菱田騎手、中井騎手など、後輩たちが続々育ってきている昨今。菱田騎手にいたっては、リーディングでも上位を脅かしつつあります。今回は、そんな若手についてや技術向上についての取り組みなど、引き続き、松山騎手が“今”を語ります。
(取材・文/不破由妃子)
■バレンチノには、本当に迷惑をかけました──そういえばこの春は、松山くんが中央にきていたせいもあって、春の新潟では菱田くんが目立っていましたね。改めて、次世代からも頼もしいジョッキーが育ってきたなと感じました。
「もうローカルにはこないでくださいね」って(笑)
松山 そうでしたね。後輩たちに「もうローカルにはこないでくださいね」って言われましたよ(笑)。そう言われて、なんかちょっとうれしかったり。
──その菱田くんが、リーディングでもすぐ後ろまで迫っています。
松山 そうなんですか!? 今、何勝差ですか?
──7勝差です。関西でいうと、武豊さんが5位、松山くんが6位、クリスチャン・デムーロ騎手を挟んで、菱田くんが8位です。(※成績は7月21日終了時点)
松山 そっかぁ。全国リーディングばかり見ていたので、気づきませんでした。でも正直、菱田は巧いと思います。
──後輩ジョッキーが迫ってくることに対して、焦りなどを感じることはありますか?
松山 いえ、今はそれほど気になりません。ただ、さっきも言ったように、菱田や中井は、すごく巧いなぁと思って見ています。自分が2年目のころ、彼らのように乗れてたかな…って考えたら、もっとずっと下手だったなって。
──普段からリーディング順位は気にされるほうですか?
松山 もちろんです。ただ、毎週毎週チェックしているかというと、そうでもないですけど。
──少し前までは松山くんがずっと関西5位をキープしていたんですが、ここにきて、武豊さんに差されてしまいましたね。
松山 それは全然気にしていません。だって、武豊さんですよ(笑)。僕から見たら雲の上の存在なので、抜かされたなんて気にすること自体、おこがましいです。もちろん、順位を落としたくないっていう気持ちはありますけどね。
──それは当然ですよね。そういえば、5月には200勝を達成されて(5月25日・京都11R朱雀S・ワイズリー)。
松山 はい。いろいろ悩みもありますけど、100勝から200勝までがすごく早かったし、ここ1年はホントに充実していましたね。今でもなんか不思議な気分です。こんなんでいいのかな…って。
──順調すぎると?
松山 ん〜、恵まれているといいますか…。急にドン! と上がったからかな(笑)。
──でも、「ここにきて自信を持って乗れるようになった」とおっしゃっていたように、松山弘平・第二章は、まだまだこれからですよ。
松山 そうですね! ただ、恵まれているからこそ、技術がついてこなくなるのが怖いんです。これだけいい馬に乗せていただいているのに、それに対して技術がついてこなかったら…当然、切られていくわけなので。技術はまだまだ、全然足りませんから。
──技術向上のために、心がけていること、取り組んでいることなどありますか?
松山 できることは限られていますけど、トレーニングやレース映像を見ることなどは、継続的にやっています。あと、実際の競馬でもいろいろ試してみたりだとか。ただただ必死に乗っていたころに比べると、今は多少余裕を持って乗れるようになったので、できる範囲でいろいろ試みているつもりです。
──それは大きな変化ですね。先月、恭介くんのご指名対談で川田さんにゲストできていただいたんですが、着順にかかわらず、どんなレースでも無駄にしないことが次の1勝につながるとおっしゃっていました。
松山 そうですね。今は本当にそう思います。ただ、これまでは本当に余裕がありませんでした。ドリームバレンチノには、新馬からほとんどのレースで乗せていただいてますけど、新馬から順にレース映像を見ていくと、すごく下手くそだったのがよくわかるんです。昔の500万、1000万あたりの騎乗は、もうホントにひどいもんですよ(笑)。
自信を持って乗れるようになったなって感じるんです
──ドリームバレンチノを通して、松山くんの成長過程が見られるわけですね。
松山 今思うと、オープンに上がってくるまでの間、馬には本当に迷惑をかけたなぁって思うんですよ。ただ単に馬が強かったから勝てたレースや、本来なら降ろされてもおかしくないレースがたくさんあったのに、それでも乗せて続けてくださって。もちろん今でも失敗することはありますけど、そうやって新馬戦から順に見ていくと、だいぶ自信を持って乗れるようになったなって感じるんです。
【次回のキシュトーーク! は?】
この夏も、小倉を主戦場に戦う松山騎手。近年の小倉は、川田騎手、浜中騎手を筆頭にジョッキーの層が厚く、今年も激戦が予想されます。次回は小倉開催への意気込みを皮切りに、スプリンターズSや秋競馬の目標など、後半戦に向けての熱い思いを語ります。