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スパーキングレディーC展望&帝王賞、優駿スプリント回顧

  • 2013年07月02日(火) 18時00分
  • 7
◆スパーキングレディーC展望
(7月3日 川崎 サラ3歳以上牝馬 別定 JpnIII 1600m)

「スパーキングレディーC」は、平成10年統一G移行。以後15年間、レベルに多少の落差、バラつきはあるものの、おおむね女傑、名牝と呼べる馬が制してきた。中で一つ特徴は、夏場・3歳編入の時季と重なり、世代交代、新女王誕生のケースが多いことか。言い換えれば、このレースを3~4歳で勝った馬は、そこから息の長い活躍が期待できる。古い順に並べると、プリエミネンス、レマーズガール、グラッブユアハート、トーセンジョウオー、そしてラヴェリータ。その内レマーズガール、トーセンジョウオーは2度優勝、ラヴェリータに至っては3~5歳、見事な3連覇を飾ってみせた。

 ラヴェリータの後継者ミラクルレジェンド(重賞8勝)が、2月「エンプレス杯」優勝を花道に引退、まだ混沌とした勢力図。その意味でも今回「スパーキング」は重要な一戦になるだろう。近況で一歩リードするメーデイア(5歳)、しかし実績は互角以上のレッドクラウディア(4歳)、クラーベセクレタ(5歳)。サマリーズ(3歳)も、昨暮れ牡馬相手のG?ウィナーだけに素質はまったくヒケをとらない。近年いささか食傷気味は否めない牝馬ダートG(地方競馬場における)だが、出走馬それぞれに能力と個性があり、しかも全体がフレッシュな顔ぶれなら、もちろん話は別になる。願わくばと思う。ここにサウンドアリーナ、カイカヨソウ(ともに3歳)などが好状態で参戦できれば…。サブタイトル“ホクトベガ・メモリアル”と冠されたこのレース。もっともホクトベガ没後16年と聞けば、改めて月日は速い。

 (1)…上位拮抗。1番人気[3-3-3-1]、2番人気[2-3-3-2]、3番人気[3-1-1-5]。1人気はもちろん、2~3人気の信頼度も相当高い。堅めの決着。

 (2)…JRA馬。JRA=9勝、2着7回、3着7回。優勢というより絶対に近い。船橋=1勝、2着2回、3着2回。以下、名古屋=2着1回、川崎=3着1回。JRA馬の比較が問題。

 (3)…成長株。前述通り新鋭の活躍が目立ち、中でも4歳=3勝、2着4回とリードする。次いで5歳=2勝、2着2回。ただ3、7歳馬も2勝ずつを上げており、勢いがあれば。

 (4)…好位差し。逃げ=4、先行=6、差し=8、追込=2。おおむねハイペースで流れ、好位~中団からの差しが主流。ジョッキーでは3度騎乗1、1、3着の岩田騎手。

 データ推奨馬
 ◎レッドクラウディア…データ最上位の4歳馬。昨暮れ「クイーン賞」を4馬身差で圧勝し、以後2戦GIIIを3、2着だから実績面でも胸が張れる。今回3か月の放牧明けだが、このパターン2戦2勝と仕上がり早。牝馬Gで抜群に強い岩田騎手。

       ☆       ☆

 ◎メーデイア     56浜中
 ○レッドクラウディア 56岩田
 ▲クラーベセクレタ  56今野
 △サマリーズ     52内田博
 △サダムグランジュテ 55田辺
 △ハルサンサン    56繁田
 △サクラサクラサクラ 55森
  ナターレ      55的場文
  エミーズパラダイス 55石崎駿

 冒頭まだ勢力図混沌…と書いたが、前2走のメーデイアは文字通り別格の強さにみえた。TCK女王盃、マリーンCとも圧巻のひと捲り。一歩リードどころか、今後ラヴェリータ級の名牝に成長しそうな予感がある。さまざまなタイプの産駒を送る父キングヘイローだが、本質的にパワー兼備のマイラーで、地方ダート適性もきわめて高い。前走東京芝GI「ヴィクトリアマイル」も、4コーナー馬なりのまま先頭をうかがった絶対能力。初コースなど、環境に動じない精神面の逞しさも頼もしい。

 レッドクラウディアは前2走メーデイアに完敗。ただ昨暮れクイーン賞圧勝のイメージから鞍上が“逃げ”にこだわった感もあり、今回岩田Jでむしろ新境地が期待できる。昨春「昇竜S」は牡馬相手の直線一気。潜在能力は相当高い。クラーベセクレタは正念場。気力、成長力に翳りがあるか、あるいは久々の前2走は一過性のポカか。コンビ3戦目・今野Jにも力の入る一戦だろう。サマリーズの逃げに、ナターレ、エミーズパラダイスが絡む展開。器用なレースができそうなサクラサクラサクラ、サダムグランジュテに△を回した。大穴はハルサンサン。近走ひと息ながら昨年のTCK女王盃では大外一気の底力。サウスヴィグラス産駒で、本来は短~マイル向きの切れに特徴がある。

◆帝王賞回顧
(6月26日 大井 サラ4歳以上 定量 JpnI 2000m不良)

 △(1)ホッコータルマエ   2分03秒0
 △(2)ニホンピロアワーズ    1
 ▲(3)ワンダーアキュート    11/2
 ◎(4)ハタノヴァンクール    21/2
 △(5)テスタマッタ        3
 ………………
 ○(6)ローマンレジェンド
  (7)トーセンルーチェ
 △(8)フォーティファイド
  (10)スーニ

  単410円  馬複460円  馬単990円  3連複960円  3連単3850円

 ホッコータルマエが、堂々たるレースぶりで“ダート・新王者”を確定させた。1000m通過62秒4のスローを4~5番手で追走し、直線あと1ハロン、前を行くワンダーアキュート、ニホンピロアワーズが競り合う外からエンジン全開。文字通り一瞬のうちに抜け出した。「3番人気だったけど、自分の中では1番人気と思って乗った。実際イメージ通りのレースができたし、一戦ごとに充実している」(幸騎手)。これで統一G5連勝(通算6勝)。勢い、上昇度はもちろん、常に隙なく好位に構え、完全燃焼するところが同馬の真骨頂といえるだろう。上がり36秒7のフィニッシュ(メンバー中No.1)。2000m=2分03秒0も、過去10年中3位だけに胸が張れる。

 ホッコータルマエは、父キングカメハメハ、母マダムチェロキー(チェロキーラン)の4歳牡馬。前述通り統一G6勝目。昨秋後半からの充実がとにかく凄い。昨夏「ジャパンダートダービー」5着、当時勝者ハタノヴァンクールに1.0秒差をつけられ、アートサハラ(3着)にも後れをとったことを思うと、何やら不思議な気分にもなってくる。“成長力”という曖昧な言葉(競馬用語というべきか)。しかしそうとしか表現できないような結果、現象が、競馬の世界ではしばしばある。「使って使って、それで強くなってきた。頭が下がる。今日の勝利は現役(今がピーク)がそろっていただけに自信になります」(西浦勝一調教師)。今回12キロ増。成長力とはイコール“生命力”とも思えてくる。

 ただ、全体的な結果といえば天候も影響した。間断なく降り続く強い雨。脚抜きのいい馬場となり、2着ニホンピロアワーズ、3着ワンダーアキュートは脚質、気性から大きなプラスで、逆に4着ハタノヴァンクール、6着ローマンレジェンドなどは追走に骨を折った。レース巧者、全天候型のホッコータルマエ。もちろん評価は揺るがないが、こと絶対能力というなら、今回1~6着独占のJRA6頭、まだ“群雄割拠”の見方が冷静かもしれない。地方勢は、前々を攻めたトーセンルーチェ7着が唯一見せ場。フォーティファイド、スーニも、テンから覇気を欠くレースぶりで収穫がなかった。南関東陣営。ひとまず待ちたいのはアートサハラ、プレティオラスの復活。あとは現3歳世代の奮起になる。

◆優駿スプリント回顧
(6月25日 大井 サラ3歳 別定 南関東SIII 1200m重)

 ◎(1)ハードデイズナイト   1分12秒0
  (2)オキナワレッド      11/2
 △(3)オグリタイム       31/2
 ▲(4)ドリームタイム       首
  (5)マケマケ          3
 …………………
 △(7)ワールドステルス
 ○(8)カイロス
 △(12)サブノハゴロモ
 △(14)リコーシルエット

  単240円  馬複1630円  馬単2730円  3連複5910円  3連単23280円

 ハードデイズナイトが鮮やかに差し切った。道中中団のインにじっくり構え、直線あと1F、GOサインとともに末脚一閃。先に抜け出したオキナワレッドを、並ぶところなく抜き去った。前走トライアルは大外、今回は内ラチ沿い。流れ、ポジションを問わないあたり、切れるスプリンターとして、正真正銘、一流に昇ったということだろう。「馬のデキが素晴らしく、自信を持って乗れました。(自分の)ミスがなければ、どんな展開でも大丈夫。最後の爆発力はとにかく凄い」(山崎誠騎手)。1200m1分12秒0も、前日古馬B1下(キョウエイラシアス=1分13秒0)と比較してきわめて優秀。同時に現3歳牝馬、確かな世代レベルも実証した。

 ハードデイズナイトは道営1勝(新馬1000m)から南関転入。当時さして目立たなかったが、順調にキャリアを積み心身ともパワーアップ。浦和(1400m)→水沢(1600m)→大井(1200m)と3勝。父サウスヴィグラスらしい自在の快速馬に成長していた。「力をつけたね。タフな体質で予定通り使い込めるし、今日はその集大成と思っていた。自在性があり、追ってからもしっかりしている」(佐々木仁調教師)。次走未定とされたが、7月15日SIII「習志野きらっとスプリント=船橋1000m」の優先出走権獲得。早ければそこで古馬と初手合わせもあるだろう。それにしても一昨年ミヤサンキューティ、昨年ゴールドキャヴィア。このレースは牝馬が強い。

 2着オキナワレッド。勝ち馬より一歩前で馬群を捌き、結果惜敗ながら胸の張れる内容だった。こちらも父サウスヴィグラス。短~マイル路線でさらに躍進が期待できる。ゴール際外から迫ったオグリタイム、ドリームタイムが3、4着。この2頭では四角15番手、いかにも位置取りが悪かった後者に昇り目を感じる。1番人気カイロスは直線失速の8着。超ハイペース(4F通過47秒2)の3~4番手は結果厳しい展開で、急きょ騎乗変更(御神本J・落馬負傷)も運がなかった。次走どう巻き返すか。能力、距離適性とも、そこで改めての評価としたい。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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