スマートフォン版へ

今週デビュー、1億3000万円のディープ産駒サトノアラジン

  • 2013年08月07日(水) 12時00分
●アムールブリエ(牝 栗東・松永幹夫 父Smart Strike、母ヘヴンリーロマンス)
 母ヘヴンリーロマンスは牝馬ながら天皇賞・秋(GI)を制したほか、札幌記念(GII)、阪神牝馬S(GII)を勝った名牝。日本で産んだ3頭の子のうち、ウイニングサルート(父フレンチデピュティ)とヴェイロン(父キングカメハメハ)が1000万下まで出世している。その後、ジャングルポケットの子(アウォーディー)を受胎した状態で渡米し、出産後に種付けをしたのがSmart Strike。07、08年に米リーディングサイアーに輝いた名種牡馬で、Curlin(米年度代表馬)、English Channel(BCターフなどG1を6勝)、Lookin at Lucky(プリークネスS)、Fleetstreet Dancer(ジャパンCダート)、ブレイクランアウト(共同通信杯)など多くの一流馬を送り出している。Smart Strikeとサンデーサイレンスは相性がよく、近い世代に両血脈を持つ馬には、レッドオーヴァル、ウィケットキーパー、Bright Thoughtなどがいる。Bright Thoughtはハットトリック産駒で、今年春のサンルイレイS(米G2・芝12f)で2分22秒72の世界レコードを樹立した。誕生日が5月21日なので遅生まれだが、血統的にはちょっと面白い存在だ。芝・ダート兼用の中距離タイプ。

●エンジェヌー(牝 栗東・岡田稲男 父コマンズ、母ステージスクール)
 母ステージスクールは名馬アラジ(欧年度代表馬、米2歳牡馬チャンピオン)の半妹で、父がサンデーサイレンスという良血。繁殖成績も良好で、初子のウエストエンド(父Pivotal)は芝1400mのスペシャリストで準OPに在籍している。アラジは名牝系の祖として名高いNative Partnerのファミリーに属し、父としてはもうひとつだったが、母の父として優れた実績を挙げている。いいものを伝えているのだろう。その半妹のステージスクールにも期待を掛けられる。父コマンズはDanewin(現役時代に豪G1を5勝し種牡馬としても成功)の全弟で、オーストラリアの歴史的名馬Octagonalの甥でもある良血。現役時代はG3を勝った程度だったが、種牡馬としては兄Danewinを上回り、04-05年のシーズンから豪種牡馬ランキングベスト10を外したことがない。09-10年のシーズンからはベスト5以内に定着している。直近の12-13年は3位だった。日本における産駒は今年の夏からデビューし、現在のところ7頭がデビューして3勝を挙げている。高速馬場にしっかりと対応し、なおかつパワーも感じられるので、短距離では相当活躍しそうだ。本馬はサンデーサイレンスが母の父なので芝のマイル前後が合うだろう。

●サトノアラジン(牡 栗東・池江泰寿 父ディープインパクト、母マジックストーム)
 11年のセレクトセールにおいて1億3000万円(税抜)で落札された高馬。新馬戦を素晴らしい瞬発力で差し切ったラキシス(3戦1勝)の全弟で、ダート短距離でOPクラスまで出世しているエスケープマジック(父Maria's Mon)の半弟でもある。母マジックストームはモンマスオークス(米G2・ダ9f)勝ち馬。「ディープインパクト×Storm Cat」は成功しており、とくに現3歳世代からキズナ(13年日本ダービー-GI)、アユサン(13年桜花賞-GI)、ヒラボクディープ(13年青葉賞-GII)とクラシック馬2頭を含めて3頭の重賞勝ち馬を送り出している。「ディープ×Storm Cat」で重要なのは、残りの部分にHyperion−Alibhaiのようなブリティッシュトラッドの王道を添えること。本馬にはそれがない。しかし、母にはStorm Bird≒Nijinsky 2×3があり、これが底力の補強する役割を果たせばおもしろい。芝向きのマイラー〜中距離タイプだろう。今週の新馬戦でデビュー予定。

●ネオヴァロン(牡 美浦・鹿戸雄一 父ジャングルポケット、母エイグレット)
 「ジャングルポケット×サンデーサイレンス×ノーザンテースト」の組み合わせはジャガーメイル(10年天皇賞・春-GI)、ダイワファルコン(12年福島記念-GIII)と同じ。母エイグレットは現役時代に3勝。繁殖牝馬としては東京芝1400mでレコードを樹立したミトラ(父シンボリクリスエス/現OP)、2戦1勝のカヒリ(父キングカメハメハ)を送り出し、有能なところを示している。シンボリクリスエスと交配して東京芝1400mのレコードホルダーを誕生させる繁殖牝馬なので、豊かなスピードを伝えているのは間違いないところ。父ジャングルポケットは素軽いタイプではなく、スピードのある繁殖牝馬は歓迎だ。底力あふれる中距離タイプ。

●マイネバラシア(牝 栗東・清水久詞 父ゼンノロブロイ、母バラファミー)
 父ゼンノロブロイはアメリカ血統が強いせいか、スタミナと底力に秀でたヨーロッパ血統と相性が良好。Sadler's Wellsとも優れた実績を残している。この組み合わせからはコスモネモシン(09年フェアリーS-GIII)、ラブフール(12年クイーンS-GIII・2着)、ノーステア(13年ダイヤモンドS-GIII・4着)、オメガスカイツリー(11年ユニコーンS-5着)などの良駒が出ている。本馬の母の父はSadler's Wells系のBarathea。それ以前の代もShirley Heights、Petingo、シーホークとヨーロッパ血統が並んでいる。全兄ライズトゥフェイムは2戦1勝なので悪くない。芝向きの中距離タイプ。

●ワールドインパクト(牡 栗東・友道康夫 父ディープインパクト、母ペンカナプリンセス)
 母ペンカナプリンセスはフレッドダーリンS(英G3・芝7f)を勝ったほか、愛1000ギニー(G1)で2着となる活躍をみせた。父ディープインパクトは快速馬と合うタイプなので母の父Pivotalとは相性がいいだろう。本馬はAlzao≒Shareef Dancer 3×4、Busted 4×6という好ましいクロスを持ち、相性のいいNureyevも入る。Crepello−Bustedのラインをクロスさせたディープインパクト産駒には、日本ダービー馬ディープブリランテとその全姉でフラワーC(GIII)2着のハブルバブルのほかに、マルセリーナ(桜花賞)、ムーンリットレイク(8戦5勝)、ダノンムーン(5戦3勝)などがいる。注目したい配合パターンだ。全兄ダノンジェラートは7戦3勝で、セントライト記念(GII)3着という成績があり、高い能力の持ち主であることは疑う余地がない。芝中距離で本領を発揮するだろう。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング