人気のインカンテーション(父シニスターミニスター。その祖父A.P.Indy)がさらにパワーアップした成長を示し、好位のインから力強く抜け出して初重賞制覇を達成した。これで全4勝をダート1800mで記録したことになる。
主導権を握って、最後まで粘って2着のサトノプリンシパル(父バーナーディニBernardini。その父A.P.Indy)が作ったペースは、12秒4-11秒2-12秒1-12秒7-12秒6-12秒3-12秒5-12秒2-12秒3。
まるで絵に描いたような一定の平均ペースである。(シアトルスルーSeattle Slew系)種牡馬の伝える大きな特徴のひとつが、「一定ラップの平均スピード」とされることは珍しくないが、サトノプリンシパルのペースはまさに緩急のない平均ペースそのものだった。
最初からこの流れに乗って先行したインカンテーション(まったく同じ父系)にとっても、これは理想の流れだったと考えられる。最初、芝の1200~1600mのレースを3戦したインカンテーションは、4戦目に一転、ダート1800mに出走して初勝利を挙げている。ダートへの方向転換は、父がシニスターミニスターとあってみんな納得の変更作戦だが、それがいきなり1800mだったところが素晴らしい。まさにベストの条件だったのである。
もっとも、インカンテーションのすごいところは、水を得た魚のように合っていた平均ペースのダート1800mで先行して粘り込むだけではなかった。休み明けで出遅れた6月のダート1800mでは後方追走から直線一気に伸び、上がり35秒1を記録している。短距離の追い込みタイプだと、たとえばシルクフォーチュンあたりなら、上がり3ハロン34~35秒台の爆発力を繰りだすこと再三だが、ダート1800mの1000万特別で上がり35秒1はちょっと聞いたことがない。
追っての味を加えているインカンテーションは、ずっとインで先行し4コーナーを回ってからスパート。そうして抜け出した今回の後半3ハロンも、ただ1頭だけ36秒台。その強さは本物になりつつある。このレースを飛躍の出発点に、やがてダート界のチャンピオンになったトランセンド、いまチャンピオンになりつつあるホッコータルマエなどと互角の評価をしていいだろう。
3代母はタイムチャーターTime Charter。英オークス、キングジョージ6&世クイーンエリザベスDS(当時)などを制して、凱旋門賞に人気で2回も出走したこの牝馬の父系祖父は、種牡馬として各国を転々としたことで知られるダンサーズイメージ。最後は日本にきたダンサーズイメージは種牡馬としてあまり成功したとはいえない。しかし、その血は表舞台から隠れるようにしながら影響力を与える不思議な血として、世界のいろんな国の血統図にときどき出現する。それは、南アフリカ産の活躍馬ジプシーズウォーニングGypsy's Warningであったり、タイムチャーターであったりするから、インカンテーションの場合も、5代血統表の端に登場するだけの時代になっても、ダンサーズイメージがまったく関係ない存在とはいえないのである。第1回のトランセンドにしても、父系が途絶えたからもうみんなが忘れていたけれど、1950年代の快速馬スワップスSwapsの全妹になる輸入牝馬アイアンエイジ(父Khaled)が、現在の日本でまた息を吹き返しているファミリーの出発点である。
2着に粘ったサトノプリンシパルは、軽く気合を入れてまんまと単騎マイペースに持ち込んだ鞍上の積極策が大きい。前記の絶妙ラップも粘り込めた大きな要因だが、新潟のダートは実力馬同士のレースだと、おそらくJRA10場の中でもっとも追い込みにくいコースであることを知り尽くした逃げ作戦だった。扁平コースだから、4回のコーナーワークは難しい。「新潟は広いコース」なのか、それとも意外に狭いコースなのかというなら、JRA10場のダートコースの中で(芝と同様)、もっとも幅員が狭いコースが新潟である。
素晴らしいデキに仕上がっていたケイアイレオーネ(父ヘニーヒューズHenny Hughes)は、外に振られずうまく3コーナーからまくって出た。直線、1度はインカンテーション、サトノプリンシパルに並ぶシーンもあったが、そこからさらに伸びる余力はなかった。1900~2000mの経験はあるが、それは勝ち負けとは関係ない位置の善戦であり、心配された通り1800mは理想より明らかに長すぎた。父はマイラーというよりスプリンターに近い馬だった。
ジェベルムーサ(父アグネスタキオン)も2連勝時よりまた一段と良くなっていたが、今回は一気の相手強化に加え、自身にとって初めて1800mがきつかった。慣れれば1800mは平気と思えるが、持ち味の追い込みが決まりにくいコースなのに、力のある先行タイプにこういう息の入れにくいペースで気分良く行かれてしまっては苦しい。
3連勝時と同じように前に行きたかったアムールポエジー(父ネオユニヴァース)は、ちょっとガチャガチャしてスタートのタイミング合わなかった。最内枠の先行タイプの牝馬がダッシュつかずでは、どうすることもできなかった。