1番人気に推された函館スプリントSでは、まさかの7着惨敗。「いつものバレンチノではありませんでした…」と肩を落とすいっぽうで、松山騎手の視線は早くも秋のスプリンターズSへ。最終回となる今回は、改めてドリームバレンチノへの思い、そして秋後半の目標についてお聞きしました。
(取材・文/不破由妃子)
■秋はひとつでも多くのGIに騎乗したい──ちょうど1年前にも単独インタビューをさせていただいて、そのときに「10週連続で勝ってるんですよ」ってうれしそうに話していらしたのが印象に残っています。
松山 覚えてます! でも確か、次の週に連勝がストップしちゃった(笑)。
──そうでしたね(苦笑)。その昨年は、「この流れを止めないことが目標です」とおっしゃってましたが、今年はどんな目標を持って夏競馬に臨みますか?
昨年は取材後、次の週に連勝がストップしちゃった(笑)
松山 今年も中京から小倉に行くんですけど、小倉にはユタカさん、川田さん、浜中先輩とすごい先輩がそろっているので、そのなかでいかに自分の居場所を確保できるかが大事かなと。毎週、ひとつでもいいから勝ちたいですね。
──ぜひ、開催リーディングを狙っていただきたい。
松山 はい!……ん〜、現実的には厳しいかな(苦笑)。でも頑張ります!
──今年の夏は、北海道の常連組だった横山典さんと池添さんが新潟に、新潟組だった内田博さんが北海道に参戦するということで、勢力図が変わってきそうですね。そんなかか小倉は、先ほど松山くんもおっしゃったように、武豊さん、幸さん、和田さん、川田さん、浜中さんと、相変わらずの激戦区。川田さん、浜中さんも燃えているでしょうから、熱気がありそうです。
松山 そうですね。同じ20代なのに、川田さんも浜中先輩もすごいよなぁ。
──松山くんもグイグイいってください! “全部勝ちたい”という気持ちは負けていないはずです。川田さんと浜中さんは、とにかく気持ちが強いですよね。
松山 だからこれだけの結果が出せるんでしょうねぇ。浜中先輩は年齢が近いぶん注目させてもらってますけど、競り合いになったら絶対に勝っているような気がします。見ていて、めっちゃかっこいいですもん。ホントにすごい。浜中先輩には憧れます。
──そんな浜中さんも、安田記念(ショウナンマイティ2着)のあとには涙をこらえられなかったとか。松山くんは高松宮記念でその涙をグッとこらえたわけですが、浜中さんの気持ちが痛いほどわかるのではないですか?
松山 本来、僕なんかが言うのはおこがましいかもしれませんが、きっと浜中先輩も、(ショウナンマイティを管理する)梅田先生をはじめ、厩舎スタッフの方とか、いろんな人の思いを背負っていると思うんです。だから、なんとかしたいっていう思いが強かったのではないかと思います。僕も同じで、ここまで乗せてくださった関係者のみなさんのためにも、なんとかしてバレンチノをGI馬に、っていう思いがすごくあります。GIを勝てば恩返しができますし、バレンチノの名前も一生残りますからね。でも実際は、そう簡単ではありませんよね…。
──秋にはそのチャンスが待っています。6月の函館スプリントSは、ちょっと残念な結果に終わってしまいましたね(7着)。加用先生はレース前、59キロの斤量を心配されていたようですが、松山くんの実感としては?
松山 僕はそれほど気になりませんでした。状態が良かっただけに、正直、あの結果はショックです。敗因は…わからないんです、本当に。たぶんバレンチノにしかわからない。
──とにかく、いつものバレンチノの反応ではなかったということですよね。
松山 そうですね。4コーナーを回るあたりまでは、すごくいい感じだったんです。でも、肩ムチを入れて仕掛けようとしたときの反応がすごく鈍くて。いつもだったら、自分からハミを取ってグンと行くんですけどね。
──59キロなのか、久々なのか…。
松山 久々っていうのはあったかもしれませんね。とにかく敗因がわからないことには次につなげられませんから、秋までにしっかり見極めていかなければと思っています。
──秋はセントウルSから始動予定ですよね。
松山 はい。本番の前に一度使えるのは、僕としても安心です。なんとかそこでスイッチが入ってくれればいいんですけどね。さっきも言いましたけど、中京より中山のほうが逆転の可能性はあると思ってますから。
──2013年も折り返し地点を過ぎました。最後に後半の目標を聞かせてください。
松山 フェアプレー賞がほしいです! あとはなにより、ひとつでも多くのG?に乗りたいです。
──春のGI騎乗は、宝塚記念を入れると5鞍でしたね。
“GIを勝ちたい”になって…
松山 春競馬が始まったころには、まさかこんなに乗せてもらえるとは思っていませんでした。少し前には重賞に乗るだけでもうれしかったのに、それが“勝ちたい”になって、”GIに乗りたい”になって、“GIを勝ちたい”になって…。求めるものって、ほんとにどんどん上がっていくものですね。
──先ほども言いましたけど、それは当然ですよ。もっともっと上を見ていかないと。中央を主戦場にして、GIにもたくさん騎乗されて。この春は、今後の松山くんにとって、次のステージに進むきっかけのシーズンだったと思います。
松山 いや、まだまだですよ…。でも、目指すものがどんどん大きくなっているのは事実なので、もっとしっかりしなければ!と、今日改めて思いました。
【次回のキシュトーーク! は?】
次回は、『キシュトーーク!』メンバー唯一の厩舎所属騎手、高倉稜騎手の1日に密着! 朝は何時から始動? 調教は何時間やるの? 昼寝タイムは? 午後の仕事は? などなど、知られざるジョッキーの1日を数回にわけてレポートします。