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「ジョッキーとしてのポリシーとは?」秋山騎手ご指名対談〜国分優作騎手編(4)

  • 2013年05月29日(水) 18時00分
秋山騎手をゲストに迎えたご指名対談もいよいよ最終回。暮れの阪神ジュベナイルFでGI初騎乗をはたし、騎乗数も多い優作騎手ですが、イメージ通りの騎乗がなかなかできないことをもどかしく感じているようです。そんな優作騎手が秋山騎手から贈られた忘れられない言葉とは!? 秋山騎手が、ジョッキーとしてのポリシーを語ります。

■葛藤がなくなったら、ジョッキーとしてダメになる

──秋山さんがローブティサージュで勝った昨年の阪神ジュベナイルFで、優作くんはGI初騎乗をはたしました(フィールドメジャー11着)。初めてのGIはいかがでしたか?

優作 いつものレースと変わらずに臨めました。ただやっぱり、“ここでちょっとでも目立てれば!”と、気持ちの面で気合いが入りましたね。乗せていただいて本当にありがたかったです。

ここでちょっとでも目立てれば!

ここでちょっとでも目立てれば!

──GIはもちろん、“いつも重賞に乗っている騎手”というイメージは大事ですよね。

秋山 すごく大事です。重賞はともかく、僕のなかでは“国分ブラザーズはいつもいっぱい乗ってるな”っていうイメージだけどな。

優作 確かに、たくさん乗せていただいてると思います。でも、自分の技術のなさを痛感するばかりです…。

秋山 謙虚やな(笑)。

優作 普段から木馬に乗ってイメージしながらトレーニングして、目標を持って乗っているつもりなんですけど、終わってみれば全然イメージ通りに乗れていないことがほとんどで。イメージと合致するような騎乗ができるようになりたいです。

──自分の理想と実際の技術の狭間で、葛藤があるということですね。

優作 そうですね。それは今に始まったことではありませんけど。

秋山 ジョッキーでいる限り、一生その葛藤は続くよ。そこに葛藤がなくなったら、ジョッキーとしてダメになると思う。

──今の優作くんを見て、もっとこうしたほうがいいんじゃないかって思うところはありますか?

秋山 とくにないですけどね。一緒に乗っていて思うのは、お兄ちゃんはすごく丁寧。たとえばゲートに入る前とか、ゴールしてから帰ってくるまでとかね。後輩のなかには雑な子もいるけど、いつもすごく丁寧に乗ってると思う。馬が走ってくれているわけだから、それは大事なことだと思うよ。俺の師匠は、跨ってから下りるまで、すべてを見てたからね。

優作 ありがとうございます。最近、競馬が終わって戻ってくるとき、地下馬道とかでなるべくキャンターをしたくないんですよ。下は硬いし、脚元も疲れているでしょうしね。だから僕、戻ってくるのが一番遅いんですよ。そうすると、大抵「どうしたんだ!」って歩様を心配されるんですけど、単純にゆっくり戻ってきているだけで。

秋山 うん、大事なことだと思う。俺も若いころは、バーッと走らせてパーッと戻ってきたりしてたけど、キャリアを重ねるうちに、これは違うなと。レースで精一杯走っているわけだから、戻ってくるときまで走らせる必要はないし、ゆっくり戻ってきたところで誰も困らないからね。

──そういう心掛けが、馬の故障を防いでいるかもしれませんね。

秋山 そうだといいですね、

優作 僕、秋山さんに言われて印象に残っている言葉があるんです。レース中に馬が故障したとき、「あそこでお前がケガをしなかったのは、普段から馬を大事にしているからだ」って。

秋山 そんなこと言ったっけ(笑)?

優作 はい。3週間くらい連続で、レース中に故障して止めたことがあるんですけど、僕は無事だったんです。そのときも秋山さんが「いつも馬を大事にしているから、馬に助けてもらえるんだよ」って言ってくださって。

──そういう細かいところを見ていてくれる先輩がいるというのはうれしいですよね。

優作 そうなんです。本当にうれしかった。秋山さん以外、そんなこと言ってくれる人はいませんから。

全能力を引き出せるようにエスコートする

全能力を引き出せるようにエスコートする

秋山 馬は命を懸けて走ってくれているわけだから、大切にするのは当然だよ。大切にしながら、競馬では全能力を引き出せるようにエスコートする。お兄ちゃんはそれがしっかりできていると思うよ。

──最近はとくに、人気のない馬をバンバン上位に持ってきていますよね。

優作 2着が多いんです。2着じゃダメなんです…。その1着と2着の差が技術なんだと思います。せっかく上位に持ってこれたのに、詰めが甘いのは何かが足りないっていうことだと。僕としては、あまり人気は気にして乗っていないんですが、人気のない馬で2着したりすると担当の方が喜んでくださるので、そういう意味では良かったなって思うんですけどね。

秋山 そういうことの積み重ねが大事だと思うよ。まともに走ったら足りない馬を上位に持ってくるのは、大変なことだからね。

優作 そうなんですけどね…。まぁあんまり考えすぎるのも良くないなって最近は思うようにしてるんです。考えすぎたところで、今の自分の技術が伴わないと、噛み合わないまま終わってしまいますから。それよりも、毎週毎週少しずつでも技術や体力が向上するように、地道に頑張っていこうかなと。

秋山 そうだよ。まだ5年目でしょ? これから先のほうがずっとずっと長いわけだからね。技術の向上って、なかなか自分で実感するのは難しいことだけど、いろんな馬に乗せてもらっているうちに、競馬で同じ場面になったときの対処方法の引き出しが増えていくものだから。

──秋山さんは、ベッラレイアのオークスでの敗戦を機に、ご自分でも変わったっておっしゃってましたよね。やはり馬との出会いって大きいんですね。

秋山 GIのハナ差負けを経験すれば、誰だって“もっと上を目指してやる!”っていう気持ちになると思いますよ。いつもは何も言わない師匠が、さすがにあのときは「お前、あのくらいの差はなんとかならへんかったのか」って言いましたもん。たしかにあの馬との出会いは大きかったですね。

優作 そういう馬に出会ったときに、自分がその馬にふさわしいジョッキーになっていないといけないということですよね。そうじゃないと、出会ったとしても通り過ぎてしまう可能性がありますからね。そこで食い止められるようなジョッキーにならないと。

秋山 そうだよね。そのためには、俺もそうだけど、やっぱり競馬にたくさん乗ることが一番。俺も今年はお兄ちゃんと一緒で2着が多いからなぁ。もっともっと精進しないと!

【次回のキシュトーーク! は?】
 ご指名対談第5回のホストは国分恭介騎手、ゲストは川田騎手です。普段、プライベートではまったく交流がないというふたりですが、恭介騎手は以前から川田騎手に聞いてみたかったことがたくさんあるよう。熱い騎乗論からオフの過ごし方まで、川田流アドバイスをお楽しみに!

元祖「キシュトーーク」のレギュラー陣、国分恭介、国分優作、松山弘平、川須栄彦、高倉稜を中心に、栗東・美浦・地方からも幅広く、これからの競馬界を担うU25の若手ジョッキーたちが登場します!

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