8月競馬。この時季、フレッシュな話題といえばむろん“2歳馬”だが、同時に“3歳馬の世代レベル”も、例年大きなテーマになる。いや、こと馬券という観点では、こちらがより肝心かもしれない。歴戦の古馬VS可能性の3歳馬。ただし一般論でいえば、持ちタイムが互角ならノータイムで3歳馬上位。これは少々不思議なくらいその通りの結果になる。
今年の3歳馬。オープン級に関するとまだデータが少ないが、ひとまず「トゥィンクルレディー賞」をレマーズガールが勝つという事実があった。南関東だけを考えても、ネイルアート(プリンセス賞3着)が、いきなり古馬B1下「ミルキーウェイ賞」を豪快に差し切っている。少なくとも“低くない”、そういう見方でいいだろう。今週は3歳馬同士ではほぼ最終重賞ともいえる「黒潮盃」。クラシック組と昇り馬、さらに初対戦の北関東馬(今年から東日本交流で施行)がどう戦うか。ナイキアディライトは確かに全国レベル、統一Gレベルを証明したが、後に続く馬が出なくてはやはり気勢が上がらない。
黒潮盃出走予定馬 8月14日大井(サラ3歳 東日本地区選定馬 別定 1790m)
◎ナイキゲルマン (55・的場文)
○スパルタニアン (55・未定)
▲ステルステクニック (55・石崎隆)
△イシノファミリー (56・森下)
△ドラゴンフライヤー (55・金井)
△アヅマディフィート (55・桑島)
△ネイルアート (53・山田信)
エイセンスター (55・水野)
リュウジン (55・市村)
ナイキゲルマンには文字通り正念場の一戦となった。羽田盃、東京ダービーとナイキアディライトの2着。続くジャパンダートダービーではさらに水のあいた5着だが、負けたのはビッグウルフ、ユートピア、ブイロッキー、ひとまず地方馬には先着を許していない。エンジンかかって息の長い末脚が特長。このレベルなら早めに先団を射程内に入れ、力勝負に持ち込むだろう。ノンタイトルゆえ55キロの同斤も恵まれた。
上昇馬スパルタニアンを相手にとった。長期休養をはさみ5戦3勝。前走船橋「合歓特別」は、1600m1分41秒6、同日行われた若潮盃に0.2秒差の好内容。父テイルオブザキャット、Mrプロスペクター系の外国産馬。多分にマイラー志向としても器そのものが相当大きい。
その若潮盃を制したイシノファミリー、同2着ステルステクニックも有力だが、道中落馬のアクシデントもあり、レース自体のレベルがどうか。2頭の比較では当時不利があったステルスを上にみる。北関東馬では前走サラブレッドCを勝ち、地元4戦負け知らずのドラゴンフライヤー。520キロ台の巨漢で、大井はそのパワーがフルに生きるか。前走古馬相手に強烈な末脚をみせたネイルアートは、本質的に短距離で切れるタイプ。それならキャリア4戦目で羽田盃5着、アヅマディフィートを見直す手か。まだ子供っぽいがオープンの素質はある。
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“遅れてきた大物”を紹介する。船橋・出川克己厩舎、ダイナマイトソウルという4歳牝馬。半年の休養をはさみデビュー5連勝。その勝ちっぷりが凄まじく、後続にそれぞれ6、3、15、12、17馬身差をつけるワンサイド。17馬身(3.3秒)ちぎった前走、8月8日のレースなど、ビジョンのカメラアングルはかなり遠くへ引いているのに、画面から2着馬がはみ出してしまっていた。さすがにこういうケースは珍しい。
父アジュディケーティング。異父兄があのベルモントアクター。和田アキ子さんの持ち馬で、なるほど馬名からしてキマッている。1200m1分13秒4、1500m1分33秒0の時計も、下級条件としては別次元。持ったまま一人旅。相手が軽すぎるだけに、道中の折り合い、馬群に入ったときの対応力、まだすべての面で未知数だが、スタートセンスが素晴らしく、トップギアに入るまでがきわめて速い。使い込むと馬体が減る傾向があり、課題とするとそのあたり、体質面の強化になるか。いずれにせよ楽しみなオープン候補。兄ベルモントアクターの連勝記録は“17”。それにどこまで迫るかという興味もある。