盛況に終わった『JRHAセレクトセール』。第6回目の開催を迎えて、益々国際的なマーケットとなってきたようだ。
その最高のサンプルが、上場番号115番の牝馬だった。
父シングスピールというこの牝馬の売り主は、英国のウォーターシップダウン・スタッド。『オペラ座の怪人』をはじめとして数々のヒットミュージカルを作曲。その功績によって“サー”の称号を授かったアンドリュー・ロイド・ウェバー氏が持つ生産牧場である。
オーナーブリーダーとして競馬に参画するかたわら、生産馬の一部をせり市場に上場。コマーシャルブリーダーとしても成功しているウォーターシップダウン・スタッド。今からちょうど10年前の1993年、前年に生まれた父ヌレイエフ、母シルヴァーレインというイヤリングをアメリカのキーンランドセールに上場したところ、購買したのは日本人だった。
後の、ブラックホークである。
すなわち、日本におけるG1・2勝馬の母を繁殖として持つことになったウォーターシップダウン・スタッドは、更に日本で商売をすることを考えた。具体的には、日本で人気の種牡馬をシルヴァーレインに配合し、その上でシルヴァーレインを日本に輸送して日本で出産させ、日本産馬として生まれた当歳馬を日本で売ることを考えたのだ。
上場番号115番の牝馬は、そんな経緯で今年のセレクトセールに上場されることになった牝馬なのである。ジャパンCの勝馬である上に、父としてローエングリンらを輩出。日本での評価の高いシングスピールを配合されてシルヴァーレインが産んだ牝馬は、8000万円というこの日の牝馬最高価格で購買されたのだった。
「考えていた以上の値段になりました」と、満面の笑みで答えてくれたのは、このセールのためにわざわざ英国から日本へやってきた、ウォーターシップダウン・スタッドの場長サイモン・マーシュ氏。「おそらくは、市場で取り引きされたシングスピールの牝馬としては、歴代で最高の価格だと思います。オーナーのアンドリュー・ロイド・ウェバー氏も大ハッピーです。」
今年の種付けシーズンを日本で過ごしたシルヴァーレインは、現在フレンチデピュティを受胎中。これも言わずと知れた日本の人気種牡馬で、来年出来る子を売ることを考えたら、日本で売るのが一番良いのは明白だ。という言うことでウォーターシップダウン・スタッドでは、シルヴァーレインの来年の産駒も、セレクトセールで上場する意向を固めているという。
欧州の主要なマーケットブリーダーの戦略に恒常的に加わることになったセレクトセールは、もはやキーンランドやタタソールズのメジャーな市場と同等の位置付けにあるといってよいだろう。