いよいよ今週末に迫ったドバイワールドカップデー。これまでも数々の歴史的名勝負が繰り広げられたドバイワールドカップデーであるが、日本の競馬ファンが最も心を熱くしたのは、2011年のドバイワールドカップではなかろうか。東日本大震災の悲劇から、わずか15日後に行われたドバイワールドカップで歴史的勝利を収めたヴィクトワールピサ。馬上で涙に暮れたジョッキー、ミルコデムーロ騎手に、改めて当時の“思い”を独占激白していただきました。(取材・写真:沢田康文)
ヴィクトワールピサとミルコ・デムーロのコンビが初めて結成されたのは、2010年の有馬記念。後にドバイワールドCを制し、日本競馬史に燦然と輝く金字塔を打ち立てることになる人馬は、暮れのグランプリで女傑ブエナビスタの豪脚をわずかに凌ぎ切り、その年の中央競馬を劇的に締めくくった。
ヴィクトワールピサとデムーロ騎手
「実は、その前のジャパンCでも騎乗依頼をいただいていたのですが、イタリアのヴォワライシという馬が急遽遠征することになって、契約の関係からそちらに騎乗せざるを得ませんでした。ヴィクトワールはネオ(ユニヴァース)の産駒でもあり、有馬記念でついに騎乗できると決まったときはとっても嬉しかった。写真判定の結果が出た時は、本当に感無量でした」
年が明け、2011年初戦の中山記念もひとマクリで楽勝したヴィクトワールピサとデムーロのコンビは海を越え、世界最高賞金を誇る中東の世界決戦に勇躍と臨む。この年のドバイワールドCには同馬を含む3頭の日本馬が出走。最有力と見られていたのは、有馬記念以来の実戦となったブエナビスタで、欧州ブックメーカーのオッズなどでも、ヴィクトワールピサは中穴の域を出ていなかった。
デムーロ自身、「正直言ってレース前は勝てるという自信はありませんでした。世界中から強い馬が集まり、ハードなレースになるだろうと思っていました」と、当時の心境を吐露する。
現地ではレース週の調教にも一度跨ったデムーロ。「たしか水曜日だったと思いますが、軽めのキャンターに騎乗しました。タペタにも上手に対応していて、なによりも馬の状態が日本にいる時と同じぐらい素晴らしいものだと感じ、安心しました」と、振り返る。
有馬記念と同様に先行して持久力を生かす競馬をイメージしていたデムーロにとって、レース前に気になったのはブエナビスタよりも