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名門ダイナカール牝系の次代の王子となれるかプリンスダム

  • 2013年08月28日(水) 12時00分
●エイコーンウィル(牝 栗東・松田国英 父キングカメハメハ、母サンデーエイコーン)
 母サンデーエイコーンは繁殖牝馬として優れており、ワキノカイザー(父マヤノトップガン/08年ガーネットS-GIII・7着)、ハンドレッドスコア(父ホワイトマズル/府中牝馬S-GIII・7着)、タイムズアロー(父タイムパラドックス/OP)、アントニオピサ(父タニノギムレット/準OP)など、コンスタントに活躍馬を出している。本馬はその半弟で、父はキングカメハメハ。「キングカメハメハ×サンデーサイレンス+ロイヤルスキー」という構成はゴールデンチケット(09年兵庫チャンピオンシップ-Jpn2、09年毎日杯-GIII・2着)と同じ。母が18歳時の産駒、という点だけがネックで、それ以外は走る条件がそろっている。芝向きのマイラーとして期待できそうだ。

●スマートストリーム(牡 栗東・吉田直弘 父ゴールドアリュール、母ウルトラシートゥ)
 今年の正月、京都ダ1400mの新馬戦で1分23秒5という驚異的なタイムで圧勝したメイショウロフウの全弟。ロフウは3戦2勝としたあと骨折(全治6か月)して休養中だが、復帰すればOPクラスまでは楽に行ける器だろう。父ゴールドアリュールは、スマートファルコン、エスポワールシチー、オーロマイスター、タケミカヅチなどの初年度産駒(現8歳)が大活躍したあと、これといった大物は出ていなかったが、今年の3歳はクリソライト、コパノリッキーなど大物続出で久々の当たり世代となっている。この勢いを2歳世代もつなげたいところ。本馬は母が「Gulch×Devil's Bag×Cornish Prince」とアメリカンタイプのスピード血統で、短距離への対応力を獲得している。全兄と同レベルの活躍を期待したい。

●チョコレートバイン(牝 美浦・加藤征弘 父ディープインパクト、母シャンクシー)
 母シャンクシーはフランスでマイルのG2を2勝したほか、G1でも上位入線を繰り返し、来日して京王杯スプリングC(GII)、安田記念(GI)にも出走した(7着、15着)。繁殖牝馬としても優秀で、過去に送り出した8頭はすべて2勝以上している。この外れのなさは特筆すべき長所だ。オリービン(父ダイワメジャー/12年アーリントンC-GII・2着)、ピクシーダスト(父サンデーサイレンス/07年阪神牝馬S-G2・6着)、ハングリージャック(父フジキセキ/準OP)、ラヴドシャンクシー(父ファルブラヴ/準OP)、マイノチカラ(父サンデーサイレンス/準OP)あたりが出世頭で、まだ重賞勝ち馬は出ていない。本馬はディープインパクト産駒なので期待十分。母方にVaguely Nobleを持つディープ産駒はニックスで、5代以内にこの血を持つ馬は15頭中14頭が勝ち上がり、トーセンラー、カミノタサハラ、レッドオーヴァル、ファタモルガーナ、ボレアス、マウントシャスタなどの活躍馬が出ている。馬体が小柄とのことでそのあたりがどう影響するかだが、配合の良さで克服してほしい。

●プリンスダム(牡 栗東・池江泰寿 父キングカメハメハ、母マリーシャンタル)
 母マリーシャンタル(父サンデーサイレンス)は4勝馬で、エアグルーヴ(年度代表馬)の半妹にあたる。ということは、アドマイヤグルーヴ(03年、04年エリザベス女王杯-GI)の4分の3同血。キングカメハメハを父に持つ本馬は、ルーラーシップ(12年クイーンエリザベス2世C-香G1など重賞5勝)の4分の3同血ということになる。ほかに短距離路線で活躍しているアドマイヤセプターなども出ている。オークス馬ダイナカールから大きく発展したこのファミリーは日本でも屈指の活力を誇る。マリーシャンタルの子は現時点で5頭がデビューし、すべて2勝以上を挙げている。ただ、OPまで行ったシャルルマーニュ(父フレンチデピュティ)が出世頭で、まだ重賞クラスの大物は出ていない。このファミリーと相性がいいキングカメハメハが父ならおもしろい。

●ブレイクアウト(牡 栗東・本田優 父コマンズ、母マルヴァーンスプリング)
 父コマンズはDanewin(現役時代に豪G1を5勝し種牡馬としても成功)の全弟で、オーストラリアの歴史的名馬Octagonalの甥でもある良血。現役時代はG3を勝った程度だったが、種牡馬としては兄Danewinを上回っている。09-10年のシーズンからベスト5以内に定着し、直近の12-13年は3位だった。日本における産駒は今年の夏からデビューし、現在のところ9頭がデビューして3勝を挙げている。2代父デインヒルはPetition≒Flower Bowl 4×3が配合的なポイントで、息子のコマンズは母の父の父がPetitionなので、上記のクロスを継続して5・4×3としている。コマンズや全兄Danewinが送り出した活躍馬の配合を分析すると、Petitionを強化した配合がよく走っている。本馬はHis Majesty 4×3というクロスがある。His Majesty の母はFlower Bowlなので、Petition≒Flower Bowl 6・5・4×4と、上記のクロスをさらに継続している。配合的に見どころがあるので期待できそうだ。底力を感じさせるので、素軽いスピードがあれば上のクラスまで行けるだろう。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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