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東京新聞杯

  • 2013年02月04日(月) 18時00分
 強力な先行タイプがいなかったため、また、外枠の先行馬の出足が良くなかったから予測された以上にスローな展開となった。レース全体のバランスは47.6〜45.3秒。前後半の差が2.3秒も生じ、1000m通過は59.4秒にとどまった。直線の3ハロンは11.2〜11.0〜11.3秒=33.5秒。先行タイプが止まらないペースであると同時に、瞬発力のある馬に有利な形となった。

 勝った4歳クラレント(父ダンスインザダーク)は、これで東京の1600m「3、1、4、1」着。4着のキャピタルSは、今回も対戦したヤマニンウイスカーに高速の芝特有の絶妙のペース「46.2〜45.9秒」を作られたときの1分32秒3(0.2秒差)。3歳後半からの東京芝1600mでは、まず崩れることなく1分32秒台で乗り切れるマイラーに育ってきた。3歳時より鋭くなっている。

 今回は好スタートから緩い流れのインにおさまると、坂上からの切れ味比べで一気に抜け出してみせた。母エリモピクシーを通じてダンシングブレーヴの爆発力と、テスコボーイのスピード。そして父方からサンデーサイレンスの切れ味を受けている。まだGII〜GIII勝ち馬なのであまり誉めるのもどうかと思えるが、安田記念、マイルチャンピオンS向きの理想的なマイラータイプなのだろう。岩田康誠騎手の騎乗スタイル(ひと呼吸待って切れ味で決着をつける)にぴったり合うタイプでもある。

 同じ4歳ダイワマッジョーレ(父ダイワメジャー)が素晴らしい切れを爆発させて2着に突っ込み、このマイル部門での世代交代を思わせた。昨12年の勝ち馬ガルボは58キロと外枠もあったが8着。11年の勝ち馬スマイルジャックは7着。そして10年の勝ち馬レッドスパーダが粘っての4着だった。

 ダイワマッジョーレは、ハイア―ゲーム(青葉賞、鳴尾記念など)の下。父が同じサンデーサイレンス系なので4分の3同血の弟になる。うまく内をさばいて、クラレントの通ったところに突っ込んだ丸田恭介騎手の好騎乗も光った。1800mに1分44秒6(新潟)の快記録もあり、マイル戦ベストとは限らず、今年は1600〜2000m級で大活躍してくれるだろう。今回の上がり3ハロン「32秒7」はメンバー中断然の1位だった。

 3着トライアンフマーチと、4着レッドスパーダは、年齢はベテラン7歳だが、ともに長い休養期間があり、まだまだマイラーとして十分な活力が残っている。トライアンフマーチの場合は、絶好のイン3番手から、レッドスパーダとスマートシルエットの間を割る鋭さがなかった。上がり33.4秒でまとめてはいるが、一瞬の切れに欠ける。

 この詰めの甘さを衝かれないためには、母キョウエイマーチと同じように自分から早くスパートして相手に脚を使わせるか、あるいは思い切ってタメ、それで切れ味を引き出そうとするか、冒険が必要なタイプなのだろう。それこそ毎回乗り替わっているが、毎回毎回テン乗りでは、いい仕事をしにくいタイプの馬と思える。

 7歳レッドスパーダ(父タイキシャトル)もトライアンフマーチと似た一面があり、2010年のこのレースでトライアンフマーチ以下を封じて抜け出したときの1分32秒1の中身は「58.6〜33.5秒」。自身があまりに楽なペースの先行策だと、後続の切れのあるタイプにも楽に追走されてしまう難しい死角がある。藤沢和厩舎の馬に騎乗して「逃げ一手」作戦はとりにくいだろうが、相手のペースに合わせての先行ではGIII止まりに思えてきた。

 1番人気のドナウブルーは、この流れだからもっとも馬群の密集する好位でもまれ放題になってしまった。昨秋のマイルCSを好走しているが、あれは直線が平坦の京都でのこと。安田記念はともかく、府中牝馬Sや,今年も目標とするヴィクトリアマイル(昨年は2着)が示すように東京コースの1600〜1800mは大きなカベだろう。スケールは別にして、全妹ジェンティルドンナとは特徴からして異なるタイプである。

 4歳マウントシャスタ(父ディープインパクト)は、宝塚記念、毎日杯の好内容と、牝馬ハナズゴールに遊ばれた前回のマイル戦を比べると、もちろんこなすことはできるが、マイル戦ベストというスピード系ではないことが判明しつつある。リアルインパクトは、太め残りをささやかれたが、当日輸送でプラス20キロの528キロ(連対最高体重は512)は、冬場とはいえさすがに重かった。目標はここではないものの、だんだん評価が落ちる一方である。

 きさらぎ賞は、先週の2重賞、さらには東京新聞杯と同様のスロー。3歳のこの時期は、スローからの追い比べや切れ比べのほうが資質の差が出るケースが多いので、49.6〜(12.6)−46.7秒」=1分48秒9は、行く馬がいなかったから仕方がない。ただ、、最近10年ではもっとも遅い全体時計が示すように、迫力に乏しかった。

 勝ったタマモベストプレイ(父フジキセキ)は、フジキセキの遅くなってからの産駒であり(距離適性の幅が広がることが多い)、上のタマモホットプレイなどとは明らかに違うが、今回は抜群の状態の良さに、スタミナを問われない流れが重なったこともある。クラシックの有力馬の評価を受けるかどうかは、この次の1戦(トライアル)だろう。

 人気のリグヴェーダ(父ディープインパクト)は、雪の日程変更に想像以上の大きな影響があった結果としか考えられない。この馬に、京都1800mはおそらく最高の条件だったろう。このスローで、4コーナーではもう余力のないバラバラのフットワークは注目馬だけにつらかった。再調整が空回りしてしまったのだろうか。この時期に出直しを余儀なくされては苦しい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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