日本の多くの競馬ファン、とりわけミルコのファンはJRA初の外国人ジョッキー誕生の一報を待ちわびていただろう。私もその一人だった。結果はご承知の通り不合格に終わった。日本を愛し、日本の競馬を盛り上げ、彼の少なからぬ貢献を思うと、ファンの一人として残念の一言に尽きる。
ミルコは英語が堪能と言われている。確かにインタヴューや日常のやり取りには何の支障もないレベルであろう。日本語もその程度はこなすかもしれない。だが、彼の母国はあくまでイタリアであり、母語はイタリア語である。試験後の会見でミルコは試験自体の難しさに加え、英語の難しさに触れていた。競馬法規に関する問題ともなれば、それなりに専門語も使わざるを得ないだろう。英語が堪能と言っても、いろいろ段階がある。普通に意思の疎通がはかれ、日常生活に支障がなければある意味「堪能」であるが、言葉は「話、聞、読、書」の4つの要素で成り立っている。外国語の場合、このすべてをマスターするのはなかなか大変だ。日本ではこれまで「読、書」が主であったが(最近はこの傾向が変わってきたようだ)、海外では生活と直結している「話、聞」が先決だ。その上で必要に応じ「読み、書く」能力が加わっていく。
ところでJRAの騎手になるには、当然ながら日本の競馬法規やルールを知らなければならない。今回JRAは外国人にも専属騎手への門戸を開いた。その外国人が知っておかなければならないのは、日本の法規である。その知識をみるのが一次試験の目的であって、試されるのは外国語の能力ではないということだ。
かの孫正義がカリフォルニア州での大学の検定試験を受けた時の有名なエピソードがwikiに載っている。孫は「この問題は日本語ならば必ず解ける」と言って、当局に「辞書の貸出し」と「時間延長の要求」をのませたと言う。孫の要求が受け入れられたということは、そこに合理性があったからである。つまり、試験の主眼は英語力ではなく、数学なら数学の能力を問うことだったからである。
ならば一次試験は日本の競馬法規の知識が十分かどうかをみることが目的なのだから、JRAは受験者それぞれの母語で試験問題及び競馬法規の骨子を記した参考書(こちらは事前に)を作成すべきではないのか。少なくとも英語の他に仏語、独語、伊語(場合によってはその他の言語)で受験できるようにすべだと思うのである。
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