◆TCK女王盃(1月23日 大井 サラ4歳以上牝馬 別定 JpnIII 1800m)
「TCK女王盃」は平成10年、当初から交流GIIIとして創設され、過去15年の歴史を重ねる。その第1回をトミケンクイン(笠松)が制し、以後12年ヤマノリアル(船橋)、13年ベラミロード(宇都宮)、15年ネームヴァリュー(船橋)。“ひと昔前”という言い方ができるなら、明らかに地方馬の健闘が目立つレースだった。ただ近年はずっとJRA勢に押され気味(16~21年までJRA連続優勝)。22年ユキチャンが一矢報いたものの、彼女はJRA→川崎転厩で生え抜きではない。だから昨年ハルサンサン快勝は、嬉しさと驚きを同時に覚えた。道中超スロー、それを同馬は4コーナー5番手から大外に持ち出し上がり36秒5、文字通り究極の切れで差し切った。いつもながらの結論で申し訳ない。“ネヴァーギブアップ”というやつ。ラヴェリータ引退、ミラクルレジェンド不在(20日・東海Sに出走し4着)の今年、ハルサンサンの連覇はもちろん、エミーズパラダイス、マニエリスムあたりにも十分チャンスがあるだろう。地方馬健闘の歴史を、ここで再びみせてほしい。
(1)…堅い決着。1番人気[3-6-0-1]、2番人気[5-1-1-3]。連対率は前者、勝率は後者だが、いずれにせよ人気馬を飛ばした馬券は買いづらい。過去10年、4番人気以下の連対は3頭だけ。
(2)…JRA断然。JRA=7勝、2着9回。過去10年中、ワンツーが6度、ワンツースリーも2度ある。次いで船橋=2勝、2着1回。川崎=1勝は前述ユキチャンで、大井は3着3頭とひと息壁が破れない。
(3)…4~6歳馬。5歳=5勝、6歳=3勝とリードだが、4歳も2勝、2着6回、3着4回だからイメージ以上に活躍している。昨年はハルサンサン→カラフルデイズの4歳決着。7歳以上は3着2頭だけと不振。
(4)クイーン賞。前年暮れに「クイーン賞」を勝った馬が断然強く、レマーズガール、グラッブユアハートなど4頭出走し、すべて優勝。逃げ=2、先行=7、差し=10、追込=1。先行、好位差しが主流になる。
※データ推奨馬
◎レッドクラウディア…昨暮れ船橋「クイーン賞」を圧勝した気鋭の4歳。先行差し自在、内田博(20年・ラピッドオレンジで優勝)J鞍上、地方Gに実績のある石坂正厩舎。単勝2.0倍を切る一本人気になりそうだが、データ上もほぼすべてをクリアしている。アグネスタキオン×コマンダーインチーフの血統から千八もベスト。
☆ ☆
◎レッドクラウディア 55内田博
○ハルサンサン 55今野
▲エミーズパラダイス 55戸崎
△メーディア 54浜中
△マニエリスム 55石崎駿
△プレシャスジェムズ 56張田
△アドマイヤインディ 54宮川実
プリンセスキナウ 54田辺
アクティビューティ 55吉田隼
ツキノテンシ 54杉村
レッドクラウディアに“新女王確定”の期待がかかる。前走クイーン賞は5か月ぶりで軽くみられた6番人気。しかし内枠からスムーズに先行し、直線を向いてもうひと伸び。早めに並びかけたクラーベセクレタを、逆に4馬身突き放した。夏~秋の充電でひと回り馬体を増やし(9キロ増)、同時に精神面でもグンと逞しくなったこと。いずれにせよ南関?1牝馬であるクラーベに4馬身差は絶大な価値があり、当時千八=1分53秒3も今の重い馬場を考えると胸が張れる。今回大井クリアなら、女傑、名牝への道へ確かな前進。記者個人的には、柔軟でしなやかな走法、癖がなく自然体というレースぶりが気に入っている。
ただ冒頭も書いた通り、ここは地方側にも十分脈ありの組み合わせだ。連覇を狙うハルサンサンは昨年とまったく同じローテーション(シンデレラマイル→TCK女王盃)。そのシンデレラマイル4着は水の浮く道悪を思えば善戦で、今回間違いなくピークで臨む。父サウスヴィグラスながらじっくり乗れる千八向き。昨年36秒5の鬼脚はいま思い出してもゾクゾクする。ロジータ記念でアスカリーブルを完封したエミーズパラダイスも、すんなり先行できれば好勝負。昨春羽田盃→東京ダービー、牡馬相手にそれぞれ2、3着だから、大井中距離はフィーリングが合っている。マニエリスムも、東京プリンセス賞=大井千八で重賞勝ち。こちらは腹をくくった直線勝負でよさが出そうだ。
レッドクラウディアを除くJRA馬は、正直あまり魅力を感じない。牝馬G安定株プレシャスジェムズは典型的なジリ脚で、昨年3着も超スローで逃げながら、結局ハルサンサン、カラフルデイズにあっさり差された。メーデイア、プリンセスキナウの上昇馬2頭では、キャリアまだ11戦の前者だが、前走から中2週の強行軍で初コースとなるとプラスアルファがあるかどうか。アクティビューティは現実に前走クイーン賞8着でおつりがなかった。JRAダート5勝ながら地方の馬場に疑問を残す。
◆ニューイヤーカップ回顧(1月16日 浦和 サラ3歳 定量 南関東SIII 1600m不良)
▲(1)ソルテ 1分42秒0
◎(2)アメイジア 9
○(3)ドリームゴーゴー 1
△(4)エスケイロード 1/2
(5)コパノエクスプレス 3/4
………………
△(6)ミータロー
(7)ブラックワード
△(8)チョコ
△(10)ハードクラップ
単430円 馬複850円 馬単1830円 3連複710円 3連単4310円
3番人気ソルテが独走の9馬身差。何とも強烈な勝ちっぷりで、改めてその存在をアピールした。道中持ったまま3番手、終始スムーズにレースを運び、ごく自然な流れの4コーナー先頭。後続をあっという間に引き離した。「浦和のマイル戦だから好位キープは作戦通り。それにしても驚くほど強かった。馬が自らハミをとってくれたし、(乗った)自分は何もしていない」(金子騎手)。千六=1分42秒0は、過去10年に遡りナンバー1(昨年ゴールドメダル=44秒4)。クラシックへ向け、大きな自信、収穫をつかんだ一戦といえるだろう。
ソルテは6戦3勝、混戦を抜け出した昨秋「ハイセイコー記念」に続き重賞2勝目。大器然とした派手さはなく、どちらかといえば“しぶとい実戦派”のイメージだったが、今回圧勝ではっきり評価を一新した。馬体がひと回り増えたこと(当日8キロ増)、自ら勝ちに行く競馬をしたこと。「元々レースを終えてすぐ息が入る、素晴らしい心臓を持っている。経験を積みながら総合的な力もついてきた。今日この結果なら今後に大きな夢が出ました」(寺田調教師)。もう1つ、父タイムパラドックスの今季躍進は何とも凄い。鎌倉記念→平和賞を連破したインサイドザパーク、岩手「南部駒賞」を制したオグリタイムなど、クラシックを狙う逸材が次々に現われた。
改めておさらいすると、タイムパラドックスはダートGI5勝、内3勝を南関東であげている。少し話は性急になるが、その父ブライアンズタイムだから、今春種牡馬入りするフリオーソにも、一つアドバンテージといえるかもしれない。ともあれソルテの次走は3月27日大井「京浜盃=千七」と明言された。中間短期放牧、リフレッシュして臨む。
2着アメイジアは道悪を苦にするか行き脚ひと息。それでも外々を力任せに捲りあげパワーと勝負根性は十分示した。同馬も次走おそらく「京浜盃」。そこで初の右回り克服なら、パラドックス産駒2頭の好敵手になるだろう。3着ドリームゴーゴーは道中ソルテとほぼ同ポジションを進み、しかし追ってひと息伸び悩んだ。現時点では着順通りの力関係。今後クラシックとなるともう一段パワーアップが必要か。全体的には前が厳しい流れになり、中団で折り合いをつけたエスケイロード、コパノエクスプレスが善戦した。ただ大雪のあと、いかにも走りにくそうな馬場状態(近年砂の状態で時計が速くならない)。正直参考外の部分もある。当欄データで推したミータローは出遅れが響き4コーナー9番手。上がり38秒9はソルテに次ぐ第2位だから見限れない。