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されどダービー

  • 2003年06月09日(月) 12時19分
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 6月4日、船橋「かしわ記念」は、正直かなりショックな結果だった。期待したエスプリシーズがあろうことか殿り負け。スタートで一完歩出遅れ、確かにテンからリズムはよくなかったが、それにしても3コーナーですでにいっぱい、まるで競馬になっていない。当日5キロ増ながら馬体のハリなど文句なく、悠々と落ち着いた歩様にも体調は万全とみてとれた。わからない。わからないことだらけなのは競馬の常だが、前走群馬記念、初の統一G挑戦で3着健闘、得意の左回りなら…の思惑からはいささか落差がありすぎる。単オッズ20倍、5番人気。記者の買いかぶりといえばそれまでだが、そこは惚れたものの弱み、ひとつうなずけるような理由がないと納得しづらい。いずれにせよ今後この馬をどう評価していいか、再びトンネル、暗礁に乗り上げたのは事実である。

かしわ記念(サラ3歳上 定量 統一G2 1600m重)

▲(1)スターリングローズ  (56・福永) 1分38秒2
 (2)ラヴァリーフリッグ  (54・安藤勝)  3/4
△(3)ノボトゥルー     (56・武豊)   1/2
 (4)トニージェント    (56・村上)   頭
△(5)ベルモントアクター  (56・石崎隆)  1/2
………………………………………………………
△(6)ノボジャック     (56・蛯名)
△(8)ハタノアドニス    (56・内田博)
○(10)ビワシンセイキ    (56・横山典)
◎(14)エスプリシーズ    (56・森下)

単380円 馬複5370円 馬単7400円
3連複11640円 3連単96650円

 もっとも大方のファン諸氏、ショックといえばむろんビワシンセイキ凡走の方だろう。1000m通過59秒9の平均ペース、中団の外めで流れに乗ったかとみえたが、3~4コーナーにわかに反応が鈍くなり、直線伸びるどころか後ろのノボトゥルー、ベルモントアクターにあっという間に食われてしまった。「今日は走る方に気持ちが乗ってこなかった…」。ジョッキー、トレーナー、ほぼ同様のコメント。いつも通りガッシリした好馬体で雰囲気も良好。いわゆる一過性のポカとしか敗因が浮かばない。大井2000mに適性がある以上、おそらく次走帝王賞へ引きずることもないだろう。ただ少々辛辣な言葉を使うなら「その程度の馬」、そういう認識も必要かもしれない。“気分”で大敗したりしないのが、やはりダートの一流馬だ。

 勝ったスターリングローズ。道中好位の外を絶好の手応えで進み、直線あと1ハロン、鞍上のGOサインとともに真一文字に伸び切った。「早めに抜け出すと気を抜いてしまうのでぎりぎりまで我慢した」と福永騎手。人馬一体、会心の勝利といえるだろう。これまでやや詰めの甘いイメージもあったが、どうやらスタミナうんぬんではなく気性の問題。ただし帝王賞へは向かわず、秋のブリーダーズGCスプリント(今年は大井1190m)連覇が最終目標。デビュー時千八3勝の記録もあり、個人的には短~マイル路線だけでは惜しいとも思うのだが。

 ラヴァリーフリッグは道中インで完璧に折り合い、直線いったん抜け出す安藤勝マジック。勝ち時計が平凡で恵まれた感も否めないが、ネームヴァリュー、ジーナフォンテンと並ぶ牝馬3強は想像以上にレベルが高い。トニージェントは健闘のひとこと。さらに上積みがあるかはともかく、帝王賞へ胸を張って挑戦できる。ベルモントアクターは外枠のぶん道中ロスの多い競馬だった。直線の伸びは合格点。もう少し距離があった方がよさそうで、こちらも帝王賞へそれなりの夢がつなげる。

       ☆       ☆       ☆

東京ダービー(6月11日大井 サラ3歳 定量 南関東G1 2000m)

◎ナイキアディライト  (56・石崎隆)
○アヅマディフィート  (56・桑島)
▲シャコーオープン   (56・早田)
△ナイキゲルマン    (56・的場文)
△イシノファミリー   (56・森下)
△ムギワラボウシ    (54・今野)

 羽田盃→東京ダービーの2冠馬は、過去20年にさかのぼり7頭を数えている。東京王冠賞を秋に置いた伝統的な三冠時代、少しずつ距離を詰め春完結とした三冠時代、そしてJDダービーを頂点とした現在のクラシック。時とともに位置付けは変わってきたが、いざこの時季を迎えると、「ダービーはダービー」…そんな感慨もやはり浮かぶ。古くはサンオーイ、キングハイセイコー、そしてロジータ、さらにトーシンブリザード。たとえばすでに20年来大井のエースとして君臨する的場文男騎手が、なぜか東京ダービーだけに縁がない。本人にとってはかなり切迫した“悲願”でもあるらしい。「されどダービー」という証拠だろうか。

 ともあれ、今年のナイキアディライトはブリザード級の堅い主役と確定している。羽田盃を1790m1分52秒3(昨年プリンシパルリバー54秒1)、古馬オープンレベルの快時計で逃げ切り、しかも最後まだ伸びる勢いがあった。父ディアブロ。スピード型ながら心身両面にゆとりがあり、同世代相手なら距離延長も何ら問題にならないだろう。次走7月8日JDダービーへ向け、どう勝つかがひとまずテーマ。土曜日の東京「ユニコーンS」。ユートピアには正直度肝を抜かれたが、アディライト自体の能力というなら、低くみても昨年のヒミツヘイキあたりに遜色ない。

 羽田盃2~5着馬に、今回優先出走件が与えられた。ごく普通にはナイキゲルマン、シャコーオープン上位だが、少しひねってアヅマデフィート。羽田盃5着はキャリアわずか4戦目、それも大外枠からアディライトを追走している。サウスロード×サクラダイオー。耳慣れないものの、ミルリーフ、リボー、スワップスなどが入る長距離血脈。大駆けをイメージしても無理ではない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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