同じ1600mのGI安田記念が落ち着いた平均ペースや、スローに近いペースで流れることはめったにない。今年の安田記念、ハナに立って飛ばしたシルポートの刻んだラップにより、「44秒9-46秒4」=1分31秒3の日本レコード(当時)が記録された。
一方、マイルCSは、京都の3コーナーに上がり下りの坂(ちょうど中間地点)があるため、安田記念の東京と比べると、前後半のバランスが保たれることが多い。だから、かつては日本で一番順当に1番人気馬が連対するGIなどといわれた。
ただ、最近は安田記念に近いHペースが出現することもある。Hペースで展開すると、直線が平坦の京都は追い込みが決まる。マイル戦で追い込み一手型が台頭するのはレースバランスが崩れているケースが多いから、だいたい波乱になる。最初にマイルCSが大波乱になったトロットサンダー=メイショウテゾロの1995年からしてそうだった。レース上がりが35秒台になるような年は、ほとんどが波乱の決着になっている。
飛ばすシルポートがいる。ただ、シルポートがここ2戦(毎日王冠、天皇賞・秋ともに1600m通過1分32秒台)と同じようなペースで飛ばすかとなると、今回は川田騎手に手替わりしたこともあり、読みにくい。
どんなペースでも行けるシルポート、昨年は「46秒7-47秒2」というごく平凡なペースで行き、8着に粘ったものの、全然シルポートらしくなかった。
また、シルポートが飛ばしたとしても、最近は誰も追いかけたりつついたりしないようになっているから、シルポートはHペースでも、他馬はスローにも近いペースで追走だったりする。記録に残るレースは「ハイペース」でも、実はそうではないケースが増えてきた。
やっかいなことに、2番手追走になり、事実上のペースの主導権を握るかもしれないのは、同じ西園厩舎のコスモセンサーの公算が大きい。コスモセンサーがシルポートに接近して先行するとは思えない。シルポートがどんどん飛ばしたと仮定しても、実際の主導権を握るコスモセンサーのペースは読めない。誰も追いかけないシルポートは怖い。また、ラクなペースになる公算大のコスモセンサーも単騎逃げだったりする公算大だから侮れない。この2頭は連の相手に加えたい。どういう流れでも、波乱をもたらすケースがありえる。
少なくともスローはないことを前提に、もっとも厳しいマイル戦だった「安田記念」の上位組を評価したい。とくにストロングリターン、グランプリボスは流れに左右されない。
中心馬とするストロングリターンは、安田記念を58キロで1分31秒3。5歳時の安田記念も1分32秒0でクビ差2着。2年連続して安田記念連対は、A級に近いマイラーでなければ不可能。マイルのチャンピオンはめったに崩れないとされるが、叩き良化型のこの馬、3か月以上の休み明けを別にすると、1600m[4-3-0-0]。条件戦当時から崩れていない。今回は安田記念と調整パターンも同じ。総合力が問われるほどに有利だろう。
安田記念、スワンSの内容からグランプリボスが相手本線。安田記念5着のガルボと、3着コスモセンサーが次に続く強敵。人気が割れそうなので、ファイナルフォーム、マルセリーナ、そしてシルポート、サダムパテックまで手を広げたい。