◆川崎マイラーズ展望
(5月22日 川崎 サラ3歳以上 別定 南関東SIII 1600m)
「川崎マイラーズ」は、平成21年に新設されたSIII。今年で第5回目を迎える。正直さして新味のないマイル重賞だが、斤量差の開かない別定戦(A1=57~59キロ・牝馬2キロ減)で、それなりの顔ぶれが例年そろう。多くの場合、「実績か勢いか」がテーマになり、例えば21年ノースダンデー(4歳)→マンオブパーサー(6歳)、22年イーグルショウ(6歳)→サプライズゲスト(4歳)など、新旧のワンツーという結果が目立っている。
そして今年はもう一つ、微妙かつ迷わされる問題が出てきた。前走南関牝馬同士の「しらさぎ賞」でよもやの大敗(9着)を喫したクラーベセクレタが中2週で出走すること。当時単勝1.2倍、休み明け(5か月ぶり)以外に敗因が浮かばず、そう考えると今回一変があるかどうか、予想上も馬券上も簡単には決めきれない。川島正行厩舎、おおむね使い分けてきたエミーズパラダイスとの2頭出しにも、楽観できないムードを感じる。戸崎騎手からバトンを受けた今野J、2度目のコンビ。あらゆる意味でプレッシャーの大きい戦いだろう。
(1)…波乱含み。1人気=1、9、1、8着、2人気=4、1、14、4着、3人気=8、3、2、1着。人気馬同士の決着は1度もなく、昨年は3→7人気、馬複12550円、馬単20250円の波乱だった。
(2)…船橋優勢。船橋=3勝、2着3回と大きくリード。次いで大井=1勝、2着1回、3着2回。川崎、浦和は3着が1頭ずつとふるわない。JRAからの転入組が強く、1勝、2着3回、3着2回。
(3)…6歳馬。どちらかといえば熟年組に分があり、6歳=3勝、2着1回、3着2回。牝馬は出走例が少ないが、23年ザッハーマイン優勝、22年ユキチャン9着(1人気)と両極端。
(4)…好位差し。逃げ=1、先行=3、差し=4、追込=0。連対8頭は、すべて4角を5番手以内で回っていた。マイル戦の実績は不可欠で、連対8頭中、5頭までが1600m=5勝以上。
※データ推奨馬
◎アイディンパワー…JRA4勝、現在船橋・佐藤賢二厩舎の7歳馬。転入後3戦、いずれも交流Gに挑戦し7、7、7着だが、終いは合格点の脚を使っている。本来まくり気味に動けるタイプ。鞍上・的場騎手は、このレース3度騎乗して3、3、1着。
☆ ☆
◎ピエールタイガー 58真島
○クラーベセクレタ 57今野
▲カキツバタロイヤル 57森
△イーグルショウ 57赤岡
△スマートジョーカー 55御神本
△エミーズパラダイス 57石崎駿
△アイディンパワー 57的場文
エナージバイオ 57山崎誠
アーリーロブスト 59川島
ピエールタイガーを改めて狙う。川崎1600m6戦5勝、1分38秒台を3度マーク。ストレートな先行型で展開しだいの面はあるが、いったん自分の流れに持ち込めば、最後競り合いになって粘り強い。コンサートボーイ(帝王賞馬)の甥。体型、気性などよく似た雰囲気を感じさせ、本質的に晩成タイプのイメージだろう。前走GI(かしわ記念11着)は一つ経験と納得する。今回は完全燃焼が見込める舞台だ。
クラーベセクレタは前述通り半信半疑。交流Gを含む重賞9勝、川崎コース4戦して連対10割。ただ昨秋「レディスプレリュード」6着あたりを境に緩やかな下降線(主に精神面)の懸念もあり、人気ほどの信頼度は今回疑問と考えた。むしろ昨年覇者カキツバタロイヤルが馬券的には妙味か。距離万能、常に自らの能力、持ち時計通り走るレース巧者。森泰斗Jとのコンビは、過去GII「ダイオライト記念」2着がある。同様に鞍上魅力は赤岡J・イーグルショウ。馬自身も22年優勝、今季9歳ながら近況からは大きな衰えも感じない。上昇馬(7連勝中)スマートジョーカーは重賞初挑戦で試金石。切れ味互角だが、オープンの流れに道中どう対応するか。逆にアイディンパワーは強敵にもまれてきたキャリアが魅力。エミーズパラダイスは厳しい展開になってモロさが気になる。
◆大井記念回顧
(5月15日 大井 サラ4歳以上 別定 南関東SII 2600m良)
○(1)フォーティファイド 2分48秒1
(2)ビービーガザリアス 10
△(3)テラザクラウド 頭
◎(4)トーセンルーチェ 鼻
(5)クリーン 6
…………………
△(6)アドマイヤシャトル
△(7)ピサノエミレーツ
▲(10)アスカリーブル
△(15)スマートインパルス
単230円 馬複10940円 馬単14220円 3連複21430円 3連単114070円
フォーティファイドが圧勝した。道中スムーズな4~5番手。2周目向正面から馬なりのままポジションを上げ、直線馬場の真ん中を楽々と突き抜けた。なるほど超のつくスロー(1000m通過65秒0)だが、それでも自身上がり3F37秒0は特筆でき、事実ゴールでは後続を10馬身ちぎっている。「早め早めの競馬はイメージ通り。(自分が乗った)前々走より手応えがよかったし、最後まで余力十分。もっと上がめざせる馬です」(御神本騎手)。その前々走とは、トーセンルーチェに鼻差敗れた2月「金盃」。ひとまず今日の結果は、当時と較べ勢いと状態、見事に逆転したものと納得する。
フォーティファイドはJRA4勝、南関東3勝。昨春7歳の転入ながらパワー優先のダートでもう一度開花した。父フォーティナイナーは短~マイル型の印象(代表産駒・ユートピア、ティアップワイルド)だが、本馬の場合、やはり母ファストフレンド(帝王賞・東京大賞典勝ち)の影響が強いだろう。けっして俊敏ではないものの、いったんエンジンかかっていい脚を長く使う。「強い勝ち方をしてくれた。馬にも乗り役さんにも感謝している。反動がないようなら帝王賞を使ってみたい」(藤田輝信調教師)。同師は今回重賞初制覇ながら、現在大井リーディング第2位、連対率3割強。とつとつとして、しかし柔和な笑顔で夢を語った。厩舎全体、さらにブレイクする予感がある。
接戦の2着争い。ビービーガザリアスは52キロ・達城Jの思い切りが功を奏した。スローを読んで徹底逃げ。元より手堅い末脚が身上で、この状況を作れれば容易にはバテない。テラザクラウドも正攻法(外枠から捲り進出)の3着だけにひとまず合格。ただ同馬の場合、過去17か月の故障ブランクがあり、今回全力投球。プラスアルファとなると期待しづらい。トーセンルーチェは、いきなり乗り替わった(坂井J・落馬負傷)本橋騎手。結果仕掛け遅れは事実だが、きわどい4着なら馬と鞍上、最低限の仕事をしたと考えたい。ともあれ同馬は昨年と同じステップを歩みながら現実に不発だった。フリオーソの半弟。狙いすました2600mの取りこぼしだけにやはり痛い。