◆オーバルスプリント展望
(9月12日 浦和 サラ3歳以上 別定 JpnIII 1400m)
「オーバルスプリント」は、前身「テレビ埼玉杯」。平成17年に距離変更(1900→1400m)、その2年後レース名もリニューアルされ、さらに一昨年からは出走枠がJRA、地方他地区所属馬にも振り分けられた。今年第3回目、晴れて…という形のグレード入り。9月初旬、実質まだ夏競馬だけにメンバーレベルはやや低いが、そのぶん馬券的には面白いともいえるだろう。実際前2年、それぞれ1番人気=5・4着。一筋縄ではいかない決着となっている。以下、過去2年間の成績から、今後予測される傾向をまとめてみた。
(1)…波乱含み。前述通り1番人気は、23年ナイキマドリード5着、24年ダイショウジェット4着。夏~秋の転換期、各馬体調把握が難しいというしかない。波乱が前提。
(2)…JRA優勢。23年1・2着、24年1・3とJRA馬。しかも昨年2着トーセンアレスはJRAから転入初戦(小久保厩舎)で、実質ワンツースリーという見方もできる。
(3)…快速型。23年トーホウドルチェ2着、24年アースサウンド優勝と牝馬好走。今年はトウホクビジン1頭で脈が薄いが、総じて軽快なタイプに分がある。年齢別では昨年5→5→4歳馬の決着と、若返り傾向。
(4)…好位差し。逃げた馬は、23年トーホウオルビス4着、24年ピエールタイガー7着と案外厳しい結果だった。優勝ダイショウジェット、アースサウンドとも好位から捲るパターン。
※データ推奨馬
◎ガンジス…JRA栗東矢作厩舎の4歳馬。マークした5勝すべて千四(内・芝1勝)で、1月東京「根岸S=GIII」も敗れて強しの2着(鼻差)だった。さらに成長が見込めるネオユニヴァース産駒。好位からいい脚を長く使う自在型。
☆ ☆
◎タイセイレジェンド 59内田博
○ガンジス 54岩田
▲セイントメモリー 54本橋
△エーシンウェズン 55川田
△ダイショウジェット 54柴山
△ナイキマドリード 57川島
△ジョーメテオ 54坂井
サチノシェーバー 54御神本
コスモワッチミー 54赤岡
トウホクビジン 52佐藤友
タイセイレジェンドの格と実績を信頼した。昨秋同条件(左回り千四)の「JBCスプリント=川崎GI」圧勝。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったセイクリムズンを3馬身ちぎり、しかもレコード(1分26秒6)のおまけをつけた。以後根岸S→フェブラリーS→Gシャヒーン(ドバイ)と不本意に終わったが、前走盛岡「クラスターC」2着からは再び好リズムが戻っている。逃げ、あるいは捲り、ストレートな力勝負で持ち味が出るタイプ。思い切りよくレースを運ぶ内田博Jと最も呼吸が合うのだろう(全5勝中・3勝)。別定59キロは印象とすると確かに重いが、現実に前走は同59キロでラブミーチャンを差し返すシーンがあった。今回遠征帰りでも意欲的な追い切り3本(坂路)。完全燃焼に期待できる。
佐賀「サマーCS」1~2着、エーシンウェズン、ガンジスの比較は、若さと素質で後者をとった。当時スローを察知した川田・ウェズンが向正面から一気に捲り、結局それが“1馬身差”になったもの。ガンジスの場合、前述通りダート千四[4300]、今後この路線で頂点をめざす素質がある。流れに応じ緩急自在。岩田J騎乗、4歳馬ゆえの恵量54キロ。好材料はすべてそろった。JRA勢もう1頭、ダイショウジェットは一昨年覇者。当時ひと捲りの5馬身差は鮮烈だったが、現実にサマーCS完敗(0.9秒差5着)で、瞬発力に翳りがみえる。晩成型、タフな体質はさておき、さすがに10歳。今年は前2年よりメンバーレベルが大きく上がった。
▲セイントメモリー。重賞2連破の勢い、スピード能力は交流Gでも通用するが、もまれ弱い気性で逃げにこだわる。格上タイセイレジェンドとの駆け引き、兼ね合いがどうなるか。ただ同馬はこの路線、地方救世主の期待がかかる存在で、今回初コースを含め、何とか手応えのある競馬をみせたい。実績、コース適性(さきたま杯勝ちなど)で上回るナイキマドリードは、前走思わぬ大敗(京成盃GM・4着)で気配待ち。それなら距離千四微妙でも、転入成功ジョーメテオの末脚か。JRA4勝のネオユニヴァース産駒。7歳馬ながら新境地を示す可能性がある。
◆戸塚記念回顧
(9月4日 サラ3歳 別定 南関東SII 2100m良)
◎(1)トラバージョ 2分15秒9
△(2)ドリームキングダム 5
▲(3)カイカヨソウ 1
(4)リアライズリンクス 首
○(5)イヴアルブ 1/2
………………
△(6)エスケイロード
(7)ブラックロード
(8)カガヤキダンスオー
△(11)ミカドアクアラグナ
単180円 馬複1070円 馬単1290円 3連複1090円 3連単5310円
トラバージョが圧勝した。好スタートをいったん下げて4番手。外から気合をつけたリアライズリンクスが一頭大逃げの形となったが、結果的に展開は関係なかった。3コーナー手前、ごく自然流にピッチを上げ直線先頭。相手を捕えるというより、自分の競馬、自分の走りに徹した“5馬身差”ということだろう。「前走(黒潮盃)の内容がよかったし、自信をもって乗れました。実戦に行っての集中力が以前と違う」(石崎駿騎手)。二千百=2分15秒9は過去10年中第3位。ゴール際、余裕の脚いろからも合格点以上の評価ができる。
トラバージョはワイルドラッシュ×ラムタラ、本格派の中~長距離型。今春大井→船橋転厩で転機をつかみ、以後5戦4勝、前々走GI「JDダービー」も見せ場十分の7着だった。490キロ超、馬格にも恵まれ、常に正攻法、力の競馬をしていくタイプ。今回を含め川崎コース3戦3勝、左回り適性もきわめて高い。「正直今日は負ける気がしなかった。能力、パワーがある上にレース上手。(いい意味で)まだ体が緩いし、そのぶん上積みも期待できる」。今後しばらくオーバーホール、次走未定とされたが、めざす目標は、やはり究極「東京大賞典」「帝王賞」。左回り得意を思えば、ひとまず「浦和記念」あたりで復帰が理想かもしれない。
2着ドリームキングダム。道中厳しい位置(スロー8番手)からいい脚を長く使った。今夏古馬相手に2連勝、その経験がフルに生きた結果といえる。父マンハッタンカフェ。さらに伸びしろがありそうだ。3着カイカヨソウはトラバージュ目標に追い上げ、ひとまずスムーズな競馬ができた。女傑級かどうかは微妙なところ。次走右回り大井出走なら、そこが改めて正念場か。リアライズリンクスは道中ややカカり気味。それでも2着とは小差だから、3歳オープン級へのメドは立った。戸崎Jを配したイヴアルブは中団待機から伸びひと息。勝負どころでスッと動けない点に課題があり、重賞制覇にはもうしばらく経験が必要だろう。