ニューマーケットで3冠初戦のG1二千ギニー(芝8F)が行われたのをはじめ、各国各地で熱戦が展開された先週末を経て、かなり大きな変動が見られたのが、6月1日にエプソムで行われる3冠2戦目のG1英ダービー(芝12F10y)へ向けたピクチャーである。
まずは何と言っても、ブックメーカー各社が2.625倍~2.75倍のオッズを掲げて一斉に本命の座に就けることになったのが、二千ギニーを快勝したドーンアプローチ(牡3、父ニューアプローチ)だ。好位に付け、残り2Fから仕掛けた際には一瞬だけ、同じく無敗でこのレースに挑んだ2番人気のトロナード(牡3、父ハイチャパラル)との一騎討ちになるか?!、という局面があったのだが、そこから先はドーンアプローチの強さのみが際立つ競馬で5馬身差の快勝。他馬とはクラスが違うところを見せ付けることになった。
レース後、管理するJ・ボルジャー調教師が、「馬主のシェイク・モハメドと相談しなくてはならないし、何よりレース後の馬の状態を見ないことには」と前置きしながらも、ダービーに挑むことにためらいは無い」とコメント。ゴドルフィンの服色を背負った馬によるダービー優勝はこれまで1度もないだけに、シェイク・モハメドもおそらくは「ダービーへ」と言うはずで、情勢は一気に「ドーンアプローチ、ダービー参戦!」に傾くことになった。
能力的に見て同世代の中では一歩抜きん出ているだけに、2冠制覇がなるかどうかは、ドーンアプローチが距離延長に対応出来るかどうかに掛かっていると言えそうだ。
気性的に折り合い自在の馬だけに、問題ないはずと見る関係者は多い。
父ニューアプローチはダービー馬で、その父はガリレオだから、血統的にもトップラインはむしろ距離延長歓迎だ。
その一方で、いささか不安があるのが母方の血統である。
母の父は北米で6~7Fの重賞を3勝しているフォーントリックだ。その産駒からも、2歳チャンピオンのファイヴァリットトリックやフォーンチャッター、ドバイゴールデンシャヒーン(d1200m)勝ち馬コーラーワンが出ており、こちらは完全に短距離血統である。母の兄にも、欧州でデビューし2歳G2フューチュリティS(芝7F)2着などの成績を残した後、北米に移籍しG1ウッドバインマイル(芝8F)で3着になっているガランタスがいるから、母方はどう見てもマイル以下を得意としている血脈である。
距離が問題なければ楽勝もありそうだが、思わぬ大敗を喫する可能性もありそうだ。
一方、二千ギニー翌々日の6日(月曜日)に陣営から、「ダービー不参戦」表明があったのは、2番人気で4着に敗れたトロナードだ。 父ハイチャパラルが、英愛ダービー連覇に加え、BCターフ2連覇を成し遂げている馬だけに、アンティポストマーケットでは、「二千ギニーよりもダービー向き」と言われて来たのがトロナードだ。ところが、残り1Fで脚が止まった二千ギニーにおけるレース振りを見て、管理するリチャード・ハノン師と子息でアシスタントのハノン・ジュニア氏は、ダービーを回避する方向に軌道修正。今後はロイヤルアスコットのG1セントジェームスパレスS(芝8F)かG3ジャージーS(芝7F)を目標に調整されることになった。
トロナード同様、ここへ来てブックメーカー各社がダービー前売りリストから外すことになったのが、シーズンオフを通じてダービー本命の座にあったキングスバーンズ(牡3、父ガリレオ)である。
G1レイシングポストトロフィー(芝8F)を含めて2戦2勝で2歳シーズンを終えた同馬。順調に冬を越していると伝えられていたのだが、調整のピッチが上がり始めた3月半ばに、調教中に落鉄。蹄が感染症にかかり、調整に狂いが生じたのである。
当初はクラシック参戦予定に変わりはないと言われていたのだが、二千ギニーを回避したのに続き、一連のダービー前哨戦も見送ることになったため、ダービーピクチャーから消えることになったものだ。
大駒を欠くことになったA・オブライエン厩舎が、代って「ダービー候補」と期待をかけているのが、バトルオヴマレンゴ(牡3、父ガリレオ)である。
2歳時の戦績、4戦3勝。昨年9月に、愛国における出世レースと言われるG2ベレスフォードS(芝8F)を制して重賞初制覇を果し、2歳シーズンを締めくくった馬である。
今季初戦となった、4月14日にレパーズタウンで行われたG3バリーサックスS(芝10F)も白星で通過。今週日曜日(5月11日)にレパーズタウンで行われるG2愛ダービートライアル(芝10F)で、本番前最後の試走を行うことになっている。現在のところ、ブックメーカー各社は同馬に5倍~6.5倍のオッズを掲げている(2番人気)が、G2愛ダービートライアルの内容次第では、ドーンアプローチに迫るところまでオッズが下がる可能性がある。
先週末、ダービー前売り戦線の上位に急浮上してきたのが、4日にフランスのサンクルーで行われたG2グレフュール賞(芝2000m)を制したオコヴァンゴー(牡3、父モンスン)だ。
昨年11月にサンクルーのメイドン(芝1600m)でデビュー勝ちした同馬。今季初戦となった、3月31日にサンクルーで行われたLRフランソワマテ賞(芝2100m)も白星で通過して臨んだのが、G2グレフュール賞だった。
スタートから先手をとり、馬場を考慮すると比較的速いペースで馬群を引っ張り、そのまま逃げ切って重賞初挑戦を果したオコヴァンゴー。管理するのがフランスの伯楽アンドレ・ファーブルで、勝ったのがG2グレフュール賞となると、2011年の英ダービー馬プルモワと同じパターンで、そのファーブル師は「相手関係を含め、様々なファクターをじっくり考えたい」としながらも、英ダービー参戦を視野に入れていることを明らかにした。
これを受け、ブックメーカー各社は前売りで同馬に11倍~15倍のオッズを提示。4~5番人気に評価することになった。
これから各地で続々で行われるダービーのプレップレースに、皆様もぜひご注目いただきたい。