6月25日「帝王賞」。単オッズ1.1倍、すべてに死角なしと思えたゴールドアリュールがよもやの大敗を喫してしまった。道中2番手の位置取りは何ら問題なく、1000m通過63秒0、スローの流れも戦前のイメージ通り。しかし3~4コーナー、早くも鞍上の手応えが怪しい。直線前のネームヴァリューに詰めよるどころか、あっという間に馬群に呑まれた。11着。入線後、ごく普通の足どりでカンカン場へ引き上げてきたから脚元がどうこうではおそらくない。「パドックでいつもより少しおとなしい気もしたが、乗った雰囲気はよかった。わかりません。競馬は難しい…」と武豊騎手。こうしたとき、競馬には何とも便利な言葉がある。「一過性のポカ」というやつ。ただアリュールには、これまでそうした前科がなかった。デビューから15戦、芝の日本ダービーですら5着。1度として掲示板を外していない。前走イーグルカフェを持ったまま7馬身ちぎったレースぶりからはいよいよ本格化。ここはダート無敵を強烈にアピールするはずだった。これも競馬…、そう割り切る以外、納得のしようがないか。今後は秋へ向けてひと息入れる。昨春統一G参入以来、その王道をひたすら走り、挫折、破綻、試練、ほぼ無縁だった馬だけに、やはり複雑な思いがある。
帝王賞(サラ4歳上 定量 統一G1 大井2000m不良)
▲(1)ネームヴァリュー (55・佐藤隆) 2分04秒6
△(2)ビワシンセイキ (57・横山典) 4
△(3)リージェントブラフ (57・吉田豊) 1.1/2
○(4)ベルモントアクター (57・石崎隆) 1
(5)マンボツイスト (57・デムーロ) 1/2
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◎(11)ゴールドアリュール (57・武豊)
△(13)マルカセンリョウ (57・上松竜)
△(14)ミツアキサイレンス (57・川原)
単2510円 馬複6150円 馬単21190円
3連複7000円 3連単79670円
とはいえ、レース自体のレベルは水準以上で、あと味の悪いものではけっしてなかった。ネームヴァリューはテンから腹を決めた正攻法。来るなら来い、終始堂々としたフォームの逃げで、直線GОサインとともにもう一度加速した。上がり37秒8、余裕を残して後続に4馬身差。「状態はずっとよかったが、ひと息結果が出ないとき(エンプレス盃3着、マリーンC4着など)があった。前走(大井記念)からつけたシャドーロールの効果も大きいね。道中気を抜くことなく走ってくれる」と川島正行調教師。仮にアリュールがまともでも今日はきわどい勝負になっただろう。交流移行後の帝王賞、牝馬としてはホクトベガ、ファストフレンドに次ぐ3頭目の優勝。レースぶり、時計からおそらくこの2頭の中間にはランクできる。JRA出身、地方ダートで開花した異色のヒロイン。もはやはっきり名牝と呼べる域まで到達した。秋はJBCクラシック、JCダート、さらに東京大賞典。スピード、パワー、勝負強さ、すべてに減点のない中距離タイプで、今のデキが維持できる限り、かなり大きな期待ができる。
ビワシンセイキ2着はおおむね現状の能力通り。前半はアリュールをマークし、これが失速するとすぐ勝ち馬に目標を切り替えた。最後伸び脚が鈍ったあたり、あるいは1800mがひとつの壁か。リージェントブラフも相変わらず自身の限界を突き破れないレースぶり。多頭数、道悪、先行馬ペース、ここ一番で常に条件がそろわない不運もある。ベルモントアクターは昨暮れ大賞典同様、中団よりやや後ろをじっくり乗り、直線インから一瞬だけ脚をみせた。本音をいえばもう少し戦う姿勢がほしかったが、「現状では精いっぱい。馬はよく走っている」(石崎隆騎手)。力関係を見据えた鞍上の判断とすれば仕方ないか。マルカセンリョウは3番手を積極的に進んだが、結果からはスタミナ不足。ミツアキサイレンスはどうやら旬を過ぎた気配が濃い。
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南関東でもいよいよ2歳戦がスタートした。川崎、浦和、大井、延べ55頭がデビューし、うち6頭が初陣を飾った。今週は7月3日、船橋で新馬戦が3鞍組まれ、話題の「ダーレー・ジャパン・レーシング」、外国産馬2頭が出走を予定している。
エスプリゼット 川崎900m重 56秒5
(父アサティス 牡 武井厩舎)
ブランノーブル 川崎900m重 55秒1
(父ウイニングチケット 牝 山田正厩舎)
カヌマビート 浦和800m良 48秒7
(父ホリスキー 牡 宇野木厩舎)
マリンゴールド 浦和800m良 48秒0
(父オジジアン 牝 広瀬厩舎)
ハネダユーラシア 大井1000m良 1分01秒3
(父デュラブ 牡 赤嶺厩舎)
ヨークタウン 大井1000m良 1分02秒9
(父ピルサドスキー 牡 庄子厩舎)
中で勝ちっぷりが目立ったのは、浦和マリンゴールド。牝馬ながら490キロ台と馬格に恵まれ、豪快かつ柔らかなフットワーク。ゲートが開くやロケットスタートで飛び出し、最後手綱をセーブしたまま後続を8馬身ちぎってみせた。母の父トウショウボーイ。陣営は早くもJRA新潟の認定レースを視野に入れていると聞く。大井2頭、ハネダユーラシア、ヨークタウンもまだ若さを残しながら、好馬体、バネのきいた走法に魅力がある。前者は逃げ切り、後者は直線一気。それぞれ血統を感じさせる勝ちっぷりだった。川崎ブランノーブルも行き脚がついた3~4コーナーでひとまくり。55秒1、時計が優秀だけに、今後をじっくり見守りたい。
さて船橋の外国産馬2頭。7月3日、第6Rにマークオブオナー(父マークオブエスティーム)、第7Rにゼレンカ(父シーキングザゴールド)。調教試験はともに800m52秒台と平凡な時計だったが、「意識的に砂をかぶせた。最後はよく伸びているし期待してもらっていい」と川島正行調教師は胸を張る。いざ実戦でどんな走りを見せてくれるか。青写真通りならむろんこの2頭もJRA認定レースをめざして進む。