5月28日「大井記念」はネームヴァリューの圧勝だった。4コーナー、馬の行く気にまかせて先頭に立ち、軽く気合をつけた程度で後続に5馬身差。02年NAR最優秀牝馬。もちろんその強さはわかっている。それでも今回の場合、改めて脱帽…という以外に言葉がない。エンプレス杯、クイーン賞、何とも歯切れの悪いレースぶりで1番人気を裏切り、間のダイオライト記念を含め半年以上使い詰め。少なくとも昇り目は浮かばなかった。基礎体力、精神面、よほどズバ抜けたものがあるのだろう。ほんの短いサイクルで立ち直り、落ちかけた評価を一気にご破算にしてしまう。強いて付け加えれば、大井コースへのフィーリング、相性のよさ。とにかくこの日は前3戦と別馬のようにスムーズな走りだった。
大井記念(サラ4歳上 別定 南関東G2 2600m良)
○(1)ネームヴァリュー (56・石崎隆) 2分49秒0
△(2)ウエノマルクン (52・鈴木啓) 5
▲(3)スプリングシオン (56・左海) 首
◎(4)ジーナフォンテン (56・佐藤隆) 2.1/2
(5)マイングッド (52・鷹見) 1
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△(11)バンケーティング (56・的場文)
単320円 馬複2470円
馬単3100円 3連複3640円 3連単18780円
ただし客観的には、レース自体がかなり生ぬるかった感も否めない。14番人気スタートザウェイが引っ張り、1000m通過64秒1の超スロー。ネームヴァリューはその3番手を持ったまま進んだ。「3コーナーからよーいドンの競馬。道中カカるところもなくて乗りやすい。力があるね」と初コンビの石崎隆騎手。なるほど50秒1~37秒5(推定)の上がりは立派だが、瞬発力身上の一流馬なら当然の数字でもある。最長距離2600mながら、真のパワー、スタミナは要求されなかったということ。次走は6月25日「帝王賞」。自身の能力、したたかさは再び証明したものの、そこにつながったとも言い切れない。
ウエノマルクン、スプリングシオンの2着争いは、4キロの斤量差もあり最後前者に凱歌があがった。父サッカーボーイ、小柄だが長距離に適性があり、2000m前後のハンデ重賞なら遠からずチャンスも出るか。スプリングシオンは相変わらずジリ脚。大井向きながら善戦マンというムードが濃い。ジーナフォンテンは7キロ減。当日かなり気温が上がったにしても、激しい発汗でみるからにテンションが高かった。中団のインからじわりと差を詰めただけ。「ずっと内にササリ気味。直線でも手前を変えてくれなくて…」と佐藤隆騎手。結果論ながら牝馬はやはり難しい。ぎりぎりまで仕上げるとレースで案外動けないこと。加えてジーナの場合、左回りベターもはっきりした。バンケーティングはブリンカーを外し、3~4コーナーからまくって出たが、直線はまったく伸びず。距離適性も含め、依然トンネルというしかない。
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かしわ記念出走予定馬(6月4日船橋 サラ3歳上 別定 統一G2 1600m)
◎エスプリシーズ (56・森下)
○ビワシンセイキ (56・横山典)
▲ベルモントアクター (56・石崎隆)
△ノボトゥルー (56・武豊)
△スターリングローズ (56・福永)
△ハタノアドニス (56・桑島)
△ノボジャック (56・蛯名)
ラヴァリーフリッグ (54・安藤勝)
エスプリシーズ◎は、正直少なからず心情が入っている。ただし前走群馬記念、統一G初挑戦で3着。これは同馬の能力と適性を確認し、可能性を探る上で大きな意味があったと思う。統一Gレベルでも互角に近い力があること。左回りならさらに上積みが望めること。マイル前後で最も特長が生きること。その群馬記念は、スタートひと息を3~4コーナーで盛り返し、最後プリエミネンスに差されたもののパワーを感じさせる内容だった。父カコイーシーズ。一つ転機を得て、一気に昇りつめる血統でもある。
ビワシンセイキは前走急仕上げを伝えられたかきつばた記念快勝。何より東京大賞典、フェブラリーSでゴールドアリュールに2度肉薄した勝負強さが光る。地力があり、しかも競馬センスに優れたレース巧者。ここをあっさりなら距離不問で現役ダート?2と断言していいだろう。スターリングローズはデビュー時1800m3勝はあるものの、全国レベルで勝ち負けとなると1400m以下が理想的。それなら再び旬を迎えたベルモントアクター、船橋に相性がいいノボトゥルーの方に食指が動く。古豪ノボジャック、徹底先行ハタノアドニス、安藤勝に手綱を委ねたラヴァリーフリッグ。記者個人としては今年になって最もワクワクする好カードだ。