高倉騎手の密着取材の最後は、春の回顧＆秋への抱負をテーマにしたインタビュー。「夢のようだった」と振り返るカポーティスターでの日経新春杯制覇や、二度目のGI騎乗となった天皇賞(春)を振り返りつつ、“ジョッキー・高倉稜”の内面をクローズアップ！
(取材・文/不破由妃子)

■日経新春杯の直線は、ソワソワしちゃいました(笑)

──今回は、1日密着レポートにご協力いただき、ありがとうございました。

高倉　いえいえ。みなさんこそ、朝早くからお疲れさまでした。午後は、各厩舎に勝負服を取りに行ったり返しに行ったり、軽くストレッチをしたりすることもありますけど、木曜日はだいたい今日のような感じで過ごしています。

──最後に少しお話しを伺いたいのですが、今年はすでに25勝(7月14日終了時点)。まだ半年を残した状態ですから、ご自身の年間最多勝利(現時点では2011年の40勝が最多)を狙えそうですね。

高倉　そうなんですよね、なんか勝ってますよね(笑)。ただ、去年も夏競馬で一気にペースが落ちたので…(昨年の夏の小倉は未勝利)。まぁ、巡り合わせやタイミングもあるので、とくに(夏競馬に対して)苦手意識があるわけではないですけどね。

──今年の前半戦は、カポーティスターで日経新春杯を制覇。同馬では、初めての天皇賞(春)も経験されましたね。高倉くんにとって、春はどんなシーズンでしたか？

高倉　やはり、重賞を勝てたことは大きかったですね。ゴールした瞬間は、夢のようでした。

──そうだったんですか。

高倉　はい。アレ？ 勝っちゃったよ、みたいな(笑)。後ろの足音がだんだん小さくなっていったので、直線はソワソワしちゃいましたよ。普段、あんなに巧く乗れることはあまりないんですけどねぇ。

──何をおっしゃいますか。人気薄で豪快に追い込んでくる姿は、玄人ファンを唸らせるに十分なものですよ。

高倉　ありがとうございます。でも、いつも仲良くしてもらっている先輩にも「あのレースだけは巧く乗ったな。ほかはそれほどでもないけどな」って言われたんです…（笑）。

──その後、京都記念6着、日経賞2着を経て、天皇賞(春)へ(15着)。GIは、昨秋のマイルCSに続く二度目の騎乗でしたね。

高倉　天皇賞は、楽しみがありました。引っ掛かることもある馬ですが、直近のレースでは折り合いも大丈夫だったので、距離もいけるかなと。でも、結果的に3200mは長すぎましたね。やっぱり、2400m、2500mあたりがベストかなと思いました。僕自身でいえば、GIでの騎乗は2回目でしたが、とくに緊張はしませんでしたね。

──以前から思っていたのですが、高倉くんはつねに精神面が安定していますよね。どこか飄々としていて、若手にありがちな気負いがないというか。

高倉　僕なりに焦りはあるんですよ。でも競馬って、日経新春杯のように“あ、勝っちゃった”というレースもあれば、“これは勝てるだろう”と思ったレースで負けることも普通にある。僕が焦ったところで、結局、走ってくれるのは馬ですからね。だから、あまり考えすぎないようにしています。まぁ“時の流れに身をまかせ”っていう感じですかね(笑)。いろいろ不安はありますけど、僕がやるべきことはひとつですから。

──高倉くんの年齢、キャリアで、“走ってくれるのは馬だから”と言えるのはすごいことだと思います。以前、四位さんが同じことをおっしゃっていたんですよ。「だから、いろいろ考えたり悩んだりしたところで、騎手にスランプなんてないんだよ」と。ジョッキーに限らず若いころは、どうしても“自分、自分”になりがちですからね。

高倉　ん〜、自分の成績に関しては、焦っても仕方がないという気持ちがあるんです。もちろん、今年は50勝したいなっていう気持ちはありますよ。ただ、さっきも言ったように、走ってくれるのは馬ですからね。僕としては、重賞でいい馬が巡ってくるように、いつも目立っておきたいとは思っています。いつそういうチャンスが巡ってきてもいいように、自分自身の準備はつねに万全にしておきたいなと。

──そういう巡り合わせが、GIにつながってきたりしますからね。

高倉　そうですよね。やっぱり重賞でチャンスをもらえるようなジョッキーじゃないと、GIには乗れませんからね。秋はひとつでも多くGIに乗りたいです。夏の間にそういう馬に巡り合えたらいいなぁ。

──そういえば、来年は義(よし)クンが崎山厩舎からデビュー予定ですよね。となると、高倉くんはフリーに？

高倉　どうなんでしょう。先生からは、まだ何も言われてないので。ただ、そうなるかもなぁという覚悟はしています。フリーになったとしても、これまでと同じように、崎山厩舎を中心にやっていくのは変わらないと思いますけどね。

──今日は長い間、本当にありがとうございました。秋も高倉くんらしい、インパクトの強い競馬を期待しています！

高倉　はい。もっともっと目立てるように後半も頑張りますので、応援よろしくお願いします！



【次回のキシュトーーク！は？】
　いよいよ秋競馬がスタート。次回のキシュトーーク！ では、後半戦に向けて精神力＆集中力に磨きをかけるべく、国分優作＆恭介騎手が比叡山延暦寺にて“プチ修行”に挑戦！　その模様を4回にわけて詳細にレポートします。