◆さきたま杯展望
(5月29日 浦和 サラ4歳以上 別定 JpnII 1400m)
「さきたま杯」は、平成9年、浦和2つ目の交流Gとして新設(その前年に浦和記念・G移行)。当初GIII(9~21年)、22年からGIIへグレードが1つ昇った。確かに年を重ねるごと、レースレベルを上げてきた重賞といえそうで、例えば黎明期の優勝馬はフジノマッケンオー、テセウスフリーゼ、セタノキング…いかにも小回り1400m向き、軽いオープン馬という面々だったが、15年ノボトゥルーあたりからムードが変わり、以後ニホンピロサート、リミットレスビット、スマートファルコン、堂々GI級に届く顔ぶれが“速さ”と“強さ”をみせている。
ただやはり直線わずか200mの超小回り。多分に特殊な舞台であることは否めず、その証拠がリピーターの活躍だろう。レイズスズラン(12・14年)、スマートファルコン(21・22年)がそれぞれ2勝。メイショウバトラー(19・20年)、ナイキマドリード(23・24年)も2年続けて連対(1、2着)した。スピード能力もさることながら、浦和コース1400mにフィーリングが合うかどうかがまず前提。ちなみに今年は出走12頭中、4頭がさきたま杯リピーター。人気どころではティアップワイルドが浦和初体験になる。
(1)…総じて堅め。1人気[5-2-0-3]、2人気[4-2-1-3]。言い換えれば過去10年中、9年まで1~2人気が勝っている。小波乱といえる昨年も1→5人気の決着で馬複1390円。
(2)…JRA優勢。JRA=8勝、2着6回、3着7回と断然リード。大きく離れて船橋=1勝、2着1回、川崎=1勝、2着1回。他地区では19~20年名古屋キングスゾーンが2、3着と健闘した。
(3)…性齢広範。4~9歳まで連対例があるが、中では7歳=3勝、3着2回が目立つ。次いで5~6歳馬=2勝、2着2回。牝馬も13年ゲイリーイグリット、19年メイショウバトラーが優勝している。
(4)…差し十分。逃げ=4、先行=6、差し=9、追込=1。目標になる逃げ馬はスマートファルコン級の能力が要求され、好~中位からの差しが主流。ジョッキーでは岩田騎手が7度の騎乗で[4-0-1-2]。
※データ推奨馬
◎ナイキマドリード…船橋所属7歳馬。前述通りリピーターが強い重賞で、同馬は一昨年優勝、昨年2着だから当然今年も脈がある。流れに応じ先行差し自在。浦和コース自体の適性が[5-1-0-1]とズバ抜けて高い。
☆ ☆
◎セイクリムズン 57岩田
○ナイキマドリード 57川島
▲ダイショウジェット 56柴山
△ティアップワイルド 56石橋脩
△テスタマッタ 58戸崎
△サイモンロード 56丸野
△スーニ 58町田
コスモワッチミー 56赤岡
ハルサンサン 54石崎駿
マニエリスム 54御神本
セイクリムズンの連覇とみる。昨年8馬身差独走劇。自然流の先行から直線二段加速というレースぶりで、1分25秒8の時計も、21~22年スマートファルコン(26秒4・26秒2)を現実に大きく凌ぐ。通算15勝、内11勝を1400mであげた距離適性。とりわけ地方Gには絶対の自信があり、この条件、名古屋、高知、浦和、常に完璧な勝利を収めてきた。傑出したスピードはもちろん、あらゆる環境、展開に動じない芯の強さ。新境地に挑んだ前走「かしわ記念」は力関係以前にスタート不利と納得したい。元より心身とも逞しく、いったん流れに乗ってしまえば完全燃焼。主戦岩田J[6-2-3-1]。この中間、坂路で意欲的な追い切りをこなしてきた。
相手選び。この人気ならナイキマドリードに妙味を感じる。前述通り浦和1400m~1500m[5-1-0-1]。一昨年はスーニ、ダイショウジェット、さらにラヴェリータを完封した優勝で、今回セイクリムズンを別格としても、No.2の評価は十分可能だ。のびのび走れる外め9番枠も理想的。初コースになるティアップワイルド、10歳を迎えたダイショウジェットと比較して、有利な材料は多いだろう。テスタマッタはGI・2勝、戸崎Jが2度目の騎乗。ただ同馬の場合、本質地方小回り向きかどうかに疑問があり、実際前走かしわ記念も道中終始カカリ気味、さしてほめられない4着とみえた。それなら前走名古屋「かきつばた記念」3着、渾身の逃げを打ったサイモンロード。JRA1勝ながらシンボリクリスエス×トニービンだけに上昇余地はある。スーニは今回川島正行厩舎トレードで再スタート。言わすもがなダート短距離王だが、このレース過去2、5、3着。イメージほど成績があがっていない。
◆川崎マイラーズ回顧
(5月22日 川崎 サラ3歳以上 別定 南関東SIII 1600m良)
△(1)スマートジョーカー 1分40秒0
◎(2)ピエールタイガー 21/2
○(3)クラーベセクレタ 11/2
▲(4)カキツバタロイヤル 21/2
△(5)アイディンパワー 11/2
…………
△(6)エミーズパラダイス
(7)エナージバイオ
△(8)イーグルショウ
(11)トーホウオルビス
単230円 馬複550円 馬単1110円 3連複820円 3連単3240円
スマートジョーカーが豪快に差し切った。道中スムーズな中団追走。3~4コーナー自然流に外へ持ち出し、直線先に抜け出したピエールタイガーを並ぶところなく抜き去った。「初めての重賞(オープン)なのに堂々と落ち着いて走っていた。想像していた以上の強さ。まだまだよくなってくると思う」(御神本騎手)。同馬1番人気は正直なところ意外だったが終わってみればむしろ当然という勝ちっぷりのレース内容は、ほぼ手放しで賞讃できる。1600m=1分40秒0を余裕残し。前日A2下セイントメモリー40秒2、同日B1テラザホープ42秒1だから、数字上も十分重賞レベルといえるだろう。
スマートジョーカーは、通算[16-2-4-3]、父サウスヴィグラス、母チアリーダー(その父アサティス)の6歳牡馬。全妹に桜花賞馬コテキタイなど、元より期待値が相当高い。ただ反面、脚部不安、夏負けする体質、ウィークポイントもいくつか抱え、結果出世が遅れていた。「苦労した馬だから(今日の勝利は)よけいに嬉しい。鞍上が上手に乗ってリラックスした競馬ができた。この相手に2馬身半差。もちろんこれから…と思っています」(川島正一調教師)。次走6月19日SIII「京成盃グランドマイラーズ=船橋1600m」と明言された。レースの格はともかく、目下8連勝という事実がある。次をいい形でクリアできれば、さらにステップアップ(交流G)も夢ではない。
2着ピエールタイガー。逃げたトーホウオルビスを3コーナーから捲った展開は理想的で、自身絶好調ならそのまま押し切れた(少なくとも勝ち馬と接戦)イメージがある。心身両面で振幅(波)の大きいタイプということか。クラーベセクレタも今回好スタートからまったく不利のない競馬。それでいて勝ち馬の勢いについていけず、ゴール際は自身あきらめてしまったような結果にみえた。言わずもがな全国レベルの女傑級。むろんもうひと花咲いてほしいが、牝馬の危うさも同時に感じる。カキツバタロイヤルも、思惑通りの中団キープながら直線ジリジリとしか伸びなかった。切れと闘志、やや衰えがあるのかどうか。次走展望となると正直暗い。アイディンパワーも今日の結果からは能力、距離適性など依然手探り。好位からジリ貧のエミーズパラダイスはスピード競馬への対応に疑問が出てきた。