳時4着のダノンヨーヨーには3着→4着→3着のサプレザや2着→4着→2着のダンスインザムードのパターンが思い浮かぶ。
あとの3頭はジャンプアップ実績いっぱいの3歳馬。
デュランダルは3歳時7人気で10着から翌年5人気で1着した。
スーパーホーネットは3歳時11人気で9着から翌年4人気で2着した。
3歳時出走馬にかぎっては、いわゆる「求められちゃうもの」は適性だけでなく「成長」ともいえそうだ。
リアルインパクト・マルセリーナ・グランプリボスには成長はあるのだろうか。
この3頭に共通することは3歳時にマイルのGIを勝っていること。
リアルインパクト 安田記念
マルセリーナ 桜花賞
グランプリボス NHKマイル
はたしてこれらのGIマイルを勝った馬はマイルチャンピオンではどうなんだろう?
ダイワメジャーは安田記念とマイルチャンピオンシップ(以後,MC表記)を両方勝っている。
スーパーホーネットは安田記念2着でMC2着2回の実績がある。
ダンスインザムードは桜花賞1着でMC2着2回。
ラインクラフトは桜花賞1着、NHKマイル1着でMC3着。
テレグノシスはNHKマイル1着で、MC3着。
安田記念とマイルチャンピオンは親和性が低いとも言われるけど、強い馬はどっちでも強いし、ちょっと強い馬はどっちでもちょっと強いことがダイワメジャーとスーパーホーネットからもわかる。
桜花賞馬もNHKマイルC馬も馬券圏内という意味では悪くないこともわかる。
実績面では馬券圏内の可能性があることはわかった。
となるとやっぱり大事なのは成長か。
グランプリボスはわかりやすい。
3歳時は外国人騎手でしか連対できなかった馬が4歳になって内田博騎手で連対(安田記念2着・スワンS1着)できるようになった。ここを成長と取ってみたい。
おまけにこの馬は朝日F1着(中山マイル)の実績もある。2歳で中山マイル1着、3歳で東京マイル1着、4歳春に東京マイル2着。馬に走る気があれば、マイルならばダイワメジャー同様にどこの競馬場でも強い可能性もある。勲章という意味でも京都マイル1着はぜひとも欲しいか。
予想オッズでは現在1番人気。これは頼もしい。スワンS3人気で1着からの臨戦は同厩舎のスーパーホーネットと同じだ。
リアルインパクトはどうか?
この馬は3歳春に古馬混合の安田記念を勝ってしまったから、その後の成長の見極めより、今の状態が整ってるかの見極めの方が大事。毎日王冠を見るかぎりでは走りは悪くないように思える。
この馬は内枠を先行し、抜け出すのが好走パターンでもあり、そういう馬に内差し名人(去年のエリザベスのスノーフェアリーでも披露)のムーア騎乗は心強いはず。
今週は雨模様でもあり、なおかつ内はCコース開幕。去年もCコース開幕だったけど土曜日に雨が降って、外有利か?と思われたけど、日曜日にドンドン乾いていって、やっぱり内が有利になった。天気次第、枠次第ではあるけど、ムーアならばいつの間にかそこにいる可能性もあるし、いつの間にかそこにいる騎乗をもう一回見てみたい気もする。
マルセリーナは去年のMCで上がり最速で6着した。人気を考えると実は一番おいしそうなのがマルセリーナではないか? とも思っている。ただし位置取りは出負けして17-17-17、6着。こういう競馬だと今の競馬では2着3着はあっても1着は無理。
問題は成長だけど、マルセリーナの成長指数はスタートで見るべきか。過去13レース中6回出遅れ、もしくは出負けしている。しかもほぼ交互に好スタートと出負けを繰り返している(休み明けでリセット)。っていうか連続出負けはあっても、連続好スタートは一度もない。出負けしても桜花賞は1着したし、ヴィクトリアマイルは3着してるけど、これらは牝馬限定戦だ。
休み明けの前走府中牝馬は好スタートをきれた。過去歴からは今回は出負けする順番でもある。そこは怖い。成長してれば好スタートできるのだろうけど、その見極めがいまはできない。
デムーロで安心じゃないか!? いやいや自分はむしろデムーロで冒険と思っている。
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デムーロと横山典は冒険指数の高い騎手だ。
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もちろんここでいう冒険はダボー・ミーニング。クエストなボーケンとリスキーなボーケン、ゆえにダボー・ミーニング。
だが、それがいい。
まぁだから面白いんだけど。
デムーロ騎手は1着比率が高くて、3着比率の少ない名手系の着順比率の騎手だ(このことは以前書いた)。
今年の成績も現在[20-14-9-53]。
来るなら1着2着、買うなら1着2着付けが高いレベルで魅力的であることがわかる。高いレベルで1着2着で買える騎手はある意味でメリハリ抜群でクエストな冒険ができていい。
だけど、ことMC(マイルチャンピオンのことですよ)においてはちょっと怖い。
なぜならここ2年連続で出負けしてるからだ。
しかもそれなりの人気馬で。
10年 トゥザグローリー 4人気 出負けして16-17 7着
11年 グランプリボス 6人気 出負けして18-17 13着
上記の2頭は特に出遅れ・出負け癖のある馬ではないのにこの出負けっぷり。むしろ何かを狙って、望んで出負けさせたのでは? と勘ぐりたいくらいだ。
今年騎乗する馬はスペシャルに出遅れ・出負け癖のある馬。しかも今回は出負けの順番でもある。
怖い! 怖い! 怖い! リスキーだ。
マルセリーナにデムーロは一度騎乗していて、そのときは好スタートをきって、2着した。
阪神牝馬S 17頭立て 8-7-7 2着(2人気)
マルセリーナを中団に位置取らせ、2着させた。この操縦は魅力的。この操縦をMCでもやれたなら、チャンスはあるはず。
来るなら勝ち負けの騎手が、桜花賞実績のある馬に騎乗する。
ひじょうに魅力的である上に、人気もない(予想12人気)。
しかし、2年連続で出負けしてる騎手が2回に1回出負けする馬に騎乗する。
クエストな冒険かつ、リスキーな冒険に満ちあふれている! やったー!!
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デムーロ騎手と同じように横山典騎手も冒険指数の高い騎手だと思っている。
重賞の人気馬ではそれほど冒険騎乗はしないイメージもあるけど、自分はそうは思ってない。それはおそらくGIでの1、2番人気のとき。
GIIGIIIでは思い切って逃げる、思い切って追い込む。その思い切りが鮮やかに決まることもあれば、スイッチ・オン失敗でなんだかよくわかんない着順のときもある。
しかしその思い切った作戦にはきっと意味があるとも思っている。
冒険騎乗して失敗! に思えても、その次のレースではどうか?
次、その次に生きる騎乗。そのための冒険を施せるのが、冒険をできてしまうのが横山典だろう。
たとえばカンパニー。
それまで差してそこそこの成績しかあげられなかった馬を、7歳の春、中山記念で横山典は初騎乗して、先行させて1着させた。そこから先行させたり、差したりを繰り返し、1年間騎乗し、8歳にして天皇賞秋、MCを連覇させた。
たとえばルルーシュ。
具体的な施しの説明は自分にはつけられないが、オールカマー4着→アルゼンチン1着のルルーシュにも、次に弾けるための小さな冒険を施していたともいえる。
今回騎乗するレオアクティブの前走は何だったんだろう? そればかり考えていた。もしかして冒険を施したか? だとすると……!?
レオアクティブは京成杯を内から差して1着した。
前走のスワンSは京成杯での1着が脚光を浴びたかのか、今年の3歳のレベルが背中を押したのか、3歳にして1番人気になった。
しかし横山典の騎乗は15-15-16 9着。
スワンSが追い込んでは間に合わないレースであることなど横山典騎手ならばわかっていたはず。
しかも1番人気。1番人気でここまでの追い込みはふつうは考えられない。
だからこそ勘ぐりたい。大いに勘ぐりたい。
上がりは1着したグランプリボスと同じ33.2。最後方にいたのだから速く上がれても当然かもしれない。
けれどその一方で、それゆえに何らかの冒険を施したのではないか? とも勘ぐりたくなる。クンクン。
思えば去年2着させたフィフスペトルも京成杯で横山典が1着させた馬だった。
1600 京成杯 6-5-7-7 1着
1200 スプリンターズ 7-6-7 6着
1600 MC 2-3-2 2着
今回のレオアクティブは
1600 京成杯 12-12-12-10 1着
1400 スワン 15-15-16 9着
1600 MC
京成杯を1着し、レースを1つ挟んで、MC。去年は1200、今年は1400。
フィフスペトルのスプリンターズでの冒険の意味は自分にはよくわからないし、
レオアクティブのスワンSでの冒険の真の意味も自分にはよくわからない。
わからないけれど、スワンSの1番人気での施し(追い込み)には何らかの理由がありそうなことは想像がつく。誰にだってつく。可能性を見いだせない1番人気の馬に横山典がそんな施しをするはずがない。うん、匂う臭う。
それはここ(MC)ではなく、来年のどこかかもしれない。
しかし、スワンでの冒険のかいあってか、今回は予想5番人気。外国人騎手の馬のデキ次第ではもっと人気は下がるかもしれない。
ならば今回、馬券的冒険をする価値はあるのではないか?
単はともかく馬券圏内での冒険を試みてもいいのではないか?
もしかしたらMCでも追い込みという名の冒険を施してくる可能性もある。だとしたら来年のここで倍にして返してもらえばいい。
5番人気ならば、冒険に同行する価値も十分だ。
1つは、出遅れ・出負けのリスクを背負った冒険。ひぃ~怖い~~! だけど馬券になるときは鮮やかな冒険。予想12番人気! ミルコクエスト! やったー!!
1つは、前走施した冒険の活性化。予想5番人気! 十分だ! だけど活性化が足りずに再び冒険。横典アドベンチャー! ひぃ~怖い~~!
そんな馬券的冒険。冒険的馬券。
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今年のマイルチャンピオンシップは、
バトンを持っている可能性が高い1番人気のグランプリボスに最大の敬意を払いつつ、
バトンを隠し持ってる可能性もあるリアルインパクト、ダノンヨーヨーにも敬意を払いつつ、
デムーロのディープインパクト牝馬と横山典の3歳牡馬の冒険に乗ってみたい気落ちでいっぱいだ。
ディープインパクト産は来るときは大挙襲来するのではないか? ならばそこにマルセリーナがいても驚けない。
このレースのバトントワラーでもあったサプレザの父系はミスプロ×サドラーズウェルズだった。ならば父ミスプロ×母父サドラーズウェルズのレオアクティブがいても驚けない。
今年はCコースで内有利?
今年はCコースで先行有利?
てな心配はございますが、それは、
競馬業界人の方々やその他競馬有識者の方々に「そのことを」いっぱい語っていただいて、
騎手や調教師にも伝わるくらいにいっぱい語っていただいて、
外国人騎手もいっぱいいるので、できれば英語でもいっぱい語っていただいて、
前方をとにかく意識していただくことで、解決できればと思っています。
前向きな外国人がより前向きになってくれれば、だいたい大丈夫では、ないか!?
去年のこともあるし、基本的にはみな前向きでいて欲しいところではあります。
もちろん「枠」「天気」「馬場」なんぞを見て、前のレースのムードを見て、冒険できれば言うことありません。
バトン注目馬
大敬意馬・グランプリボス
ふつう敬意馬・リアルインパクト>ダノンヨーヨー
冒険馬 レオアクティブ・マルセリーナ

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