各紙、JC関連の記事で盛り上がっていた先週23日金曜日。ふと下のほうに小さく掲載されていた阿部雅一郎氏死去という訃報に目が留まった。言わずと知れた“ヒシ”のオーナー。特に面識があったわけではないが、坂路野郎が競馬ファンになって2年目に初めてできた好きな馬がクリスタルカップで驚異的な追い込みを見せたヒシアマゾン。白地に青線2本の勝負服とともに、その後もヒシの馬にはずっと愛着があった。

「ひと言でいえばおおらかな方だった。下手な乗り方をしても“気にしないでいい”って言ってくれて。僕が開業してからも馬を預けてくれたし、言葉には表せないぐらいお世話になった」と語るのは現役時代にヒシアケボノ、ヒシミラクルなどヒシの馬で数々の重賞を勝った角田調教師だ。

「ミラクルが菊花賞を勝った時は京都競馬場にいらしてなくて、その夜、電話をしたら『もうミラクルは私の馬じゃない。君の馬と思ってもらっていい。君が納得のいく競馬をしてくれれば私も納得するから』って言ってくれた。あの馬は前哨戦が追い切りみたいな馬だったし、そういう言葉をかけてもらったことが騎手としてどれだけ心強かったことか」

　開業後、阿部オーナーが預けてくれた馬を勝たせられなかったことに悔いが残るという角田師。坂路野郎としてもヒシの冠がついた馬がもう見られなくなると思うと寂しい気持ちになるが…。

　勝負服に関しては「息子さん(ヒシカツの冠名でおなじみの阿部雅英氏)が引き継ぐみたい」(同師)とのこと。ヒシの勝負服が誰よりも似合った角田調教師。いつか、息子さんに引き継がれた管理馬とともに、ウイナーズサークルに立つ日が来ることを待ちたい。
(栗東の坂路野郎・高岡功)

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