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ハンターの逆襲

  • 2003年08月03日(日) 16時46分
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 7月29日、大井「サンタアニタトロフィー」。嬉しい誤算というのかどうか、南関東限定G3ながら、想像を大きく超えた“名勝負”が展開された。ゴール前100m、コアレスハンター、ベルモントアクター、力の入る一騎打ち。いったん並ばれたハンターが、最後の最後、渾身のステッキとともに差し返している。1590m1分38秒5は、ベルモントアクターがマイルグランプリでマークした38秒7を凌ぐ事実上のレコードタイム(参考記録)。フジノテンビーが1000m通過59秒8で引っ張ったこと、砂が流れやや軽い馬場だったこと。それを割り引いても今日の内容は評価できる。「好位につけて後ろから相手(アクター)がきたら併せ馬にするつもりだった。イメージ通り。差す競馬ができたのが何よりでした」と内田博幸騎手。マイルグランプリを1番人気で負け、評価が揺らいでいただけに、嬉しさと安堵、相半ばということだろう。3か月ぶりながらパドックなど実に堂々とした馬体と気配で、心身ともむしろリフレッシュを感じさせた。

サンタアニタトロフィー(サラ3歳上 ハンデ 南関東G3 1590m不良)

○(1)コアレスハンター  (57・内田博) 1分38秒5
◎(2)ベルモントアクター (57.5・石崎隆) 首
△(3)フジノテンビー   (56・佐藤太)  3
▲(4)オーミヤボレロ   (54・張田)   2
 (5)シルクセレクション (54・的場文)  3/4
………………………………………………………………
 (8)コアレスフィールド (56・佐藤隆)
△(9)メイショウアーム  (54・戸崎)
 取消 ナイスキングオー

単540円 馬複340円 馬単1120円
3連複4850円 3連単23920円


 競走馬が歩む出世街道。きわめて大ざっぱな話だが、コアレスハンターの場合、彗星のように昇っていく天才型ではなく、勝利と敗戦、一つ一つを糧に階段を踏みしめていく努力型、そんなパターン。昨秋かちどき賞が5歳秋にして初タイトル。以後2戦、少し足踏みしたあと金盃圧勝。再びマイルグランプリで苦杯を舐め、しかし今回また新しい面をアピールした。かつての競馬常識ではすでに下り坂という年齢だが、現実にはむしろキャリアを積むたびに“進化”している。「好位から抜け出す、競り合って頑張れる、馬も人もこちらの思惑通りの競馬をしてくれた。嬉しいレース」と高橋三郎調教師。8月14日盛岡「みちのく大賞典」にエントリー。そこで左回りにメドがつけば、9月統一G1「南部杯」に臨むと聞いた。一気に昇り詰めるかどうかは微妙だが、その逞しさ、打たれ強さには楽しみも大きい。

 ベルモントアクターは連覇の夢断たれ首差の2着。ただ時計、レースぶりからは相手が走ったということで、馬場状態、ハンデも含め納得のいく内容だろう。向正面から外々をまくり気味に動き息の長い脚を使った。なるほど“神話”は遠くなったが、逆にマイラーとしての評価は確定。地方馬同士ならいつでもチャンスがあるはずだ。終わってみれば、以下は格下、あるいは状態疑問か。フジノテンビーは佐藤太騎手のケレン味ない逃げで3着。しかし馬体、気合など、いかにもぎりぎりというムードで、距離延びるレースでは厳しいか。オーミヤボレロはハイペースでカカリ癖の懸念もなく、ほぼ能力を出し切った。今後はオープン通用の破壊力が課題になる。鞍上で穴人気になったシルクセレクションは距離不足。昨年2着コアレスフィールドは年齢的なものかズブくなった。メイショウアームは絶好枠ながら後手を踏み、依然ムラ馬の域を脱しきれない。


       ☆       ☆       ☆

 1週遅れになるが、7月26日新潟「マリーゴールド賞」を、浦和から挑戦したマリンゴールドが鮮やかに制した。南関東デビューの2歳馬としては久々の、というより初めてに近い快挙。浦和2連勝の時計、レースぶりからソコソコの期待はあったが、本音はやはり半信半疑。ただし現実にまず文句なしの内容で、ロケットスタートから終始軽快に飛ばし、ゴール前も1番人気ハリーズコメットをしぶとい二の脚で振り切っている。1200m1分9秒4も水準以上。南関びいきとしては、元気をもらった…正直そんな感慨すら浮かぶ。

 個人的な想い、いやある意味偏見かもしれないが、筆者の場合、地方馬へのエールは、芝コースにチャレンジしようというケースでより熱くなってしまう。かつてのホスピタリティ、サンオーイ、イナリワン、そしてトロットサンダー。当時は移籍、トレードという形を余儀なくされた。それでも彼らはあらゆる逆境にめげることなく力走し、胸の張れる結果を出した。岩手時代から芝だけを得意とし、大井(小林)転厩後もダートは一切使わないネイティヴハートのパターンは少し特殊すぎるだろう。傍観者の身勝手ながら、これはどうも心の琴線に響かない。

 JRA初勝利の繁田騎手。「それなりに手応えは感じていたけれど、これだけ走ってくれて正直びっくり。前半は少しカカリ気味でした。折り合いがつけばあるいはもっと…」。ともあれこれで新潟2歳Sの出走権を獲得し、まだ茫洋とした段階ながら来春の阪神「桜花賞」も視界に入った。オーナーは競輪界を代表するスーパースター・山田裕仁氏。今後は番手まくり、好位差しを覚えてくればベストだろうか。父オジジアン。母の父トウショウボーイ。姉ロングキャロットは札幌マリーンS快勝、1000m56秒7レコードを樹立している。細かい経緯は知らないが、山田裕仁氏、何とも励みになる馬を手に入れた。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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