悔しい…残念でしたね。ドバイワールドCに挑戦したジェンティルドンナは惜しくも2着。世界の山にもう一息ですねェ。でも、日本馬が世界で認められるようになってきましたよね。ジェンティルドンナが1番人気だったのは嬉しいです。夢は秋へ続く…
話を日本競馬へ戻して! 今週から春のG1が続きますが、まずは桜花賞に出走の有力馬メイショウマンボに注目。メイショウマンボは父(飯田明弘調教師)の管理馬という飯田祐史技術調教師に、騎手からの転身のお話などをお聞きしました。

技術調教師に転身した飯田祐史元騎手
常石:メイショウマンボ号のフィリーズR(GII)優勝、おめでとうございます。そして調教師試験合格おめでとうございます。
飯田:ありがとうございます。メイショウマンボの新馬戦は僕が乗せてもらって勝ち、その後に騎手から調教師に転身。技術調教師としてスタートの時にメイショウマンボを送り出すことができて、とってもラッキーだと思う。こんないい出会いというかめぐり合わせを大切にしたいと思います。
メイショウアヤメの孫がこんなに強いとは正直思っていなかったですね。アヤメは26戦して3勝しかできなかったでしょう。小倉デビューで、ちょうどつねちゃんが乗ってたタケイチケントウと同じ時期なんですよ。1998年5月17日京都競馬、葵S(OP)でメイショウアヤメとタケイチケントウで1着2着だったの覚えてる? 3勝のうちの大きな1勝でしたね(笑)。
常石:覚えていますよ。実はメイショウアヤメが小倉3歳Sを使う予定だったでしょう? メチャ強い馬だなと思っていたので、回避になってちょっとほっとしたんですよ(苦笑)。今だから言えるんですがね。小倉3歳Sを勝つことができたのは先輩のおかげですよ。僕が競馬学校1年生だったんですが、馬のことは何にも知らなかったので、先輩がデビューして新人賞を獲るなんてすごいなーとずっと思っていました(デビュー年に19勝を挙げ関西新人騎手賞を受賞)。

桜花賞へ挑むメイショウマンボ
飯田:そんなこともあったな? マンボはその孫でしょう。3代に渡ってうちの厩舎に預けてくれるのは光栄です。馬主さんにはとっても感謝しています。このいい時期に僕が技術調教師として管理できるのも、いいご縁です。このご縁を大事にしていきたいですね。そうして人が馬がつながっていくと思うから。
マンボはみんなのいいところを受け継いでくれていますね。新馬に乗ったときに感じたんですが、欠点もあるけど、長所が最高なんですよ。3代の中で自我が一番強いけど扱いやすい。自分がしっかりしているから走るんですよね。あの時(フィリーズレビューR)も、メンバー最速の上がりの3ハロン34秒8の末脚で突き抜けてくれたでしょう。すごい脚だよな。スパッと切れる脚ではないけど持続できるし、馬込を割って抜け出す勝負根性が女の子とは思えない強さを持っているでしょう。楽しみですよね。
常石:ところで桜花賞の後、先輩はフランスへ行かれるそうですね。
飯田:翌日に出かけます。
常石:どうしてフランスなんですか? 厩舎も決まっているんですか?
飯田:フリーの今が勉強するチャンスでしょう。フランスのパスカル・バリー調教師にお世話になります。2010年のドバイワールドC優勝馬グロリアデカンペオン号など、優秀馬を手がけているスゴ腕の持ち主なんです。クリストフ・ルメール騎手の紹介で話がまとまったんです。(武)豊さんにも相談し、人間的にも立派な尊敬できる方だと教えていただき、馬のノウハウだけではなく人との関わりなども勉強してきたいと思います。
ヨーロッパの競馬は馬へのアプローチが繊細で、日本馬が最も通用するのはフランス競馬だと思う。日本の競馬に生かせることを学んできます。馬群が固まりスロー競馬で、抜け出すタイミングや折り合いや、周りに馬を置いて自分のリズムで走る精神力の強さなどは、見ているだけでは分からない。フランスでは特にそんなところをじっくり学んでみたいですね。2か月という期間は短いので、うかうかはしていられないですよ。

桜花賞の後はフランスで修業へ
常石:忙しそうですね。いつも忙しくされている中で、いつ頃から調教師を目指されていたんですか?
飯田:いつ頃って感じではなく、毎日の積み重ねです。何でもいっぺんにはできないでしょう。毎日ひとつ覚えると1年で365覚えられるでしょう。
騎手だったことに誇りを感じています。それだけに、騎手として満足できなかったことを調教師になって、という思いはあります。乗り役だったから分かることや感覚を大切にしたい。調教の時と競馬に行った時の馬の出す表情や感覚、力や反応などで、どう作っていくか試していきたいと思っています。
騎手から調教師になった先輩に話を聞いたんですが、馬には乗りたいけど乗っているとその馬のことしか見えなくなってしまうので、全体の馬の把握をするためにも我慢しているそうです。僕も見習いたいですね。勉強することは山ほどあります。騎手の時の方が楽だったところもあると思うよ。
常石:毎日が積み重ねってすごいですね。僕も先輩を見習って、覚えるのが苦手な僕ですが毎日ひとつ覚えるように頑張ります。今日は忙しい中モリモリのお話ありがとうございました。桜花賞が楽しみです。ウイナーズサークルで待っています。フランスから帰ったらまたお話聞かせてくださいね。ボジュール。
飯田:そうだね。それにしてもつねちゃん、フランス語の発音悪いな(笑)。
常石:(苦笑)。最後にファンへのメッセージをお願いします。
飯田:まだまだ勉強することが山ほどありますが、騎手の時に身体で覚えた馬との感覚やコミュケーションの取り方などを生かし、個性のある馬作りをしたいと思っています。マンボと一緒に応援してください。よろしくお願いします。
***飯田先輩が北海道出張中に、今村助手にもマンボの調教についてお聞きました!

今村助手とメイショウマンボ
常石:今の状態はいかがですか?
今村:太め感がなくなってきている。短距離からマイルのイメージがあると(武)幸四郎騎手がアドバイスをくれた。速いところへ行くと、何もしていないのに80秒を切るくらいに走り方が変わってきた。軽そうに走る感じで時計が2つくらい速い。牡馬のように気性がしっかりしていて、脚も長いし飼い葉食いも旺盛なので、牝馬には見えないですね。感触がとってもいいので本番を楽しみにしていてください。
常石:厩務員さんも「手がかからないいい仔ですよ」って言っていましたね。飯田先輩が「僕が留守でもヤス(今村助手)が上手く乗ってくれるので安心して任せています」って話していましたよ。信頼されるのは嬉しいですね。応援しています。
今村:ありがとうございます(照笑)。
「騎手から技術調教師になった時、メイショウマンボという偉大な馬に出会うことができ、自分のスタートに大きなパワーをくれた。そして、3代続く血統馬に携わることができ、最大の魅力を感じる」と、飯田先輩は何度もおっしゃっていました。桜花賞から始まるG1レースをお楽しみください。常石勝義ことつねかつでした。[取材:常石勝義/栗東]
◆次回予告
次回の「競馬の職人」は、赤見千尋さんがレポート。競馬界の旬なネタをお届けします。公開は4/9(火)18時、お楽しみに。