◆ニューイヤーC展望(1月16日 サラ3歳 定量 南関東SIII 1600m)
ニューイヤーCは新春恒例の3歳SIII。小回り浦和千六、近年クラシック(牡馬)に結びつかないイメージだが、歴史的にみるとそうでもない。その優勝馬には、昭和59年キングハイセイコー(羽田盃・東京ダービー)、平成7年ヒカリルーファス(羽田盃)の名前が並び、何より平成元年、あのロジータ(三冠馬)が勝っている。思えば彼女は、暮れの東京2歳優駿牝馬を3着と落とし、ここが重賞初制覇だった。千六=1分41秒1、好位キープから直線楽々と抜け出し、最後は鞍上(野崎武司騎手)が手綱をセーブする余裕があった。
「(ロジータは)競走するのが好きな子でね。稽古なんかも単走では動かないけど、併せ馬になると闘志をみせる。ニューイヤーCは出世レース。ここを勝って自分も馬も自信が出た。あとはみなさんの見ていた通り…」
いささか古い話で正確ではないけれど、引退間際、取材した野崎Jからはそんなコメントをもらったように記憶する。ともあれ浦和千六は、年明け3歳馬にとって、イメージ以上に総合力(スピード、持久力、器用さ)を要求される舞台とも思う。近年の例でいうなら、19年アンパサンドはこのレース3着ながら、以後東京ダービーをフリオーソ相手に制覇し
た。見逃せないレースではもちろんある。
(1)…波乱含み。1人気[2-2-3-3]はぎりぎりの合格点で、2人気[2-0-1-7]、3人気[2-1-0-7]とも合わせ信頼度が低い。昨年は1人気ゴールドメダルは勝ったものの、2人気ドラゴンシップ10着。
(2)…4場所脈あり。船橋=5勝、2着3回とリードするが、川崎=3勝、2着3回もほとんど差がない。出走頭数が少ない大井も2勝、2着1回ならアベレージは高い。地元浦和も一昨年キスミープリンスなど2着3。
(3)…転入馬注目。過去10年、連対20頭中7頭が他地区からの転入馬で、近年その傾向が強まっている。とりわけ昨年はゴールドメダル→グッドタイガー→リカチャンス、道営出身馬が1~3着を独占した。
(4)…自力型。逃げ=3、先行=10、差し=5、追込み=2。道中好位キープ、器用に動けるタイプに強みがあり、言い換えればスケールより完成度が要求される。牝馬も[2-2-2-17]と悪くない。
※データ推奨馬
◎ミータロー…道営デビュー時2連勝。以後一貫“全国区”目標のステップを踏み、川崎「鎌倉記念」3着、岩手「南部駒賞」2着とソコソコ結果を出している。今回大井転入(米田厩舎)再スタートだが、乗り慣れた服部茂騎手(南関東短期免許)鞍上なら心強い。マイル向きプリサイスエンド産駒。流れに応じ大人びたレースができるタイプ。
☆ ☆
◎アメイジア 56御神本
○ドリームゴーゴー 56戸崎
▲ソルテ 56金子
△ミータロー 56服部茂
△エスケイロード 56張田
△チョコ 56橋本
△ハードクラップ 56繁田
アイディンゴッテス 54石崎駿
ブラックワード 56真島
アメイジアに期待した。前走(全日本2歳優駿)落馬を除くと[2-1-2-0]。現南関東?1インサイドザパーク(鎌倉記念・平和賞)の好敵手といえる存在で、現実に昨秋船橋千六「シーサイドアイドル特別」ではライバルを、4コーナー先頭の正攻法で完封した。
イーグルカフェ×ジェイドロバリー、530キロ台の大型馬。いかにもそれらしい骨太の先行力が持ち味で、最後競り合いになってとにかくしぶとい。前走痛恨の落馬だが、馬自身ひるむことなく追い上げ現実に“カラ馬1着入線”。その価値をどうみるかはさておき、高い能力と闘争心を示す一戦ではあっただろう。中間意欲的な追い切りをこなし再び万全。手の合う御神本J(コンビ2勝)も、今回大きなプラスになる。
相手本線にみたドリームゴーゴーは昨暮れから浦和照準の2連勝。とりわけ後続を5馬身ちぎった前走は圧巻だった。当時千六1分43秒5自体古馬B級レベルで、プリサイスエンド×カコイーシーズの背景からも今春大飛躍の期待が浮かぶ。エンジンかかって捲るイメージ。馬格(前走496キロ)、走法にも威圧感があふれている。
▲ソルテは今回初コース(左回り)も含め、ひとつ新境地がほしい戦いか。それでも前々走「ハイセイコー記念」は完璧な差し切りで余裕残し。何より実戦向きの気性が頼もしい。追い込み得意のベテラン・金子J。父タイムパラドックスはダート向き種牡馬としてすでに高評価が確定した。
データ欄で推したミータローは仕上がりしだい。末脚確か、キャリアも豊富だが、前走オグリタイムに完敗の比較からは、ここが改めて試金石か。それなら一昨年2着エスケイガナールを兄に持つエスケイロード、地元生え抜き、2連勝の勢いがあるチョコ。ハードクラップも父クロフネの成長株だが、現状はもまれる競馬に不安を残す。
◆船橋記念回顧(1月9日 船橋 サラ4歳以上 別定 南関東SIII 1000m良)
◎(1)ナイキマドリード 59秒0
△(2)ディープハント 3/4
△(3)スターボード 1.1/2
(4)エンドスター 1.1/2
▲(5)キョウエイラシアス アタマ
………………
○(6)コアレスピューマ
△(7)バトルファイター
△(9)ギオンゴールド
単140円 馬複930円 馬単1200円 3連複2010円 3連単6240円
ナイキマドリードが力通り完勝した。懸念されたスタートも無難に決まり、道中外々を快調な行きっぷり。先行争いを捌いたスターボードに直線入口、早々と並びかけ、GOサインと同時に弾けるように抜け出した。
最後ディープハントに3/4馬身差と迫られたのは、57キロ対53キロを含め相手の大健闘とみるべきだろう。今の馬場で千=59秒0が出れば、時計的にも十分な価値がある(前日B1クロススピード=1分00秒6)。
「リズムよく走らせれば結果はついてくると思った。ホッとしてます。今日は外枠(12頭・12番枠)のぶん乗りやすかった」(川島正太郎騎手)
同Jは昨年に続きマドリードで連覇達成。検討記事でも書いたことだが、正太郎Jには短距離戦得意のイメージが浮かぶ。騎手としては長身(160cm)ながら、いざ追い出して上下動が少ないきれいなフォーム。いわゆる“身体能力が高い”ジョッキーと納得する。いずれにせよ同騎手は、今年が文字通り勝負の年。戸崎圭太・JRA移籍。期待馬が並ぶ名門厩舎を背負って立つ。今日の一番はそうした背景からも意味が大きい。
さてナイキマドリードはこの日重賞6勝目。千、千四、千五でそれぞれ2勝ずつをあげたが、最も胸が張れるのは、やはり千四、さきたま杯(GII)勝ち。スプリンターとマイラー、そのちょうど中間という特異なタイプで、記者個人的には昨年川崎「JBCスプリント=千四」がGIチャンスと思っていた。不本意な結果に終わったのは(7着)、体調が短いサイクルで揺れること、根本的にスタートがうまくないこと。それでも川島正行調教師は、レース後インタビューで新戦略も示唆している。
「(マドリードは)短距離馬とも少し違うし、道中息が入る競馬がむしろいい。今後はマイル~千八あたりまで考えている」
明けて7歳ながら、馬優先主義、押せ押せで使っていないぶんまだ伸びしろもあるだろう。思えば今年は11月4日、金沢「JBCスプリント」が千四で開催される。そこまで好調キープ、同レース出走なら、改めての期待をかけたい。
2着ディープハントはまさしく大駆け。船橋千3勝、適条件は確かだが、最後マドリードを捕えるかという豪脚には驚かされた。父ブライアンズタイム、本質晩成型であること。追って達者な町田J(初コンビ)が合っていること。この結果からはスプリンターとして、一段グレードアップの評価ができる。
3着スターボードは3か月ぶりが終い響いて終い失速。ともあれキョウエイラシアス、コアレスピューマ、厳しい先行争いを競り勝った事実は重く、SIII級なら常に好勝負可能だろう。
4着エンドスター、5着キョウエイラシアスは、ともに上昇馬(格上挑戦)で、しかし行き切れない厳しい展開を思うと、中身の濃いレースにみえた。記者個人的には、キョウエイラシアスを、生粋のスプリンター・今後の成長株として推奨する。期待したコアレスピューマは、内スターボード、外バトルファイターと競り合い、結果中途半端になったものか。大井ベターの傾向もあり、次走巻き返しに注目したい。