砂の猛者たちが一堂に会するフェブラリーS。ここに今年もまた、芝のGI戦線から刺客が送り込まれてくる。カレンブラックヒル──非凡なスピードを武器に無敗でNHKマイルCを制し、毎日王冠では古馬を撃破。初めての2000mとなった天皇賞(秋)でも、勝ったエイシンフラッシュからコンマ4秒差の5着に粘り、GI馬の底力を見せつけた。芝のバリバリの一線級が、今なぜフェブラリーSなのか。指揮官・平田修の胸の内に迫った。(取材・文:不破由妃子)
今年のフェブラリーSの目玉といえば、間違いなくカレンブラックヒルの参戦だろう。明け4歳となり、充実期を迎えた芝のGI馬が、今なぜ“ダート”なのか。まずは平田に、そのきっかけを聞いた。
指揮官・平田修調教師
「毎日王冠の前後やったかなぁ。秋山が『ダートを使ったらおもしろいんじゃないですか』って話していたことを、助手伝いに聞いてね。たしかに俺自身も、あれだけのスピードを持っている馬だから、ダートでも走れるだろうなって思ったことはあった。でも、実際にダートを使うなんてことは、当時は考えていなかったし、もちろんオーナーに提案したりもしなかった。ただ、秋山がそう言っていたっていうことが、ずっと頭にあってね」
可能性の種をまいたのは、主戦・秋山。ブラックヒルを誰よりも知る彼の言葉だけに、平田の脳裏にも焼き付いたのだろう。
「天皇賞のあとに、オーナーと会食する機会があって、その時に初めてそういう話をしました。秋が終わった時点では、阪急杯か、中山記念か、あるいはフェブラリーSかっていう3つの選択肢があった。阪急杯を使うとしたら、高松宮記念も視野に…っていう話になったんだけど、そこは秋山が『もともとカーッとなるところがある馬だから