6月11日「東京ダービー」は、ナイキアディライトの圧勝だった。単オッズ1.2倍。レース自体もさながら羽田盃のVTRで、風評通り他馬とは性能が違ったとしかいいようがない。絶好のスタートを切ったジョイフルハヤテがいったん行く構えをみせたが、インからすぐダッシュがついてアディライト。こうなるとやはり伏兵は引かざるをえない。1コーナーをスムーズに回った時点で勝負あり。終始2馬身ほどのリードをとって淡々とラップを刻み、道中鞍上の手綱はぴくりとも動かない。直線あと1ハロン、初めてハミをかけ軽く気合をつけると、一瞬のうちに後続が離れていく。5馬身差。結局最後までステッキは入っていない。
東京ダービー(サラ3歳、定量、南関東G1、2000m良)
◎(1)ナイキアディライト (56・石崎隆) 2分8秒9
△(2)ナイキゲルマン (56・的場文) 5
▲(3)シャコーオープン (56・早田) 頭
(4)ウィンブロー (56・野崎) 1/2
(5)ユメノジェネラス (56・秋田) 1.1/2
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△(11)ムギワラボウシ (54・今野)
○(14)アヅマディフィート (56・桑島)
△(15)イシノファミリー (56・森下)
単120円 馬複260円 馬単290円
3連複700円 3連単1160円
アディライトは、史上22頭目の二冠馬。京浜盃→羽田盃→東京ダービー3連勝は2002年トーシンブリザードと同様で、ダート6戦6勝、依然として負けを知らない。違うのは、2歳時JRA芝に挑戦、500万特別を6、8着と敗れていること。あるいはこの2戦が同馬のインパクトを弱めているのかもしれない。6勝中5勝まで、現実に後続を4馬身以上ちぎっている。それでも“怪物”とは呼ばれない。「歴代のダービー馬と較べても、スピードの点では上の部類だと思う」と石崎隆騎手。少なくとも勝負の上ではまだ底をみせていないのだが。
ただしかし今回の場合、少なからず不満も残った。表示されて一瞬目を疑ったほど時計が遅い。2分8秒9。2000mに移行したここ4年で最も劣り、低レベルとされた昨年キングセイバーにも及ばない。むろん時計とは流れの中で作られ、イコール能力基準でもないのだが、次走「JDダービー」、ユートピア(前走ユニコーンSレコード勝ち)の参戦を思うと、展望があやしくなる。単に南関東エリア、偏差値上の強さなのか、あるいは相手なりに走れるのか。石崎Jのコメントを拾わせていただく。「本当は好位からの競馬もさせたいけれど、これまでは(人気がかぶる状況で)チャンスがなかった」「次(JDダービー)は強い馬が来るんでしょう。これからゆっくり作戦を考える」。
夢の途中--。ひとまず記者は現時点でそんな風に納得する。いずれにせよハイレベルの相手にもまれ、競走馬は新たな可能性を引き出すものだ。「次もやっぱり行くだけですね。行ってどこまで通用するか…」と出川龍調教師。繰り返すがアディライトはダート不敗。地の利とノンプレッシャーの強みを生かし、少なくとも“いい競馬”は可能なはずだ。
以下ナイキゲルマン、シャコーオープン。この2頭はまったく能力五分で、この日も最後の最後まで勝負がもつれた。切れ味を武器とするゲルマン、持久力に優るシャコーオープン。今回はどうやら前者が状態の面で上回った結果らしい。成長力をイメージすると夏を越しての期待は後者か。ウィンブローは確かに3~4コーナー前が窮屈になったが、今日も首の高い走法で4着以上はどうだったか。むしろ大外を一瞬あわやの伸びをみせたユメノジェネラスに、これからの可能性が感じとれた。ムギワラボウシは牡馬相手で力負け。イシノファミリーは距離延びてスタミナ不足。アヅマディフィートも心身両面、この時点では一線級相手に未完成というしかあるまい。