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週刊サラブレッドレーシングポスト

  • 2003年05月13日(火) 16時56分
 今季の英国における平地競馬も開幕から2カ月近くが経過したが、ここまでの結果を振り返ると、顕著な特長の一つが『ゴドルフィン』と『バリードイル』の不振であろう。近年、欧州競馬を席巻してしてきたと言っても過言ではない彼等の勝負服が、各地のメジャーなレースで驚くほど「影が薄い」のである。

 まず、5月1週にニューマーケットで行われたギニー開催。土曜日の2000ギニーは、ゴドルフィンもバリードイルも2頭出しだった。エイダン・オブライエン率いるバリードイルが、1番人気のホールドザットタイガーと4番人気のトマホークを送り出し、サイード・ビン・スルール率いるゴドルフィンの陣容が、2番人気のラティーンセイルズと7番人気のソングラークだったから、いずれもチャンスのある有力馬だった。ところが、4頭のうち最先着は8着だったトマホークで、人気馬はホールドザットタイガーが17着、ラティーンセイルズが20着(最下位)という大惨敗に終わったのだ。

 翌・日曜日1000ギニーも、両陣営はやはりともに2頭出しだった。4頭の中では、単勝8倍の4番人気に推されたゴドルフィンのメッツォソプラノが最有力馬で、前日の2000ギニーのような人気馬揃いではなかったが、最先着はまたしても、バリードイルが送り込んだイエスタディの8着。両帝国にとっては、実に寂しい結果となった。

 ギニー開催では、初日に行われた古馬のG2ジョッキークラブSでもゴドルフィンのハイエストが人気を裏切り3着に敗退。結局ギニー開催のゴドルフィンは、オークスへのプレップレースである準重賞のプリティポリーSをハイドバイが制して、何とか溜飲を下げたのみであった。

 オークス/ダービーへ向けたプレップレースが本格化した5月第2週も、この傾向は続いた。11日(日曜日)にレパーズタウンで行われた、アイルランドのG3ダービー・トライアルS。過去3年、後のダービー馬がプレップレースとしたここに、昨年のG1レイシングポストトロフィー優勝馬で、ダービーのアンティポストをリードし続けたエイダン・オブライエン厩舎のブライアンボルーが登場。大きな期待を集めたのだが、これも3着に敗退。同じくエイダン・オブライエンの管理馬で、2歳時フランスのG1クリテリウムドサンクルーを制したアルバートジャコメッティは、同じ11日にフランスのロンシャンで行われたG1リュパン賞に登場したのだが、こちらも結果は3着。

 同じG1リュパン賞には、昨年2戦2勝でゴドルフィンのダービー候補筆頭と目されていたニューサウスウェールズも出走したのだが、こちらは6着という大敗を喫したのである。更に11日(日曜日)のロンシャンでは、2000ギニーと1000ギニーに相当するG1プールデッセデプーランとG1プールデッセデプーリッシュも行われ、2つの陣営から合計5頭の出走があったのだが、勝ったのはいずれも地元の名伯楽アンドレ・ファーブルが管理する馬たちだった。

 圧倒的な資金力を背景とした巨大勢力ばかりに牛耳られる情勢を苦々しく思っていたアンチ派たちは今、我が世の春が来たとばかりに拍手喝采を送っている。

 欧州はこれからいよいよオークス、ダービーの季節に突入するが、果たして、2大帝国の威信をかけた逆襲があるのかどうか、おおいに注目されるところである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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