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「中央で乗るか、ローカルで乗るか」秋山騎手ご指名対談〜国分優作騎手編(3)

  • 2013年05月22日(水) 18時00分
これまで、“中央で乗るか、ローカルで乗るか”の悩みがテーマの中心となってきたご指名対談。しかしその点、優作騎手には迷いがないようです。そんな優作騎手を、素直に『すごいよね』と評価する秋山騎手。今回は、秋山騎手が『つらかった』と振り返る、ローカル時代の苦悩を明かします。

■毎回モニターでGIを観て、寂しい気持ちになって…

──これまでご指名対談では、若手ジョッキーならではといいますか、ローカルを中心に乗るか、中央にシフトするかがテーマの中心になることが多かったんですが、その点で、優作くんは迷いがありますか?

優作 僕は逆に、今ローカルに行っても騎乗馬が集まらないと思うので、これからもずっと中央を中心に乗るつもりです。

秋山 そういえばお兄ちゃん、全然ローカルに行かないよね。なんで? 嫌なの?

優作 嫌ではないです。ローカルはローカルで、もうメンバーが固まっているじゃないですか。そこに今から行くこともないかなと思って。中央でも依頼してくださる調教師の先生がいらっしゃいますし、あっちこっち動いていると「お前は一体、どこにいるんだ」っていうことになってしまいますから。そこはもう、中央で乗せていただけるのであれば、それがベストかなと思って割り切っています。

迷いがないってすごいね。

迷いがないってすごいね。

 秋山 迷いがないってすごいね。

優作 もちろん、普段中央で乗せていただいている厩舎に「今週はローカルに行ってくれ」と言われれば、それは迷わず行きますけどね。

秋山 言われてみれば、若手で中央のレギュラーといえば、お兄ちゃんと恭介くらいだよね。関係者にも“ふたりは中央にいる”っていうイメージがついているから、乗り馬も集まるんだろうね。

──みなさん、ローカルではある程度勝ち星が計算できる、中央では騎乗馬が集まるかさえ不安だけど、やっぱり勉強になる…という狭間で悩んでいるようでしたが。

優作 ああ、わかります。でも、僕の場合、どちらに行っても勝ち星はあまり変わりがないような…。だったら、中央の厳しい環境にいたほうが、将来につながるかなと思うんです。

秋山 僕はそれこそお兄ちゃんくらいのころは、めちゃめちゃローカルに行ってたからなぁ。年明けの小倉に始まり、中京、新潟、福島も行ったなぁ。夏は小倉で、秋はまた福島、中京と。

優作 途中で中央にシフトしたんですか?

秋山 そうそう。完全に中央に移したのは、ここ5年くらいの話だよ。

優作 きっかけはなんだったんですか?

秋山 あるときから“俺、なんで騎手になったんだろう?”って思い始めて。GIに乗りたい、GIを勝ちたいと思って騎手になったのに、なんで俺はずっとローカルで乗ってるんだろうって。当時は、GIを毎回、ローカルの競馬場のモニターで観てたんだよ。そんなことを繰り返していたら、“俺の目標はなんだろう…”って気持ちになってね。ローカルでいくつ勝とうが、俺は目の前のモニターに映るGIを勝ちたくてジョッキーになったのに、ここで何してるんだろう…って。ずーっと思ってた。

優作 そんな時期があったんですね。

秋山 あったよ。だから、お兄ちゃんの今の姿勢はすごくいいと思うよ。だからといって、ローカルに行くのがダメだとは思わないけどね。「俺は行かないんだ」っていう姿勢はすごくいいと思う。

優作 中央で生き残っていく、勝ち上がっていくには、なにが一番大切ですか?

秋山 なんだろうね。それは俺にもわからない。俺はとにかく、上位のジョッキーのすべてを“ガン見”してるけどね(笑)。

優作 あ、僕もゲートのなかとかでは、つねに隣をジーッと見たりしてます! 

秋山 とにかく今の姿勢を貫いたほうがいいよ。俺は逆に、ずっとローカルにいたから、行かなくなったときに「なんで行かへんねん」って言われたもん。どっちつかずになるのが一番良くないからね。

優作 中央にシフトしたばかりのころは、やっぱり苦労されたんですか?

秋山 ん〜、それほど苦労した印象はないなぁ。そもそもいきなり乗れるとは思ってなかったし、何年かかろうが、中央で頑張るっていう覚悟があったからね。乗れなくても、それを苦労とは思わなかった。

──秋山さんにとっての5年目といえば、勝ち星がグーンと伸びて、ルスナイクリスティでファルコンSを勝った年です。キョウエイマーチとはすでに出会ってましたね。

秋山 ルスナイクリスティかぁ。もう子供が走ってますね。キョウエイマーチなんて、もう孫が走ってる(笑)。さっきも言ったように、当時はずーっとローカルを回っていて、早く向こう(中央)で乗りたいって、毎日そればかり考えてましたね。

優作 そもそも、なぜローカルを中心にしたんですか?

秋山 だって、ローカルに行かなきゃ乗る馬がいなかったんだもん。当時は“今、ローカルで乗ってるのは、いつか中央に行くための手段だ”って自分に言い聞かせてた。だから、当時を振り返ると、とにかくかっこよく乗れるようになりたいと思っていたのと、つねに中央で乗ってる人への憧れが強かったことしか印象にないな。だから、お兄ちゃんが今、「ローカルには行きません」っていうのは、本当にすごいと思う。

優作 ありがとうございます。でも、もっと数乗りたいですね。


できればフル参戦したいんです。

できればフル参戦したいんです。

 秋山 乗ってるやろ!

優作 ん〜、1日10鞍くらいは乗りたいと思って…。

秋山 10鞍くらいって、障害がある日なら、あと1つじゃん(笑)。

優作 できればフル参戦したいんです。技術を磨きたいのはもちろんですが、若いうちに乗っておかないと、いずれ体力がついてこなくなるときがくると思うので。

秋山 エネルギーが有り余ってるんだね。

優作 そうかもしれません。1日が終わったあとに、今日は全然疲れなかったな、と思う日がけっこうあるので。最終レースが終わってから、あと10鞍くらい乗りたいなと思ったり。

秋山 若さってすごい(笑)。

【次回のキシュトーーク! は?】
秋山騎手がローブティサージュで制した阪神ジュベナイルFで、念願のGI初騎乗をはたした優作騎手。「もっともっと上を目指したい」という欲求が改めて芽生えたそうですが、そのために“自分に足りないもの”を痛感したそうです。次回は、優作騎手の自分自身に対する不満について、秋山騎手がじっくりと聞き出します。

元祖「キシュトーーク」のレギュラー陣、国分恭介、国分優作、松山弘平、川須栄彦、高倉稜を中心に、栗東・美浦・地方からも幅広く、これからの競馬界を担うU25の若手ジョッキーたちが登場します!

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