クラシック三冠のミスターシービー、ダービー馬ウィナーズサークル、皐月賞・マイルCS勝ちのジェニュインなど、数々の名馬を送り出してきた名門・松山康久厩舎。来年2月にその長い歴史に終止符が打たれるが、ここに来るまで意外にも牝馬のGI勝利には縁がなかった。その松山に、またとないチャンスが到来した。洛陽S、阪神牝馬Sを2連勝と勢いに乗るサウンドオブハートとともに、ヴィクトリアマイルで悲願の牝馬GI制覇に挑む今の心境や、サウンドオブハートの魅力、調教師生活の思い出などを語ってもらった。(取材・文:佐々木祥恵)
ヴィクトリアMに挑む松山康久調教師
松山の前に曳かれてきた当歳の牝馬には、気品があった。
「これだけの器量と体つきの馬は滅多にいないのではないかと思うくらい、品があってきれいな馬だった。顔は美人だし、首さしも良くてね。一見、線は細く見えるけど、余計な肉がついていなくて、骨も太い。歩かせると大きく見せていた。内蔵されているエンジンも大きい感じがしたね」
その牝馬は、育成時代も素質の片鱗を見せる。
「牧場でも良いパフォーマンスをしていて、乗った感じがずば抜けていたのじゃないかな」
育成は順調に進み、美浦に入厩してきたその馬には、サウンドオブハートという美しい響きの名前が与えられた。
「こちらに来たら、あっという間に仕上がって。ゲート試験も1回で合格したし