◆しらさぎ賞展望
(5月1日 浦和 サラ3歳以上牝馬 別定 南関東SIII 1400m)
「しらさぎ賞」は、今年で新生7年目を迎えるリニューアル重賞。かつては早春のクラシックTRとして“3歳・1600m”で施行され、さらに遡れば“3歳・1900m”、残念ダービー(敗戦組がこぞって出走)として行なわれていた時代もあった。記者自身は昭和59年、浦和初の東京ダービー馬、キングハイセイコーの凱旋出走(5馬身差圧勝)が印象深い。ハイセイコー直仔、父をほうふつとさせる黒鹿毛の巨漢で、レースぶりもダイナミックな徹底先行。いかにも“血”を感じさせる馬だったと記憶する。
さておき現在“4歳上牝馬・1400m”。レースの特徴は実力馬にきわめて有利な別定戦であることだろう。A級55キロ、B級53キロ、そこに南関東重賞勝ち1キロ、交流G勝ち2キロが加えられるだけだから、どんなに抜けた実績を持っていようと(例えばクラーベセクレタ・重賞11勝)、すべて57キロで出走できる。実際、一昨年ザッハーマイン(単1.3倍)、昨年クラーベセクレタ(1.0倍)、人気馬が風評通り圧勝を飾ってきた。南関東サイド、交流Gをめざす女傑級が、一つ弾みをつけようとすればまさしく格好。重賞としての意味、位置付けは、ほぼその方向で固まりつつある。
(1)…波乱含み。1番人気=2、1、6、8、1、1着、2番人気=3、2、1、1、9、5着、3番人気=1、7、9、3、6、6着。なるほど実績の違う女傑級は順当に勝っているが、その際でも2~3着は微妙に狂う。
(2)…船橋優勢。船橋=5勝、2着4回、3着5回。過去6年中ワンツースリーが3度ある。ただ地元浦和も健闘で、1勝、2着2回。大井、川崎は計20頭出走し、いまだ連対がない(昨年川崎3着)。
(3)…6歳馬。6歳=3勝、2着2回、5歳=2勝、2着2回。4歳馬は案外分が悪く、昨年クラーベ1勝(2着2回)だけ。ここで初タイトルを獲得した上昇馬も少なくないが、その3頭はすべて直前1、2着。
(4)…差し有利。逃げ=1、先行=3、差し=7、追込=1。実力馬が3~4コーナー、一気に捲るパターンが最も多い。4勝をあげた戸崎騎手がJRA移籍。的場文騎手、石崎駿騎手が1勝、2着1回。
※データ推奨馬
○ツキノテンシ…イメージ以上に健闘、好走例が多い浦和所属。現実に昨年しぶとい末脚で2着した。浦和1400m3勝、内2勝がJRA交流だから、この条件の適性は相当高い。いい意味で枯れてきた7歳馬。ベテラン石崎隆之騎手とのコンビ[5-5-1-9]。
☆ ☆
◎クラーベセクレタ 57今野
○マニエリスム 56御神本
▲センゲンコスモ 56吉原
△サクラサクラサクラ 55 森
△ナターレ 56的場文
△ツキノテンシ 55石崎隆
△ハルサンサン 57石崎駿
クラーベセクレタの勝ちっぷりが焦点になった。昨年、南関東重賞2勝、交流G2着4回。そのわりに不完全燃焼のイメージは、結局ミラクルレジェンドを超えられなかった(1勝3敗)ためだろうが、改めて振り返れば、さまざま誤算があった(15キロ増・出遅れ)「レディスプレリュード」以外、1度として連対(2着)を外していない。父ワイルドラッシュ、もうひと皮むける血統。本来ポジション、折り合いなどに気遣わず、自由奔放な競馬をしてベストのタイプと判断する。元より今野Jとは[3-1-0-0]の黄金コンビだ。
マニエリスムは同じ川島正行厩舎。クラーベの陰に隠れがちだが、「プリンセス賞=SII」制覇でみせた瞬発力など良血らしく一級品。結果足踏みながら芯がしっかりしてきた近況で、クラーベ逆転はともかく、2~3着候補を想定すれば最も安定感が浮かぶ。逆に意外性はセンゲンコスモ。昨年このレース3着、折り合いひとつで揺れる成績だが、昨夏同条件準重賞「プラチナC」も制しており、条件は絶好といっていい。サクラサクラサクラは昨秋「レディスプレリュード」でクラーベを脅かす3着だが、今回4か月の放牧明け。外枠(12番)から強力同型をどうさばくか。ナターレも同様に逃げ一手で展開微妙。それなら差しのきくツキノテンシ、久々でもハルサンサンにむしろ妙味か。
◆羽田盃回顧
(4月24日 大井 サラ3歳 定量56キロ 南関東SI 1800m重)
▲(1)アウトジェネラル 1分52秒8
◎(2)ソルテ 4
△(3)インサイドザパーク 4
○(4)ジェネラルグラント 首
△(5)オーネットエース 11/2
…………………
△(6)オグリタイム
(7)ハブアストロール
単390円 馬複1400円 馬単2460円 3連複2030円 3連単9340円
アウトジェネラルが横綱相撲で完勝した。課題のスタートも無難に決まり、道中外め3番手をスムーズに進めたことがまず勝因。直線中ほど、先に抜け出したソルテを一瞬のうちに捕え、そのまま余裕残しで独走した。それにしても自身上がり3F36秒4は別次元としか言葉がなく、少なくともこの夜に限ると、ライバルに決定的な差をつけた印象が強い。「描いていた通りの競馬ができた。いい感じで折り合えたし距離延びても問題ない。任せてくれたスタッフに感謝いっぱいの気持ちです」(御神本騎手)。道中超スロー(1000m通過64秒1)、それでいて1800m=1分52秒8(昨年アートサハラ=52秒9)だから、時計的にも十分胸が張れるだろう。
アウトジェネラルは道営2勝、門別GIII4着、川崎のGI全日本2歳優駿4着。ジェネラルグラントの好敵手という存在で、転入後の前々走大井準重賞「雲取賞」を勝っていた。グラントとの比較は微妙だが、記者イメージはパワーの点でこちら上位。アドマイヤドン×サンデーサイレンスの血統背景にも魅力がある。「いい競馬をしてくれた。(調教の)メニューを軽くして、その狙いが当たったと思う。もともと素質はあるからね…」(川島正行調教師)。同師は羽田盃4勝目。期待馬を確保する、その経営手腕はもちろん、それを確かに育てていく、厩舎ノウハウとでもいうべきもの。改めて南関東盟主、NAR最優秀調教師(厩舎)の何たるかを痛感した。
2着ソルテは、ひとまず目いっぱいの競馬とみえる。好スタートから無理なく2番手。新コンビ・真島Jとも隙なく折り合い、しかし勝ち馬の爆発力は予想を超えたものだった。ただソルテ自身、着実な成長は間違いなく、何より順調にキャリアを積めるタフさ、頑健さに望みがつながる。ジェネラルグラントは、結果的に評価先送りになるだろう。スタートひと息、インで砂をかぶる厳しい展開。次走東京ダービーでどう巻き返すか。精神面の成長が問われてくる。ゴール寸前これを交したインサイドザパークも切れ味光る個性派だが、ゲート難、不器用さは相変わらず。本質ハイペース、短~マイル向きの評価になるか。逆に中~長距離向き成長株オーネットエースは、現時点でスピード負け。逃げて失速オグリタイムは底が割れた。
◆東京プリンセス賞回顧
(4月24日 大井 サラ3歳牝馬 定量54キロ 南関東SI 1800m不良)
○(1)カイカヨソウ 1分55秒9
◎(2)イチリュウ 2
(3)ベルフェスタ 31/2
▲(4)ローズベビークリス 頭
(5)サブノハゴロモ 頭
…………………
△(6)ケンブリッジナイス
△(7)パパパノチョイナ
(11)アステールネオ
△(13)ビーディフォース
(15)デイジーギャル
単180円 馬複320円 馬単460円 3連複7680円 3連単21390円
カイカヨソウが雪辱した。前走(浦和・桜花賞)とは一転したスムーズな行き脚で、終始絶好のイン4番手。3~4コーナー、大外から捲って出たイチリュウをいったん受け止め、ゴール前100m、ものの見事に差し返した。「前走不完全燃焼だったから、今日は結果を出したかった。右回りは違いますね。嬉しいというよりホッとしてます」(今野J)。1800m=1分55秒9、前日羽田盃=53秒8(アウトジェネラル)を思うと物足りないが、イチリュウに最後きっちり2馬身差、まだまだ手応えに余裕があった。パフォーマンス、印象点というなら必要十分。不良馬場でやや大味な競馬になったものの、結果はしごく順当だった。
カイカヨソウの戦歴をおさらいする。道営デビュー2連勝、門別GIII「北海道2歳優駿」3着を経て東上し、以後3戦2勝、今回ひとまず南関東SIタイトルを獲得した。「道中好位につけて4コーナー外に出る作戦を話していたが、実際はインを突いた。(鞍上は)巧いね。ともあれ力が出し切れて、自分も胸のつかえがとれた。もっと良くなる馬ですよ」(川島正行調教師)。同師は昨日「羽田盃」に続いてクラシック連破の快挙。カイカヨソウの場合、馬体減りが一つネックで、しかし今回十分に乗り込まれて2キロ増だから抜かりはなかった。次走明言されなかったが、ごく普通には「関東オークス=交流GII」。課題の左回りを、日々の調教でどう克服していくか。
イチリュウは立派な2着。大外枠で行き脚ひと息、、それでいて3~4コーナー、鞍上の檄に応えて果敢に動いた。コースロスがなければ“2馬身差”は詰まったイメージ。地元関東オークス、2100mならJRA相手でも善戦以上が期待できる。3着ベルフェスタは平均ペース(1000m通過63秒3)を4コーナー先頭、伏兵陣で最もソツのない競馬をした。父ゴールドヘイロー。この血統は総じてレース上手で意外性を持っている。ロジータの孫ローズヘビークリスも善戦だが、上位2頭に肉薄するにはもう一段パワーアップが必要か。桜花賞2着アステールネオは後方のまま動けず終わった。本質芝向きと判断する。