先週の2歳戦ではコディーノの強さに度肝を抜かれたという方が多いだろうが、個人的には同じ勝負服のネオウィズダムにびっくりした。1400mに出てきて、しかも勝ってしまったことについてである。
同馬は今年のノーザンファームを代表する1頭とも言われ、ドラフトでも人気を博した。当然、指名者が意識していたのはクラシックだろう。実際デビューから3戦連続で1800m戦を使われていたわけだが、ここへきての2F短縮、しかも一度距離短縮すると再延長時に折り合いの問題が出てきそうなネオユニヴァース産駒でありながらの選択に、驚いた次第である。
結果として勝っているわけだからこの選択は正しかったのだろうが、500万条件で1400mを使い勝った牡馬が、翌年のクラシックで勝ち負けしたケースというのはすぐには思い出せない。そこで、まず「2、3歳限定の500万条件で1400mを勝った馬」のPOG期間内G1成績を調べてみた。対象はぐんと広く、JRA-VANデータが存在する範囲全体である(以下同様)。
結果は、G1馬は10頭出ているが8頭(9勝)は牝馬。牡馬は06年NHKマイルC優勝のロジックと、89年阪神3歳S優勝のコガネタイフウ。牡馬の期間内G1・2着は6例、3着は4例だ。4半世紀以上を対象にし、中距離の2歳戦が少なかった時期を含めてこれだけの該当例というのはやはり少ない。
では今度は逆方向に調べてみよう。皐月賞・ダービーで3着以内した馬が、1400m以下(ダートを含む)を使われていたケースはどれだけあるかだ。
オルフェーヴルでも1400mを使われていたわけだから、重賞まで含め、さらに負けていたケースを含めると該当例はけっこうある。実頭数ベースで51頭だ。年2頭のペースと考えると少なくはない。
ただ、出走していたケースを重賞以外に限定し、かつ1400m以下で勝ったという馬に限定すると、新しい例が少なくなる。
オープン特別で1400m以下を勝ち、その後皐月賞ダービーで3着以内した馬は4頭、最新の例は04年皐月賞3着のメイショウボーラー。
500万条件勝ちだと該当4頭、最新は01年ダービー3着のダンシングカラー。
未勝利勝ちだと該当は12頭、最新は09年ダービー3着のアントニオバローズ。これは比較的新しいが、その前は03年皐月賞3着のエイシンチャンプ。
新馬勝ちだと該当19頭と多いが、最新の例はこれまたメイショウボーラー。こうして見ると、短いところを使われた馬はそこで負けているほうがむしろ良いようにも思える。
1400m以下を勝った馬の出世例としてはネオユニヴァース(新馬が芝1400m)がいるが、同馬はそこから距離を伸ばしていった。距離短縮が絡む形で仮に成功すると、近年では相当に珍しいケースになってくる。
もちろん、例えば朝日杯やNHKマイルCを勝つことも立派な出世であり、今回の選択がそこへ向けプラスに働くことはありうる。一方で、ネオウィズダムもまだクラシックを諦めたわけではないだろう。もしクラシックを目指し、しかも成功したとなると、一見このトリッキーに見える番組選択を成功させ、しかも気性のリスクを乗り越えたということで、厩舎の手腕は高く評価されることになるだろう。