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羽田盃への道

  • 2003年05月12日(月) 16時22分
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 5月5日、「群馬記念」。少し迷ったが、やはり現地で観戦することにした。翌日の予想などが一段落して上野へ向かい、13・54分発「あさま」に乗車。Gウィーク最終日、さすがに下りは快適に空いていて、ものの40分ばかりで高崎に到着する。急ぎ足で10分歩くと競馬場。やれやれと汗をぬぐい、ひと呼吸ついたころ、群馬記念出走の各馬がパドックに姿を現わす。ジャストタイミング。ほぼ毎年のことながら、高崎は“隣町”だと改めて思ったりする。わが編集部からの所要時間だけをいうなら、テリトリー(同時開催)の浦和競馬場と変わらない。ただし馬券で負けてしまうと、この交通費はお安くない。冒頭“迷った”と書いたのは、情けないがそれが理由だ。

 統一G群馬記念が5月5日に定着してから、高崎競馬場はその日“年に一度”、お祭りのノリになった。入場門をくぐると、焼きイカ、焼きトウモロコシ、バナナチョコレート…にぎやかに屋台が並び、さながら縁日の光景が広がっている。当日、通常の5倍近い入場5500名。いつもながら痛感するのは「武豊の集客力」で、これは高崎に限らず全国共通、彼がいるといないとでは現実に競馬場の温度が違う。騎乗合図、ひらりとノボトゥルーに跨り、それだけでファンがどよめく。ファン心理はイチロー、松井を思って大差はない。とにかく“世界のユタカ”が至近距離で見られるのだ。

群馬記念(サラ3歳上、別定、統一G3、1500m良)

 △(1)マイネルブライアン  (57・藤田)  1分35秒3
 ▲(2)プリエミネンス    (55・柴田善) 1.1/2
 ◎(3)エスプリシーズ    (56・森下)  2
 ○(4)ノボトゥルー     (59・武豊)  2.1/2
 △(5)インタータイヨウ   (57・秋山)  1.1/2

 声援したエスプリシーズは、結果「好位のまま」3着だった。前半もうひとつ行き脚がつかず、3~4コーナー力任せに追い上げたものの、いったん2番手に上がったところでガソリンが切れた。それでもノボトゥルー、インタータイヨウには先着。初の統一G、初コースを考えれば大きな収穫といえるだろう。「右回りは手前を変えない。もう少しスムーズなら2着はあった」と森下騎手。いずれにせよこれで次走は6月4日船橋「かしわ記念」に目標が固まった。左回りがいいこと、距離はマイル~1800mあたりが最適なこと。挑戦の意気があってこそ、その馬の視界が広がる。

 マイネルブライアンは対照的に道中馬なりの2番手。素晴らしく行きっぷりがよかった。直線早々と独走に持ち込み、着差以上の強さ。こちらは3歳時旭川「グランシャリオC」を制しており、右回り1500m~1600mベストという結論だろう。春~夏、きまって調子を上げてくるプリエミネンスが追い込んで2着。ホクトベガ級のスケールはともかく、何とも芯の強い牝馬である。ノボトゥルーは59kgが応えたか勝負どころで反応が鈍かった。「ダートマイル部門」は依然勝ったり負けたり、勢力図が一戦ごとに動いている。

       ☆       ☆       ☆

 7日、浦和「テレビ埼玉杯」はキングリファールの圧勝だった。道中ぴたり折り合いのついた逃げで、直線を向いてもうひと伸び。この馬がこれだけ余裕のあるレースをみせたのは正直なところ記憶にない。ここ数戦つけていたブリンカーを外しパドックから別馬のように落ち着いていたこと。同型不在で終始気分よく走れたこと。さらにインの砂が極端に浅い「逃げ馬天国」の馬場だったことも大きいだろう。ともあれ後続に5馬身差で最後は独走。記者ノーマークは不明としか言いようがないが、このタイプの取捨はまったくもって難しい。

テレビ埼玉杯(サラ3歳以上、別定、南関東G3、1900m良)

 (1)キングリファール   (58・佐藤隆) 1分59秒5
○(2)ゴールデンイースト  (58・森下)  5
◎(3)ナイキダンサー    (56・石崎隆) 3
△(4)ミラーズライト    (56・柏木)  首
△(5)スプリングシオン   (58・内田博) 1
………………………………………………………………………
▲(7)レインボーリバティ  (54・石井)
△(8)スピーディドゥ    (58・納谷)

単1260円 馬複2210円
馬単5920円 3連複1520円 3連単13240円

 ゴールデンイースト、ナイキダンサーは、ともに2、3番手、リファールを直後でマークしながら直線意外なほど突き放された。今日の内容に関する限り、馬場状態を加味してもやはり底力不足というしかない。期待したナイキダンサー。17キロ減と絞ってきたが、馬の雰囲気とすると前走船橋記念の方がむしろよかった。たび重なる休養、追われて内にササる癖。どうにも軌道に乗り切れない。スプリングシオンは久々にすっきりした馬体で気配絶好とみえたが、いざレースは中団のまま見せ場がなかった。逃げ馬有利――それだけを敗因にできるか微妙な結果。次走を2600m大井記念に定めるミラーズライトは健闘だが、絶好の1番枠を考えるとそう上積みもイメージしづらい。レインボーリバティはまくりのきかない馬場状態で追走に終始した。メンバーと舞台しだいで、もう一度狙ってみたいところはある。

      ☆       ☆       ☆

羽田盃(大井5月14日、サラ3歳、別定、南関東G1、1800m)

◎ナイキアディライト (56・石崎隆)
○シャコーオープン  (56・早田)
▲ナイキゲルマン   (56・的場文)
△ベルモントソレイユ (56・内田博)
△ウィンブロー    (56・今野)
△ウツミジョーダン  (56・佐藤隆)
△ティーケートロット (56・酒井)

 4月下旬、パレガルニエの骨折(全治3~4か月)が判明し、秋までリタイヤ。昨暮れ2歳優駿3着後、川島正行厩舎に移籍したブラックミラージュも脚元がすっきりせず、結局ここに間に合わなかった。大きな両輪が抜け落ちてしまった感じ。競走馬の栄光とは、つくづく素質、能力だけではつかめないと痛感する。

 それでも上位陣の水準は、例年のクラシックと較べそう見劣るものでもない。◎ナイキアディライトは、過去25年中、17頭の羽田盃馬を輩出する「京浜盃」を4馬身差で圧勝した。1690m、1分46秒6は軽い馬場にせよきわめて優秀。ディアブロ×スリルショー、快速型ながらいわゆる「逃げ気性」ではなく、その京浜盃も道中後続を過不足なく引きつけ、自分の競馬ができていた。本質的な個性がどこにあるかは今後の問題として、3歳春、同世代相手なら絶対スピードで乗り切るとみたい。

 シャコーオープンは京浜盃3着後、準重賞・雲取賞を勝ってきた。3~4コーナー早めに動き、息の長い末脚で相手を圧倒。不器用さが課題だっただけに、この勝利は収穫が大きい。ジェイドロバリー産駒、母系はハイセイコー。鞍上・早田秀治はここ一番の勝負度胸に定評がある。ナイキゲルマンは、デビュー時から期待の大きい外国産馬で、前2走好タイム連勝がそのまま本格化ととれるだろう。ベルモントソレイユはまだ心身とも子供っぽいが、京浜盃2着のような差す競馬ができれば素質的に遜色ない。しらさぎ賞→クラウンカップ組のウィンブロー、ウツミジョーダンは、ともにいい脚一瞬というタイプ。大井コースをどう乗るか、少々微妙な面もある。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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