馬券で稼いだ所得を申告せず、2007年〜2009年の期間で5億7000万円を脱税したとして、大阪市の会社員の男性(39)が所得税法違反に問われ、懲役1年を求刑された裁判。その注目の判決が、5月23日(木)に言い渡されます。
この男性は、市販の競馬予想ソフトを改良して、独自のシステムを構築。2004年頃から、JRAの電話投票で馬券を購入するようになりました。100万円からスタートした残高は順調に増え、立件の対象となった2007年〜2009年の3年間には、約28億7000万円の馬券を購入し、払戻金が約30億1000万円、利益は約1億4000万円に上りました。
調査に乗り出した大阪国税局は、払戻金から当たり馬券の購入額のみを差し引いた約29億円が利益と認定し、大阪地検に告発。男性は(起訴とは別に2005年〜2009年の払戻金に対し)、所得税約6億8000万円、無申告加算税約1億3000万円の他、地方税や延滞税を合わせ、実際の儲けを大きく上回る10億円以上もの税金を支払うことを求められています。
裁判の争点となっているのは、“馬券で得た所得の種類”と“経費として算入できる範囲”。
所得の種類について、検察側は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない」“一時所得”と主張。
一方の弁護側は、「他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得で、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当する」“雑所得”と主張しています。
また、“必要経費”について、検察側は、「収入を生じた行為のために直接要した金額」と定めた所得税法を根拠に、「競馬の勝ち負けは1レースごと。外れ馬券は儲けの原資に当たらず、経費ではない」と判断。「外れ馬券が経費にならない可能性を認識していたのに、本来納税すべきものを新たな馬券購入に充てたのは自業自得だ」と指摘しました。
それに対し、弁護側は、「外れ馬券も所得を生み出す原資。配当金は偶然に得られた一時所得ではない。外れ馬券も経費に算入すべきだ」と主張し、「一生かかっても払いきれないほどの課税は違法性がある」と無罪を訴えています。また弁護側は、国税当局の課税処分の取り消しを求め、大阪地裁に民事訴訟を提訴しました。
男性の当時の年収は約800万円。課税処分を受けた後に約5500万円を、その後さらに約1300万円を既に納税済み。現在も妻子を抱えながら、手取り約30万円の月給の中から毎月約8万円の納税を続けているといいます。
斎藤修氏(左)と須田鷹雄氏(右)
これまでほとんど明るみになることがなかった、馬券に絡む税金問題。全競馬ファンにとって、決して他人事ではありません。競馬界最大の祭典・日本ダービー目前の日に、どんな判決が下されるのか。注目が集まります。
そこで、5月の「おじゃ馬します!」では、3名の論客を迎え、『競馬有識者緊急座談会』を開催。
メンバーは、東京大学卒の頭脳がフル回転、「netkeiba.com」でもお馴染み、競馬評論家の須田鷹雄氏。同じく東京大学卒業で、競馬界に対し鋭い論評を展開する日本経済新聞社の野元賢一記者。
赤見千尋さん(左)と野元賢一記者(右)
そして、中央競馬のみならず地方競馬、世界の競馬にも精通する、地方競馬情報誌「ハロン」元編集長の斎藤修氏。司会は赤見千尋さんでお届けします。
競馬産業全体を揺るがしかねない注目の話題に、豪華メンバーで鋭く切り込む、他では決して聞くことのできない白熱のシンポジウム。本編の公開は、次週5/13(月)からです。ご期待ください!