阪神JFを制し、2歳女王に輝いたローブディサージュ。
そう言えばと思い立ち、春先の取材ノートを引っ張り直してみたが、まったく「プチノワールの10」について触れた箇所がない。自分でも呆然としながら、「赤本」を開き直すと、産地馬体検査の2日目に登場していて、カラーパドックには写真どころか、後藤正俊さんはレポートでもそのたたずまいを評価し、オススメ10頭にも入れている。さすが後藤さん! という前に、自分の取材力の無さを恥じるべきなのだが…。
しかもこのローブディサージュの勝利で、なんとノーザンファーム生産馬は阪神JFを6連覇。もの凄い記録であると言える。ノーザンファームには早来牧場、空港牧場と2つの育成施設があるが、その両方の牧場の厩舎が互いに切磋琢磨する一方で、ミーティングを通してさまざまな情報を共有しているということも、この成績に繋がっている感がある。
ちなみにローブディサージュは空港牧場の育成馬。来年は早来牧場が巻き返すのか、はたまた空港牧場がタイトルを守るのか。いずれにせよ、来年の阪神JFの優勝馬も、ノーザンファームの生産馬である確率は高いと見る。
1番人気に支持されながら、4着に敗れたコレクターアイテムであるが、落鉄の影響だけでなく、後方一気の戦略が、今日のレースには合わなかったということだろう。戦歴やこれまでのレース内容からしても、今の2歳牝馬世代では一枚も二枚も抜けた馬。ハーツクライ産駒ということからしても、距離延長は持ってこいだろうし、来年のさらなる成長が楽しみである。
取材時の感触や、馬の出来の良さからも注目していたのがプリンセスジャックとアユサン。プリンセスジャックは6着、そしてアユサンは7着に敗れたが、上位入着馬とは完成度の差が出たという印象も受けるし、血統背景からしても、その能力を十二分に発揮するのはクラシックの時期となりそう。引き続き応援していきたい。
さて、今週は朝日杯FS。注目を集めるのは、札幌2歳S、そして東京スポーツ杯2歳Sと連勝したコディーノとなるのだろう。以前にも書いたことかもしれないが(笑)、有馬記念の有力馬でもあるルーラーシップにも跨っていたスタッフが、「乗り味はルーラーシップを彷彿とさせる」と言っていたほどの能力を持った馬。
1800mを3度使われてからの、流れが速いマイル戦は馬に戸惑いもあるのでは? とも考えがちだが、そもそも父キングカメハメハがマイルからクラシックディスタンスまでの条件でGIを勝利した馬。また、産駒成績を見てもマイル適性は申し分なく、あっさりとタイトルを掴む姿も想像できそうだ。
そこに待て待て〜と言わんばかりに食らいついてきそうなのが、同じキングカメハメハ産駒のラブリーデイ。実は父だけでなく、育成厩舎もコディーノと一緒なのだ。しかも前向きな気性、完成度の高さなど、取材時にも2歳のマイル戦が向きのワードが聞こえていた。コディーノに一泡吹かせるとするなら、他の出走馬の誰よりも? ライバルのことを知っているラブリーデイなのかもしれない。
この朝日杯FSには、いちょうSを勝利してオープン入りを果たしたフラムドグロワールも出走予定。こちらは父ダイワメジャー、母シルクプリマドンナという競馬ファンにグッと来る血統構成なのだが、ご存じの通りに(笑)、この馬もノーザンファームの生産馬。実は阪神JFだけでなく、この朝日杯FSもノーザンファーム生産馬が3連覇を果たしているレース。
今、名前をあげた馬の中から優勝馬が誕生し、記録をさらに伸ばしていくのかにも注目したい。
▼筆者:村本浩平
1972年北海道生まれ。大学在籍時代に「Number ノンフィクション新人賞」を受賞。現在はフリーライターとして活躍。特に馬産地ネタでは欠かせない存在。